トップページ > 課・室一覧 > 広報課ホームページ > 和(nagomi) > vol.14 > [特集] わかやま癒しのローカル線

和歌山の人、もの、地域 和 nagomi わかやま癒しのローカル線 2011 vol.14

前のページへ  次のページへ

水戸岡鋭治

水戸岡鋭治(みとおかえいじ)インタビュー

ローカル・ワンダーランド
 周辺には、観光客をたくさん集めることができる資源がほとんどないごく普通の田舎。そこを走る総延長わずか14キロ程度のローカル線。ただ、沿線住民からは深く愛されている。それが私が出会った当時の貴志川線の姿でした。こういうローカル線の復興は、ゼロから作り上げるしかないと思いました。ディズニーランドのように何もない場所に独創的な世界を作ってしまう手法です。沿線全体をワンダーランドにする。それしかない。
 楽しい電車を走らせ、「こいつはすごい!」と話題になるほど魅力的な終着駅を備え、沿線で楽しいイベントが次々と起これば、必ず乗客は増えてくる。そう考え、まず電車のデザインを練りました。貴志川は、イチゴの特産地です。この路線を愛する地域住民にとっての誇りをモチーフにしようと思い、白地にくっきりと赤いイチゴが浮かんだ「いちご電車」をデザインしました。周辺住民もこの電車を歓迎し、大いに支援してくれました。次に子どもが楽しめる電車として、車内にカプセルトイなどを装備した「おもちゃ電車」をデザイン。年間50回を越すイベントも開催され、次第に観光客も増えていきました。

奇跡の猫
 2006年4月1日の営業開始時に、私たちは、一匹の猫と出会います。終着駅である貴志駅で飼われていたこの一匹の猫こそ、貴志川線に新たな奇跡を起こす三毛猫、「たま」だったのです。地域の住民と和歌山電鐵が協力し、猫の駅長として大いに盛り上げたことで、全国に「たま駅長」ファンが増え、新しい電車づくりのための多くの支援金が集まりました。こうした人々の熱い思いが結集して走り始めたのが、「たま電車」です。「たま電車」には、子どもたちが本物と触れ合う事ができるように、美しいフォルムの木製の長いすを設置するなど優れた技術を結集しました。

本物が熟成する文化
 楽しい電車が揃ったところで、私は魅力的な終着駅の駅舎について構想を練りました。古民家のようで、懐古主義的ではない。日本の伝統的意匠と、西洋のデザインを融合をさせた駅舎。屋根は神社仏閣で使われる伝統的工法の桧皮葺きとし、高野山で腕を揮う職人さんに協力をいただきました。ステンドグラスや有田焼きのタイルも一つずつ図面を描き、一流の職人に製作を依頼。暖簾や照明、時計、時刻表に至るまですべてがオリジナルで、時間と共に色あせる大量生産の既製品は一切使いませんでした。それはこの駅舎を人々とともに熟成していく、劣化しない本物の文化を生む拠点施設にしたかったからです。欧州では子どもの人間形成に大きな影響を与える大切な時間を「魔法の時間」と呼んでいます。私は「たま電車」や、貴志駅駅舎と子どもたちが本物と触れ合いながら「魔法の時間」を過ごせる空間になるように設計しました。本物には、大切にしなければならないと思わせる緊張感があり、本物と触れ合った子どもは、自然と物を大切にするモラルを身につけます。「魔法の時間」を豊かに過ごした子どもたちが将来貴志川線をワンダーランドとして完成させるのではないでしょうか。貴志川線は私に鉄道が街づくりの起爆剤になると確信させた、そんな奇跡の路線です。

  貴志川線はありえない事が連続した奇跡の路線です。

水戸岡鋭治 PROFILE
岡山県岡山市出身。高校卒業後大阪やヨーロッパのデザイン事務所で修行。1972年にドーンデザイン研究所を設立し、建築や鉄道などの幅広いデザインを手がける。鉄道関連のブルネル賞やローレル賞、ブルーリボン賞をはじめ、平成22年には交通文化賞を受賞。九州新幹線800系やJR大阪駅広場空間のデザインも手がける。ドーンデザイン研究所の「ドーン」とは、水戸岡氏のニックネームから付けられた。


たま駅長関係のグッズなど

和歌山電鐵の全てのモノが水戸岡氏によるもので、細部にまで完成されたデザインが独自の世界観を作る。 1.有田焼のたま駅長タイル。窯元に依頼して焼かれたもの。 2.お守りやキーホルダーも水戸岡氏のデザイン。 3.駅舎を外から見ると猫の顔になっているが、このステンドグラスは目の部分にはめれている。 4.和歌山電鐵職員の制服のワッペン。 5.桧皮葺きは、神社等の高貴な建造物の屋根に使われる。数少ない和歌山の職人が葺いた。世界唯一の桧皮葺き屋根の猫顔駅舎。 6.たま電車開発途中の内装予想図。車内の床も木を用い、シートにもオリジナルのデザインを施している。 7.関西と九州を直結する新幹線「つばめ」の車内予想図。肘掛けなどに木を用いている。


前のページへ  次のページへ

 

トップページ > 課・室一覧 > 広報課ホームページ > 和(nagomi) > vol.14 > [特集] わかやま癒しのローカル線