自然を信仰の対象として、何者も拒まずあらゆるものを受けいれてきた熊野には、古くから神事や祭が脈々と受け継がれています。
松明を持って自然石で築かれた急な石段を上り子と呼ばれる白装束の男たちが駆け下りる。毎年2月6日に行われる神倉神社のお燈祭。
巨石信仰の形をとどめ、巨石のゴトビキ岩と呼ばれるご神体がそびえる神倉山で二千人もの男たちを中心に町をあげて行われる神事は、御神火によって旧年の穢れが清められ、新年の神霊が里にもたらせるのです。
祭の日が近づくにつれて、松明づくりにも気合いが入る中、一週間前になるとゴトビキ岩のしめ縄が新しく張り替えられます。お燈祭当日の朝は餅をつき、藁で縛って神前にお供えします。
上り子たちはこの日、身につけるすべてのものを白に、口にするのも白いものに限られます。白飯、白いかまぼこ、豆腐など、訪れる客にも白い食事がふるまわれるのです。
昔は、一週間も前から白い食事を取り、沐浴して、女人に触れることもさけていたと言います。
夕暮れになり日も暮れようとする頃、上り子らは阿須賀神社、熊野速玉大社を参拝して、神倉山に向かいます。
やがて、ゴトビキ岩のもとで松明に火がつけられ、下では上り子らの家族や友人や恋人が見届けようと集まるなか、男たちは一番乗りを狙って飛ぶように駆け下ります。
波のようにも見える火の流れが出現して祭はクライマックスを迎えるのです。
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