ようこそ知事室へ 知事からのメッセージ 平成19年8月
知事からのメッセージ
知事からのメッセージを紹介します。
平成19年8月のメッセージ
平成19年8月1日
月日の経つのは早いもので、就任後あっという間に7か月です。6月には新しい公共調達制度を発表し、7月1日より新制度への移行が粛々と進み出しました。前知事逮捕に関する事件の場面となったジョイントベンチャー制度の改革など、すぐに実施できるものは7月1日から新制度に移行していますし、全面的一般競争入札の採用と、地域要件の緩和に必要な格付けの実施のための準備も着々と進んでいまして、8月末には格付けのための詳細基準の発表、パブリックコメントを経て、11月にはこれを確定して、格付け申請−格付けというプロセスが続いて行きます。
また、7月1日からは中野監察査察監が着任してくれました。大阪地検特捜部の副検事を退職して和歌山県に加わってもらったのですが、県行政に関する不祥事、不正、不当行為などの通報を一人で受けてくれています。就任以来一月の間に既にたくさんの通報も実際に受けて、さすがは元検事さんという手並みで案件を処理してくれています。(一月に一度まとめて実績報告する予定です。)知事の逮捕などというとんでもない目に合った和歌山県政を清潔にする仕掛け(システム)は、ほぼ完成に近づいたと自負しています。
一方、経済発展をもう一度和歌山にとり戻す方策の方も段々とラインアップが揃いつつあります。懸案であった農林水産物の販売促進と和歌山を売り出すための観光の振興については、7月にそれぞれのアクションプログラムを発表して、さあこれからがんばるぞというところです。先般の県議会では、懸案であった内陸部の企業立地用地を準備するための先行投資を認めていただき、これで制度としての企業誘致政策は、ほぼできたと思っています。私も含め県庁のスタッフは、企業にどんどんセールスをかけていまして、先般、海南市に和歌山の誇る株式会社タカショーが本社ビルと工場の建設、印南町に電子部品の恵和株式会社が工場増設を決めてくれました。もっともっとねばり強くがんばらねばなりません。また、これら経済の再発展に必要なインフラの整備も、今春以来国土交通省、総務省等への働きかけを一生懸命行った結果、紀伊半島一周高速自動車道路、京奈和高速、第二阪和などの府県間道路、県内をほぼX字に結ぶネットワーク幹線道路、和歌山市を中心とする街路事業による道路、高速道路建設に伴う県負担の軽減など、私からすると満点と考えられるような支援を受けています。日本でトップクラスに遅れていた道路ネットワークの整備についても、前途に明るさが見えてまいりました。
医療についても同様で、地域の拠点病院を崩壊させないための努力を、和歌山県立医大のご協力もいただきながら、それこそ必死でやってまいりましたが、新宮市への政府からの産科医派遣に引き続き、和歌山県立医大の地域医療枠20人から25人の定員増加の目途が、関係政府機関のご協力でほぼ付きつつあります。積年の課題は山の如し、財政も風前の灯といった中でも、ひとつひとつたゆまず努力して解決していかなければなりません。それにしても、これらひとつひとつの成果には、県民の方々には見えないかもしれない多くの人々のご尽力があります。政府の各省庁、多くの大手企業の幹部の方々、有力なオピニオンリーダーの方々など、いずれも旧知の多くの方々には大変お世話になっています。また、県選出の国会議員の方々には本当に助けていただいています。ありがたいことだと、いつも思って感謝しています。
感謝の心、正義感、道徳、親切心、こういった古き美徳がすたれたら、和歌山の発展はないと私は思っています。経済の発展ですらそうだろうと思います。知事や市長と特定の関係をとり結び、官製談合で仕事を回してもらったり、子弟の就職の世話をしてもらうといった行動モデルでは、その地域の経済の発展もありません。何故ならば、見返りに仕事を回してもらっても、それは地元の誰か別の仕事を奪っただけで、地域ではゼロサムでプラスの要素はまったくありません。それどころか多くの場合、効率の悪い企業に仕事が回る結果、地域全体ではマイナスになるといったことが多く起こるのです。観光でもそうでしょう。地元の人々の暖かい心のもてなしがなければ、観光客はリピーターにはなりません。心をみがくことが大事な由縁です。
しかし、和歌山もまだまだ捨てたものではないことを知って、嬉しくなることもあります。一つは、県庁が数年来がんばって続けているほんまもん体験観光や、Iターンの方々に和歌山に来てもらおうという新ふるさと事業がけっこう評判がいいのです。前者は年間を通じて25万余の人々に和歌山に来ていただいています。後者は和歌山県のこのサイトのヒット(アクセス数)が、同種のサイトの中で格段に高いのです。あちらこちらに、まだまだ数は少ないけれど、和歌山が気に入って住んでみようと思う方が増えてきました。自然と人為が混然一体となった風土、地元の人々のなごやかで暖かい人柄が受けているようです。心がすたれていなければ、結局は経済もほほえんでくれるということではないでしょうか。
私は県政ポストに来たメールや手紙は皆、目を通しています。時間の制約がありますが、できるだけ返事も自分で書いて、必要があると思えば県の担当者にも検討してもらっています。その中で、本当に感動した投書がありました。プライバシーの問題がありますので、お名前等を伏せさせていただいて、皆様にご紹介したいと思います。
和歌山県知事仁坂吉伸様
謹啓吹く風も夏色の季節でございます。
ご健勝にてご活躍の事、大慶に存じます。
県政の信頼回復へのご努力の程、県民として大変有難く厚く御礼を申し上げます。
過日のコムスンの折には、一早く正義に反すると声を上げられた、知事の正義に敬意を表します。
さて、突然のお便りで失礼の段はお許し下さいませ。
娘は、三十年の月日、病名不詳のまゝ苦しみ、やっと一昨年五月、完治する事の無い難病と診断されました。「特定疾患認定患者」と成り、医療費の免除を受ける事になりました。
大変有難く、且つ、心苦しく思っております。財政厳しい和歌山で、一県民が受ける福祉の恩恵を唯々忝けなく、いつの日か御礼を申さねばと心にかけ乍ら、直接お目もじ叶う術とて無く、申し訳けなく思うばかりでございます。
本日、さゝやかな絵葉書を同封させて頂きます。娘が高校美術部の頃から描き溜めた拙い小品を、県難病連の会長様が、昨年新しく発足した難病の会の資金の足しにと作製して下さったのでございます。娘が、公費支出に対する心からの御礼と申しておりますので、どうぞお受け取りご笑覧賜われば倖いでございます。
決して他意はございません。申し添えます。娘も難病に甘えることなく、一週二日間の仕事に就いて頑張っております。
変わらぬご配慮をお願い申し上げます。
仁坂知事が望む元気な和歌山で、私共も元気に生きていき度いと思います。
呉々も御身お大切に、益々のご活躍を祈ります。
敬白
人は皆、なにがしかの不幸と戦っています。この方のご苦労はその中でも決して小さいものではないでしょう。人々が困った時、できるだけ公的機関もご助力したいものです。しかし、それも限りがあります。人々は、困った時はともすれば助力への要求が強くなります。すべてうまく助けてもらえなかった時、不満も残ります。そういう不満は大いに言ってもらえばよいと思います。投書も歓迎です。それを知って行政をさらに少しでもよりよくしていくのが、当局者の務めであると思います。不満だけの投書でもいかなる要求でも、私はそれをいただくことに、まったく不満も異論もありません。しかし、この手紙の方は本来ならばご肉親の病気に世を恨み、当局の処置の遅れに不平をならべても、誰も驚きはしない状況の中にあって、心からの感謝の気持ちを寄せてくれています。私のみならず、県庁の関係者一同感動しました。さっそく短いお返事をお出ししましたが、私はもちろんお会いしたことはありません。我々和歌山県民が、この方のような心を持ち続けることができたら、和歌山の反転進攻も案外近いと私は思うのであります。