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和歌山の人、もの、地域 和 nagomi 発祥の地、和歌山。 2014 vol.23

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知事対談 知事対談 東京大学 先端科学技術研究センター所長 日本イコモス国内委員会委員長 西村幸夫×和歌山県知事 仁坂吉伸

紀伊山地の多様性が世界の文化を豊かにする/自然と建築物が一体となる世界にも類をみない独特の文化。世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」は、世界の聖地のリーダーとなる。
東京大学 先端科学技術研究センター所長 日本イコモス国内委員会委員長 西村幸夫×和歌山県知事 仁坂吉伸

西村 幸夫氏著書 西村 幸夫(にしむらゆきお)
昭和27年福岡県出身。東京大学工学部都市工学科卒。専門は都市計画、都市保全計画、都市景観計画など。東京大学副学長を経て現在、東京大学先端科学技術研究センター所長。またイコモス(本部)副会長を経て、現在日本イコモス国内委員会委員長もつとめ、世界遺産の登録・保全の分野で国際的に活躍。まちづくりに関する著書多数。


  紀伊山地の多様性が世界の文化を豊かにする

仁坂知事(以下仁坂)●西村先生は現在、東京大学先端科学技術センター所長であるとともに、日本イコモス国内委員会委員長としてご活躍されています。いよいよ今年で登録10周年を迎える世界遺産「紀伊半島の参詣道」の登録にも準備段階からご尽力いただきました。東西文化の違いがある中で、日本の建造物を世界標準で評価させることは大変なご苦労があったのではないでしょうか?

西村幸夫氏(以下西村)●世界遺産は元々ヨーロッパの人たちが中心となって作ったシステムですから、石組みの建築物だとかヨーロッパ文明のような物が受け入れられやすい枠組みになっています。一方で紀伊山地では、滝がご神体でその前に鳥居はあるが建物がないなど自然と建造物が一体となっているような文化で、同様のものはヨーロッパには存在しません。しかし様々な文化が存在するという多様性が世界の文化≠豊かにするんだということを理解してもらうことからはじめました。彼らも様々な文化を学ぶ事に興味があり、積極的に理解しようとしていました。

仁坂そして文化的景観として日本で初めて、「紀伊山地の霊場と参詣道」が世界遺産に登録にされましたが、当時を振りかえり印象深かったことはありますか?

壇上伽藍
高野山町石道を上り、ようやく辿り着いた高野山には、空海により再現された曼荼羅世界が広がる。根本大塔が建つ壇上伽藍(だんじょうがらん)は山上で最も神聖なエリアのひとつ。
西村当時私はイコモス本部で世界中から上がってくる申請内容を評価する立場でした。文化的景観とは「棚田」で説明すると分かりやすい。一枚一枚の「田」にはそれほど価値はないが、共同で維持管理をするシステムを伴うことで「棚田」となり、そこに文化的景観としての価値が発生します。ヨーロッパにおける巡礼とは点から点へと移動をすることですが、紀伊山地における巡礼とは、修験道といった概念も含み歩くことそのものが精神的な修行の場であるということを理解してもらう工夫をしました。道といっても「ヨーロッパで考えるような道と違う物が世界にもありえるんだ」ということが、彼らにとって新鮮な考えであるとともに理解しやすかったようです。


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  本物を残すことで 多くの人々に感動を

熊野那智大社へと向かう大門坂/スタンプ帳
左/熊野那智大社へと向かう大門坂。古の風情が色濃く残る石段を、一歩一歩踏みしめて上る。
右/和歌山県が発行する道案内も兼ねたスタンプ帳。
仁坂私は自然や歴史が好きなのですが、世界遺産を軸とした観光を振興するにあたり、より広範囲な景観の保全が重要と考えていました。そこで西村先生にご協力いただき条例の策定に着手しました。

西村●おっしゃる通り景観条例では世界遺産以上の広範囲を保護しなければなりません。熊野古道を車で訪れる観光客は多いでしょうが、世界遺産である古道を車で走る訳ではありません。古道から50メートルは世界遺産のバッファゾーンとして保護されていますが、少し離れた国道を車で走る人たちは、直接世界遺産を感じることはできません。古道だけではなく、周辺のアクセスルートも世界遺産の雰囲気が感じられないと、多くの方に満足してもらえません。そういった観光客を満足させたいというおもてなしの心も重要だと思います。

仁坂文化的景観とは自然だけではなく、そこに住む人々の生活も重要な要素です。もちろん歴史の重みも感じてもらえるような型で残したい。汗をかきながら熊野古道を歩き、尾根道から景色を眺める。しかしその時に人工物などが見えるとがっかりします。そこでバッファゾーンから見えるその一つ向こうの峰ぐらいまでを昔のまま保全したいと思っています。もちろん林業など人々の営みは問題ありませんが、皆伐して別の物にするようなことをしてはいけないなどのガイドラインを決めておく必要があります。同時に和歌山県では自然公園の見直しを行いました。これは40年程見直しておらず、当時の状況と実際の状況が異なっている箇所が何カ所か見つかり修正をし登録変更しました。熊野古道や高野山は、人々の営みがあってこそ文化的景観を築いています。だから必ずしも大自然のままでなければということではなく、昔からの雰囲気を残すことが大切と考えています。









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  現場との密接な連携が世界遺産を魅力的に

東京大学 先端科学技術研究センター所長 日本イコモス国内委員会委員長 西村幸夫

仁坂●県では楽しみながら参詣道を歩いていただこうとスタンプラリーを実施しています。コース別にスタンプ帳を作り、歩きながらスタンプを集めて行く訳です。そして完歩をすると私が証明書を出すんですね。私自身山歩きが好きなものですから、休みを見計らっては歩いていたんですが、なかなかまとまった休みが取れず、中辺路ルートも三カ所を残すまで行っているんですが…(笑)。これは歩いた時のエピソードなのですが、中辺路ルートの難所のひとつ十丈峠にさしかかったところで、地元の人と色々話しをしていると、「峠にはトイレがあるのですが、旧式のものなのでし尿が溜まると今でも担いで里まで運んでいる」というんです。世界遺産内であるから流す訳にはいかないし、バキュームカーも入れない。「これは大変だ」って事で、し尿を発酵分解して処理するバイオトイレを急遽設置しました。

西村そういうのはやはり現場を見ないとできないことですね。

仁坂●また、道普請ウォークという古道の維持と観光を組み合わせたプランを作りました。熊野古道の路面は土であることが多く、昔は古道沿いに旅籠や店がたくさんあったため、お店の人たちによって常に維持管理、修復されていました。もちろん今も土が流れださないように木でガードをしているのですが、多くの人が歩く事で道は傷みます。そこで企業やグループ向けにCSR活動の一環として道普請しながら歩くプランを実施しました。土を入れた袋を修復箇所まで運び盛土をしていただき、担当の人がポンポンと叩いてならす。これが評判が良くって。当初は「1万人の道普請」と言ってたのが参加者が1万人を超え、今度は「10万人の道普請だ」と言っています(笑)。



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  世界で受け入れられる日本ならでは精神性

仁坂熊野古道を歩いていると、神様が周りにいるのを感じます。それもたくさんいらっしゃって、いつも守られているような感じなんですね。これは環境だとか風土だとか、ヨーロッパの巡礼の道を歩くのと、相当違うのだなと思います。

西村●現在、参詣道の再調査に携わっていますが、高野山と高野山町石道に改めて興味を感じました。高野山に上がる道には単なる荷物道もありますが、参詣の道とは簡単に見分けがつくようです。一番の特徴は道沿いに石仏や石造物が並んでいるところです。色んな人々が何らかの願いを込め寄進したのでしょう。そういう心の蓄積が、参詣の道には残されています。また世界遺産登録審査の際、イコモスから外国人委員が派遣されましたが、高野山の素晴らしさに感激して、後日個人的に再訪したと言っていました。宿坊ではお坊さんが袈裟姿で精進料理を運んでくれます。日本でもそこまで純和風の生活を味わう機会がないので、日本らしさを楽しみにして来た人たちにとって「ようやくここで巡り会えたよ」と喜んでくれます。

仁坂高野山は町全体が「寺」であり、世界に類を見ない聖地として外国人に特に人気があります。最後に世界遺産が登録され10年になりますが、産みの親としてアドバイスはございませんか?

西村紀伊山地は歩くことと信仰が結びついた聖地です。和歌山県にはアジアを中心としたそういう聖地のリーダーとなり、新しい智恵が学べる国際交流の場となることを期待しています。

仁坂わかりました。本日はありがとうございました。

和歌山県知事 仁坂吉伸
仁坂吉伸(にさかよしのぶ)
和歌山県知事

 


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