本州最南端、太平洋に突き出た紀伊半島に広がる熊野の地は、入り組んだ海岸線を生んだ黒潮と、温暖で雨の多い気候が育てた深い山と川に恵まれています。
緑したたる樹海の連なり、険しく鬱蒼とした自然の中に祖霊がこもっている。「こもりく」「根の国」などとも呼ばれた熊野。
いにしえの人々は熊野に何を見たのでしょうか。古代からの人々のさまざまな願いや信仰が幾重にも重なり、いまなお多くの人々を魅了しつづけている熊野三山。自然と一体となった祈りの世界がいまも息づいています。
緑深い山肌に天を突くように突如として現れる巨石。落差133メートルの日本一の那智の滝など、荘厳、雄大な自然を前に人々は、人間を超えた何者かの存在を感じ畏敬の念を抱いたのでしょうか。
滝に象徴される女性の生命力への崇拝が信仰の原点であった熊野那智大社。
巨石に象徴される男性の生命力を崇拝する海の民の信仰から発生した熊野速玉大社。
熊野の神々の霊が静まる熊野本宮大社。
熊野は、日本古来の常世の思想を基盤として、仏教の薬師信仰、観音信仰、阿弥陀信仰、など多様に交差する古代の精神風土がつくりあげた信仰の聖地です。
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