知事からのメッセージ 平成20年3月 平成20年度新政策と新しい行財政改革

平成20年3月のメッセージ

平成20年3月1日

「平成20年度新政策と新しい行財政改革」

 平成20年度予算原案がようやくでき上がりました。作成作業は大変でしたが、なかなかいいものができたと思います。
 私は就任早々、県庁に「新政策の検討」という制度を導入しました。どういうものかというと、4月から1年をかけて、次の年度に何を実現しようかということを考える作業をしようというものです。この検討では、まず現在の政策の反省や県が抱える課題の検討から始めます。そしてこれらの克服のため、予算に限らず条例、県民運動などあらゆることを検討します。そして一番よいタイミングで、政府への要望、予算化などをしていくのです。昨年は、新しい長期総合計画の検討と並行して進めたので、県庁は燃えました。この結果、今年は20項目に及ぶ新政策の柱が立ち、何と新規56本を含む新政策の予算ができました。これらを足し算すると643億円になります。何せ1年かけてじっくり温めたものばかりですから、近来にない立派な政策ばかり。県庁の総力を挙げた作品です。
 ところが一方、今年は行財政改革をもう一段深化させなければならない年でもありました。昨年の9月に発表しましたように、県財政は平成21年度には基金(県の貯金)を食いつぶし、破綻してしまうところにありました。木村県政の時に、県の職員を10%も減らす行財政改革を進めてきたにもかかわらずです。いい政策はいっぱい上がってきたのに、一方では大なたをふるって、それらを切らなければなりませんでした。はっきり言って塗炭の苦しみでした。
 しかし、何とか工夫して、基金を食いつぶさなくてもすみそうな新しい行財政改革プランもでき、それを満足する新しい長期総合計画の初年度である平成20年度の予算が、多くの夢の新政策に彩られてできました。県民の皆さん、大いに期待してください。

 新政策は次の6本柱からなります。

  1. 未来を拓くひたむきな人間力の育成
  2. 生涯現役で誰もが活躍できる社会の実現
  3. 国際競争力のあるたくましい産業の育成
  4. 癒しと感動を与える誇れる郷土づくり
  5. 県民の命と暮らしを守る安全・安心の確立
  6. にぎわいと交流を支える公共インフラの整備

 「あれ、どこかで見たことがある言葉だ」とお思いでしょうが、これは先般発表しまして、県議会に今、お諮りしている新しい長期総合計画の和歌山県のめざすべき将来像と施策の方向の6本柱と一致しています。即ち、平成20年度の新政策と予算は、新しい長期総合計画を実現するための初年度政策・予算という位置付けなのです。6本柱のもと20項目の新政策にまとめました。

 第1の柱(未来を拓くひたむきな人間力の育成)は次の2項目です。

  1. 初等・中等教育における和歌山モデルの確立
  2. 国体開催を視野に入れた青少年の体力・競技力の向上

 今年は、特に教育に力を入れていきます。市民性教育、きのくに共育コミュニティ、郷土教育、職業教育、子どもたちへの知的刺激などなどです。7年後の国体の準備もしなければなりません。選手の強化にも着手します。

 第2の柱(生涯現役で誰もが活躍できる社会の実現)は次の3項目です。

  1. 少子化対策の強化
  2. 医師の確保や地域医療の充実
  3. 健康長寿・がん対策の推進

 昨年も少子化対策は重点項目でしたが、今年は、紀州3人っこ施策をさらにバージョンアップします。第3子以降の3歳未満児の保育料を無料にします。地域医療を守るため、昨年勝ち取った和歌山県立医科大学の定員増などいよいよ実行です。メタボリックシンドローム、がんも克服しなければなりません。

 第3の柱(国際競争力のあるたくましい産業の育成)は次の4項目です。

  1. 元気企業の誘致・育成支援
  2. 農林水産物の販売促進
  3. 農業王国わかやまの創造
  4. 紀州林業の復権

 昨年、何十年ぶりかの成果を上げた企業誘致はたゆまず続けますが、県内の力のある中小企業の飛躍も助けなければなりません。そのためには、輸出、販路開拓などの支援、企業の参謀役の派遣、農林水産加工業振興のてこ入れなどの政策が盛りだくさんです。経営革新をしようとする中小企業には、わかやま中小企業元気ファンドが待っています。農水産物の販売促進にも一層力を入れます。ミニ・アンテナショップ「ミニわかやま喜集館」を一挙に何十と全国展開します。輸出も応援します。販売だけでなく、生産面でもてこ入れをしていきます。農業王国わかやまの創造です。また、低コスト林業の推進、間伐材など紀州材の需要拡大からなる紀州材生産販売プランも推進します。

 第4の柱(癒しと感動を与える誇れる郷土づくり)は次の6項目です。

  1. 観光資源の売り出し促進
  2. 世界遺産の戦略的・総合的な整備
  3. 健全なマリンレジャーの推進
  4. 景観と自然環境の適切な保全
  5. わかやま田舎暮らしの支援
  6. 地球温暖化対策と循環型社会の構築

 観光は、全体に予算が減る中、前年を上回る予算を確保して和歌山をアピールします。世界遺産の売り出しもさらに本格化します。道標類を統一し、スタンプラリーなどで一層工夫をこらします。和歌山で健全なマリンスポーツを推進したいと思います。そのため、プレジャーボート規制と受け皿づくりの双方を図る条例を作るとともに、漁港も含めて全県でマリーナを振興します。さらに、いよいよ今年は景観条例の運用が始まり、景観計画と自然公園の見直しができる年です。段々と人気の出ているわかやま田舎暮らしの支援も、もっと力を入れて和歌山県への移住を進めます。子どもたちの農山漁村への受入体制整備も進めます。環境対策にも力を入れますが、特に、家庭での太陽光発電の導入助成を推進します。

 第5の柱(県民の命と暮らしを守る安全・安心の確立)は次の3項目です。

  1. 東南海・南海地震対策の充実
  2. 水害・土砂災害対策の推進
  3. 犯罪・交通事故の撲滅

 東南海・南海地震への備えはおろそかにはできません。また、気象台と協力したり知恵を絞って、和歌山の特徴的な地形から来る土砂災害から県民を守る手だてを考えます。犯罪、交通事故の撲滅も図らなければなりません。今年は、特に警察のIT化、高装備化を進めます。

 第6の柱(にぎわいと交流を支える公共インフラの整備)は次の2項目です。

  1. 交通ネットワークの整備
  2. 情報基盤の充実

 道路についてはもう何度も申し上げていますが、高速道路、内陸部骨格道路(X軸ネットワーク)、府県間道路、そして生活道路に力を入れます。和歌山の利点である関西国際空港、白浜空港のプロモーションもしなければなりませんし、IT基盤の整備も大事です。ブロードバンド基盤整備、携帯電話つながるプラン、地上デジタル放送難視対策の3本柱を中心に力を入れます。

 以上の新政策、平成20年度予算は、これも新しく改訂する「新行財政改革推進プラン」のテストを受けています。両方が矛盾することがないように、大変な苦労をしたことは冒頭述べたとおりです。したがって、和歌山県は近い将来破綻することはありません。平成20年度予算をちゃんと実行しても大丈夫です。
 私が知事にならせていただいた時、県の貯金である基金(財政調整基金・県債管理基金)は340億円で、毎年150億円ずつぐらい財政赤字のため、この基金を食いつぶしている状況でした。ピークには950億円もあったのですが、このままでは2年半で無くなってしまい、予算も組めなくなります。県は、国と違って原則赤字県債は出せませんので、何とかこの基金を食いつぶさぬようにしないといけません。
 木村県政の時代、和歌山県が放漫財政であったかというと、私はそうは思いません。歴代の財政課の諸君ががっちりとした財政政策をしてきたと思います。それに、平成17年度からは職員数を10%も削減するという思い切った行財政改革プランも実施してきたのです。ところが、現実はかくのごとし。7年後には国体という大きなイベントを控えて、ますます大変です。
 そこで、まず昨年の9月に、現状のまま推移するとどうなるかという財政の長期見通しを発表した上で、今年の予算編成期までに、もう一回深掘りをした今後の5年間の行財政改革プランを検討することにしました。これは、結構大変でした。ただでさえ大変なのに、平成20年度には後期高齢者医療制度など社会保障関係経費が、政府の決定により自動的に25億円も増えてしまいました。しかし、まず人員の抑制を続け、この期間に県の職員でさらに10%以上の人員を削減することにしました。また、事業の見直しを大幅に進めました。そして、収入確保の取組も続けます。一方、政府もいくら何でもこのままでは地方公共団体が持たないと考えたのか、地方再生対策費として地方交付税を20年度は30億円上積みしてくれることになりました。この結果、20年度の予算において、基金の取り崩し額は昨年度の151億円に比べ62億円でとどまり、毎年、これを順次減らしていって、平成24年度には取り崩し額、即ち、赤字額を0にする見通しが立ちました。

 この結果、基金もマイナスにはなりません。同時に、新政策で6つの柱、20項目、643億円の予算を計上しての話ですから、「やれやれ。よく、うまくはまったなあ」というのが感想です。もちろん、その間、県債依存体質は続きます。本当に和歌山県の財政が万々歳になるには、次はこの県債残高も減らしていかなければならないと思います。とは言え、とりあえず近い将来の破綻は免れるようにしました。また、和歌山県は県債の償還は毎年毎年やっていくというシステムですから、20年後、30年後にツケがいっぺんに回って来るというわけではありません。元利償還を続けつつ、まず何とかなるということです。しかしながら、永久に行革を続けるということも現実的ではありません。県庁の職員がいなくなってしまいます。これは、和歌山県だけの問題ではなく国全体の問題として、もう少し、かつ、安定的な財源を、特に地方に保証しないと日本の国が成り立っていかないのではないかと私は思います。

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