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和歌山の人、もの、地域 和 nagomi 美しき国、和歌山 2017 vol.33

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知事対談/ 和歌山で見つけた自然と生きる価値観

東牟婁郡古座川町の渓流瀑の滝の拝

内山氏が水の美しさに感動し、移住するきっかけともなった東牟婁郡古座川町の渓流瀑の“滝の拝”。滝つぼに集まった鮎を餌やオトリも付けずに釣り上げる“トントン釣り”という漁法は夏の風物詩。南紀熊野ジオパークのジオサイトでもある。


仁坂知事(以下仁坂)●内山さんはネイチャーフォトグラファーとして、水に関わる生き物とその環境の撮影をライフワークとされ、淡水にこだわった図鑑や写真集などを多数発表し、テレビ番組の企画出演や講演活動など多方面で活躍されていますが、そのきっかけについてお聞かせください。

内山りゅう(以下内山)●僕は大学で水産学を学び、将来は魚の研究者か博物館のような所で生き物に携わる仕事に就きたいと考えていました。ある時、昔から尊敬していた桜井淳史(さくらいあつし)という一人の写真家と話をする機会に恵まれました。そこで「生き物に携わって生きていくのは研究だけじゃない。写真というものもあり、それを仕事にできるのかどうかは君次第だよ」と言われ、考えもしなかった視点にショックを感じたのを鮮明に覚えています。

そして大学卒業後、北海道の摩周湖畔にあるアトリエのドアを叩き、桜井氏に弟子入り。師匠のアシスタントをしながら海外を回り、2年後には東京でフリーカメラマンとしてデビューすることになりました。

仁坂研究者からカメラマンってかなりの方向転換ですね(笑)。しかしフリーでデビューといってもそんなに簡単ではなかったと思いますが。

内山●師匠は多くの写真集を出版していたので、そういった縁で仕事が得られたこともありました(笑)。最初の大きな仕事は、大学で学んだ淡水魚の知識が役に立ち、図鑑の編集をさせていただきました。













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美しい水に導かれ和歌山への移住を決心

仁坂1999年に東京から白浜町へ移住されていますが、なぜ和歌山に来られたのでしょうか?

内山●ひとつの生き物にこだわり、その背景にある自然や人などのストーリーが見えるような作品を、日本を代表する川魚である“鮎”で作ろうと思いました。日本各地で潜ったのですが、なかなか納得できる水質の川には巡り会えませんでした。しかし和歌山に入った途端、水の色が変わったんですね。それが“滝の拝”でした。

“滝の拝”は古座川の上流に位置し、今も和歌山を代表する清流のひとつです。

内山●もう30年も前になりますが、あの橋の上から眺めた水の色の美しさと魚の多さは今も覚えています。当時は東京で雑誌の仕事をしていたのですが、少しでも時間ができれば夜中にフェリーに飛び乗り、翌早朝には勝浦から古座川へ行き撮影をしていました。でも着いてみたら和歌山は土砂降りってことも度々あり、結局“アユ”を出版するまでに約7年もかかってしまいました。カメラマンとしては、出版社が集中する東京にいる方が仕事的には絶対に有利です。しかし僕が撮りたいものは生き物であり自然であると考えた時に、東京に住んでいると効率が悪いのも事実。また和歌山の人たちは親切で心が温かいんですね。それで“アユ”の写真集を出版した翌年、妻を説得し一大決心をして移住を決めました。

和歌山の人は温暖な気候のお陰なのか、誰でもウエルカムみたいなところがありますね。一度懐に入ってしまうと、さらに繋がりは深くなります(笑)。

内山●しかし最初は全く知り合いもなく、数年間は少し苦労しました。言葉も分からないし(笑)。「つれもていこら」って言われても何のことか全く分からなかったですね。でもしばらく住んでいると、多くの人が僕の仕事のことを理解してくれるようになり、色んな情報をいただけるようになりましたね。

2016年に運行を開始した“うめ星電車”
写真上/日置川源流域に位置する安川渓谷。水中から水面を覗くと“本当の水色”が見える。
写真下/滝の拝の水中を泳ぐ鮎。まるで空中を飛んでいるように見えるのは、抜群の透明度ゆえ。
(写真/内山りゅう)

仁坂そして現在に至りますが、和歌山の自然について改めてどのような感想をお持ちでしょうか。

内山●海外も含めて色んな場所に行きますが、紀伊半島の自然は特殊でありながら、日本の原点みたいな場所だと思います。その上、水の清らかさはずば抜けていて、川を水中から見ると水面付近に青いラインが見えるんですね。これが見えるのは水が非常にピュアな証拠で、少しでも水に懸濁(けんだく)物質が溶け込んでいると、透明度が落ちて見えません。その青いラインを僕は本当の“水色”と言ってるんですが、それを探しに川に行ってるようなものです。世界中探してもそういう所が何箇所もあるのは和歌山以外にはめったにありません。





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驚きあこがれる水の国わかやまの美しさ

ネイチャーフォトグラファー 内山りゅう氏”
内山りゅう(うちやまりゅう)
1962年、東京生まれ。東海大学海洋学部水産学科卒業。淡水を中心に、水に関わる生き物と、その環境を撮影し続けるネイチャー・フォトグラファー。和歌山の美しい水との出会いにより、1999年白浜町へ移住、現在に至る。
和歌山の水のさまざまな表情をとらえた写真集「水のこと・内山りゅう」”
水のこと・内山りゅう
循環する水が育む豊かな生態系、そして人々の暮らしや文化、信仰にも深く溶け込んでいる水。そうした力を持つ和歌山の水のさまざまな表情をとらえた写真集。2017年3月発刊。出版社:講談社エディトリアル。

仁坂●紀伊半島は雨量も多く、また地形的に中央部が高く全ての川が海に向かって放射線状に伸びています。それぞれの川はそれほど長くなく、程よい傾斜があることで水が淀みなく流れます。だから水は美しいのでしょう。またその綺麗な川に寄り添うように多くの人々が暮らしています。そこで醤油や酒の醸造から山椒をはじめとした様々な農産物の栽培、川の参詣道や筏下りという文化も形成しています。こうした水との関わりを持った生活や物語が多数存在します。それらを含め和歌山県は今、“水の国、わかやま。”という観光キャンペーンを大々的に行っています。内山さんも“水のこと”という写真集を出版され、キャンペーンの一環として写真展も各地で開催されています。

内山●今回東京で写真展を開催させていただき、多くの人に和歌山の水中を見ていただいたのですが、「これって日本なの?」とか「和歌山って凄い」とほとんどの人が驚いてくれます。ところがその話を地元の人たちに伝えても、ピンとこない方もいらっしゃいます。

仁坂●そうですね。ある意味、我々和歌山の住民にとっては当たり前の景色ですからね。

内山●2年程前多摩川で撮影していると地元の子供に突然「内山さんですか?」と声を掛けられました。その子は僕の図鑑を持っていて、どうしても古座川に行きたいと父親にお願いし、家族で来県したそうなんです。都会で生きる者にとって和歌山の“水”の美しさは憧れの存在なんですね。とはいえ何が美しく何が大切なのか、地元にいるとなかなか理解しづらいという側面も確かにあります。



 

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変わりつつある価値観に和歌山を再認識する

仁坂そんな都会の人たちにどんどん和歌山に来ていただきたいですね。また内山さんは子供たちへの教育の一環として観察会なども開催されています。

内山●各地で子供たちを対象に午前中にレクチャー、午後から川に潜って魚を獲るという一日コースみたいなのを行っているんですが、子供たちだけでなく親も凄く喜ぶんですよ。30歳代ぐらいのお父さんお母さんたちって川遊びをしていないんですね。だから子供をほったらかしにして親の方が大はしゃぎ。本当にいきいきする親子を見て、教育って凄く大切なんだなと思います。

特にあれしちゃだめこれしちゃだめって時代がありましたからね。そんな中で和歌山では都会の学校を中心に体験型の修学旅行を提案し、非常に喜んでいただいています。自然の中で遊びながら体験し何かを学び、民泊などをしながら地元の人たちからも釣りの手ほどきなどを受けたり。そして受け入れている和歌山の人たちも楽しいと喜んでくれています。

内山●それは両者共に楽しいでしょうね。最近はモノの価値観というか豊かさについての感じ方が変わってきているような気がします。先日東京に数日間滞在したのですが、もう故郷って感覚もなくなり、なんだか疲れちゃって。それはなぜだろうと考えると、昔はお金を稼ぐことが全てみたいなところがありましたが、今では環境や暮らし方、心の豊かさを求めているからなんでしょうね。でもそういう人が結構増えていると思います。

和歌山県知事 仁坂 吉伸
仁坂 吉伸(にさかよしのぶ)
和歌山県知事

そして観光から短期滞在、その先にあるのが移住定住だと思います。和歌山では大規模な別荘開発なんかをやっている訳ではないので告知手段がなかなか難しいという問題はありますが、地元の人が温かいので、定着率はもの凄くいいんですよ。地方は物価も安いですし、和歌山で就農するなんていうのも結構楽しいことだと思います。また最近では、都会にいなくてもインターネット回線があればできる仕事もあります。そういう新たな暮らし方が和歌山で見つけられるというPRを積極的に行っています。そしてもっと移住される方が増えればいいなあと思っています。本日はお忙しいところ、ありがとうございました。



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