ようこそ知事室へ 知事からのメッセージ 平成29年6月 上野動物園パンダ誕生おめでとう

知事からのメッセージ

知事からのメッセージを紹介します。

平成29年6月のメッセージ

平成29年6月

上野動物園パンダ誕生おめでとう

 6月12日東京の上野動物園で、パンダの赤ちゃんが誕生しました。おめでとうございます。前回の赤ちゃん死亡事件以来なかなか赤ちゃんができず、テレビの報道では飼育員の方々が親のシンシン、リーリーの足腰を鍛えるためにトレーニングをしているところが報じられましたが、このように、飼育員の皆さんの大変な努力があってのことだと思いますので、心から敬意を表します。赤ちゃんが無事成長してくれるよう願います。
 

 パンダと言えば、和歌山県白浜町のアドベンチャーワールドには現在5頭のパンダファミリーがいます。これまで既に15頭のパンダが生まれ、立派に成長し、あるいはすくすくと育ちつつあります。近親交配を避けるため、成人したパンダは中国の成都動物園に返しますが、ついこの間6月5日に3頭を返したところです。アドベンチャーワールドでは、お別れ会というか歓送会が開かれました。これで11頭のパンダを返し、中国でこの子たちが今度は10頭の赤ちゃんを生んでいるそうです。もともとのアドベンチャーワールドへのパンダ導入はパンダの繁殖実験ということでしたので、大成功を収め、パンダの種保存のために和歌山が大いに貢献していることを誇りに思います。しかも、アドベンチャーワールドの故林輝昭さん、熊川智子さん、遠藤倫子さんらのチームは、できるだけパンダの母性を発揮させるような育て方でパンダを養育しているので、大人になったパンダが今度は子どもを育てるのが上手になって、その成績の良さは本家の中国の専門家を始め世界を驚かせているそうです。
 アドベンチャーワールドは太陽燦々の白浜の大地の上に広大な敷地を擁し、動物が広い園内を自由に動き回っていて、人とも餌遣りなどの触れあいをふんだんにできるような所ですが、パンダファミリーも狭い部屋の中だけでなく、緑の芝生の上で木に登ったりして遊び回っているのが、来場者に手に取るように見えるようになっていて、こういう環境にいるから子供もたくさん生まれるのかなあと思ったりします。
 

 ところが、数年前、上野にパンダがもう一度来日した時、パンダの赤ちゃんが生まれた時、そして不幸にもその子が死んでしまった時、日本の全国テレビや全国紙はいずれもトップ報道で、ものすごい大きな扱いでこれらを報じました。ばんばん赤ちゃんが生まれ、育っている和歌山の白浜アドベンチャーワールドのパンダのことは、赤ちゃんが生まれても関西版の社会面に小さな囲み記事だけという大きな差別的扱いに、私は大変悲憤慷慨したことがありました。マスコミの東京偏重地方軽視が如実に出たと言うしかありませんでした。そこで毎週やっている記者会見で自分が悪者に扱われるのも覚悟の上で、NHKは日本放送協会という名称をやめて東京放送協会THKに改称したらどうでしょうなどと悪口を言ったのですが、それも無視されてしまいました。
 

 今回のケースもそうなるのではと思っていましたが、各全国新聞とも大変リーズナブルな扱いで、少しは扱いが大きいけれど、上野での誕生が久しぶりだということを考えると当然だなあと、新聞社、テレビ局の見識と良識に敬意を表します。NHKのニュースが相変わらずトップ中のトップというのは気になりますが、クローズアップ現代などで白浜のパンダのことも取り上げてくれているので、悪口などとても言う気になりません。
 

 白浜も上野もパンダがすくすくと育って、パンダの種の保存のために貢献できたら良いと思います。思えば、私は今から20数年前白浜にパンダを入れる際にワシントン条約の輸入許可をした通産省の担当課長でした。その時は、動物は自然の中に置いておくべきもので、動物園で人に見せるのなどとんでもないという一派と、パンダのような稀少種は動物園で繁殖させていかないと種の存続が危ういという一派とが私の周りで対立をしていました。後に和歌山県知事になるなんて夢にも想像していなかった仕事一筋の官僚であった私でしたが、世界的な規範に沿い、かつ議論を尽くしてもらった上で輸入許可をしましたが、これは大丈夫だという確信を私が持てたのは、まだ若々しい青年であった林輝昭さん達飼育員の情熱があったからだということが思い出されます。また、上野動物園の園長であった高名な動物学者増井光子さんが、パンダの繁殖のためには、是非日本も協力をすべきだ、そのためには、絶対に輸入を認めるべきだという意見を熱く語っていた事を思い出します。その増井さんの足跡を継ぐ上野動物園の飼育員の方々の今後の奮闘に期待します。おめでとうございました。

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