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太地町でのイルカ漁業に対する和歌山県の公式見解

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1.米映画『ザ・コーヴ』について

 本県では、イルカ漁の問題は非常に複雑であると考えています。イルカ漁や捕鯨は日本だけのものではなく、世界中の多数の地域で行われており、その多くが同じような地理的条件や、似たような歴史的、経済的背景を持っています。にもかかわらず、「ザ・コーヴ」は、動物愛護の観点から見た一方的なもので、和歌山の状況をややセンセーショナルに表現しています。
 また、この映画は多くの問題を提起しています。世界中で多くの人々が肉を食べていますが、そのためには、野生にしろ大切に育てた家畜にしろ、動物の命を絶たねばなりません。と殺は通常、人目に触れないように行われており、例えば、その現場にわざわざ入って撮影することで、その行為を煽情的に描くのは、さほど難しいことではありません。
 映画『ザ・コーヴ』は、イルカの捕殺現場を隠し撮りし、命が奪われていく所をセンセーショナルに映し出しています。
 さらに、映画では水銀汚染が誇張されていると考えられます。「イルカ肉には2,000ppmの水銀が含まれている。」と言われていますが、これは実際のデータとはかけ離れています。その他、「水銀汚染を隠すためにイルカの肉を鯨肉として販売している。」、「イルカが食肉となっていることを人々が知らないのは、マスコミがもみ消している。」、「捕鯨やイルカ漁をやめないのは、日本の古典的帝国主義にある。」など事実を歪曲した内容が多く含まれています。
 太地町のイルカ漁師は、これまでも何度となく、海外からやって来る過激な動物愛護団体のターゲットとなり、漁業の妨害や精神的な攻撃を繰り返し受けてきました。太地町のイルカ漁師は、国・県の監督のもと、法令規則を守り、昔から受け継がれてきた漁業を営んでいます。
 このように法に則って働いているだけの漁師をターゲットにすることは、公平ではありません。間違った情報や、日本では必ずしも賛同が得られていない一方的な価値観で批判することは、太地町でイルカ漁にたずさわってきた人たちの生活権を不当に脅かし、町の歴史や誇りを侮辱するものであり、決して許されることではないと考えます。

2.なぜ、和歌山県はイルカ漁の許可をしているのか

 イルカ漁は紀南地方の重要な産業であり、地域の伝統文化であるだけでなく、自然資源の科学的な管理および利用に基づいています。
 太地町は、紀伊半島の東海岸に位置する人口約3,500人の小さな町です。経済活動の中心から遠く離れてはいますが、捕鯨の地として約400年の歴史があり、鯨やイルカを捕って、栄えてきた町であります。鯨やイルカは当地域の食文化になくてはならないものです。鯨やイルカに関する伝統的な文化行事が年中行われ、イルカ漁は地域経済に欠かせない産業となっています。
 イルカや鯨は、持続的に利用される海洋生物資源の一つであり、枯渇することのないように、関係機関が漁業活動を管理しています。また、国は、科学的な調査を行うことで、資源量が十分なものに限り、種類ごとに毎年捕獲頭数を定めています。
 無秩序に捕獲することは、貴重な資源の減少や種の絶滅に繋がる恐れがあります。従って、イルカ漁については、科学的な資源量調査に基づき、資源保護上問題のない範囲で許可を行っているのです。

3. 欧米諸国は捕鯨をやめたのに、なぜ和歌山県では続けるのか

 1960年代から、欧米諸国などの主要捕鯨国では、鯨類資源の減少に加え、採算の合わなくなった捕鯨産業から撤退しています。また、1972年の国連人間環境会議で10年間の商業捕鯨の停止が決定されるとともに、反捕鯨の立場で国際捕鯨委員会(IWC)に加入する国が増加し、鯨類資源に関する情報に不確実性があるという理由から、1982年のIWC会議において大型のひげ鯨等13種の商業捕鯨一時停止が採択され、欧米だけでなく、日本も1986年以降商業捕鯨を停止しています。
 牛肉や豚肉を食べることが、鯨やイルカの肉を食べることと異なるとは考えておりません。また、鯨やイルカの肉が特別で、食料とすべきではないという考えにも賛成できません。日本と同じように捕鯨を生業とし、鯨肉を貴重なタンパク源としている国や地域もあります。
 日本が行っている調査捕鯨は、「国際捕鯨取締条約」第8条に基づく調査です。その調査結果によると、ミンククジラなど資源が増えて、食料として利用可能な種類もあり、鯨類を持続的に利用するために資源量調査を行うなど、国際的な資源管理に協力しています。  
 なお、イルカなどの小型鯨類はIWCの管理対象外で、各国が自国の責任により管理することとなっており、日本でも捕獲対象となる種類ごとに科学的調査に基づき、資源に影響のない範囲の頭数を捕獲しています。

4.イルカを殺して食料とすることを、伝統や文化と呼ぶべきではないのではないか

 日本は四方を海に囲まれた島国で、古来より海産物を重要なタンパク源として利用してきました。鯨やイルカもその一部で、有史以前の縄文時代からの長きにわたり食糧源とされてきたことが判明しています。
 和歌山県の紀南地方では、非常に山が多いため耕作地に乏しく、沿岸に来遊する鯨やイルカを古くから食料としてきたことは、ごく自然なことです。日本では、捕獲した鯨類は余すことなく活用されており、肉を食料とするだけではなく、その他の部分は工芸品の材料として利用されています。日本の捕鯨は、石油の利用が始まるまで、鯨油の採取のみを目的として捕鯨を行い、大量に鯨を殺しては、その大部分を海に捨ててきた一部の外国の捕鯨とは一線を画してきました。
 太地町で捕鯨やイルカ漁が重要な産業となり、その文化に取り入れられ、地域の人々の生業となったことは、その厳しい環境に対応するために生じた当然の結果です。
 自然の恵みに感謝しながら、捕殺された鯨やイルカの供養祭を行うなどの習慣が今も続いています。大量の家畜を飼い、と殺し、食している日本の農家の人々も同じです。家畜の命を絶つことの罪を感じ、自然に感謝しながら食べています。
 この営みを一方的に批判したり、不正確な情報で煽ったりすることは、価値観の一方的な押しつけに過ぎません。

5.日本は経済大国であり、鯨やイルカを食べなくても生きていけるはずではないか

 日本においては、経済活動の中心から遠く離れた離島や半島、奥深い山村では、鯨やイルカ肉、その保存食が貴重なタンパク源とされてきました。今なお、鯨やイルカの肉が伝統食の重要な一部となっている地域が全国に散在し、また、その地域の出身者や小学校の給食で食べた思い出のある人々はその味を楽しみ、買い求めています。このようなことを、他の食べ物があるからという理由だけで、「やめるべき」と言えるのでしょうか。
 大量に流通、販売されているものではありませんが、現に今でも需要はあります。そして、鯨やイルカを捕獲して生活をしている漁業者は、その需要に応えているのです。捕鯨やイルカ漁をやめろと言うのは、この漁業者たちに自分たちの生活を捨てよと言うのと同じです。

6.イルカ漁は、日本のイメージを下げ、国益を損なうのではないか

 各国の食文化や食習慣は、その地域の気候、地理的条件、歴史や宗教など、数々の要因により形成されるものであり、相互尊重の精神が必要とされています。例えば、宗教の中には、厳しい戒律により禁止されている食べものがあります。しかし、自分たちが食べないからと言って、信者以外がそれを食べていることを非難することはありません。このような活動家たちによる一方的な文化的価値観の押しつけに屈しないことが、日本の国益を損なうことになるとは思いません。

7.イルカは知的で親しみある動物なのに、どうして日本では食べるのか

 人は皆、生きるために生き物の命を奪っています。西洋の国々では牧畜が盛んであり、大切にかわいがって育てた家畜をと殺して、食料としています。
 日本では、食事をするときに、自分たちが生きるために捧げられた命に対して、感謝の心を表すために『いただきます』と言って手を合わせます。イルカだけでなく、牛や豚などの家畜にも感情や知性があり、これらすべての動物には、我々と同じく生きる権利があります。しかし、肉を食べるために、我々はこれらの動物を殺さなければなりません。漁師たちが捕獲するイルカの種類や頭数の制限を厳守し、生活のためイルカ漁をしている限り、食べてよい、いけないという観点で動物を区別することは理解できません。

8.イルカ肉には高濃度の水銀が含まれているが、食用に用いるのは安全か

 水銀は、広く自然界に存在する金属です。海水中に含まれる水銀の一部は、微生物に吸収され、それをえさとする小魚から、小魚を食べる大型魚へと取り込まれていきます。食物連鎖の頂点に近づくにつれ、最も大きい魚類やイルカ等の海洋ほ乳類に蓄積される傾向があります。食物連鎖の高位にあるイルカには、他の魚介類と比べて高い濃度で水銀が含まれていることが判明しております。
 これら水銀量は、急性中毒(食後数日以内に健康を損なうこと)を引き起こす量ではないことが分かっています。ただし、イルカ肉や鯨肉の定期的な摂取による長期的な健康への影響については、すべてが特定されているわけではありません。しかし、体内の水銀も排泄されると考えると、バランスのとれた食事をとっていれば、長期的な健康への影響は大きくないと考えられます。実際、イルカを多く食べる太地町においても、長期的に見て水銀中毒の報告はありません。
 しかし、水銀は胎盤を通過し、社会生活に支障があるような重篤なものではないものの胎児の神経系の発達に影響を及ぼす可能性があることから国では2015年11月に「妊婦への魚介類の摂取と水銀に関する注意事項について」を改正し、妊婦の耐容週間摂取量が体重1kgに対して2.0マイクログラムとされました。これは、バンドウイルカだと、1回80gとして妊婦は2ヶ月に1回食べられる量になります。
 和歌山県は太地町など鯨類多食地域を含む県でありますので、各市町村役場で実施する母親学級(妊婦対象の保健指導)などでは、水銀濃度が高い魚介類のみを偏って多量に食べることを避けることや、併せてバランスのとれた魚介類の食べ方についての指導を行っています。

9.イルカ肉の摂取は水俣病につながるのではないか

 水俣病は極めて濃度の高い水銀を含む工業廃棄物に汚染された魚介類を繰り返し摂取したことによるものです。
 天然由来の水銀を含む魚介類は、水銀の耐容摂取量以下であれば食べ続けても健康リスクがないことは明らかです。また、天然由来の水銀を多く含む魚介類であっても、体内に取り込まれた水銀は約70日で半量が排泄されるので、消費の頻度をきちんと管理していれば、安全に食べることができます。
 これまで、自然現象として蓄積した魚介類由来の水銀摂取が人間の健康に被害を起こしたという明確な事例は報告されていません。現に、太地町では、昔からイルカを捕獲して収入を得ながら、今よりはるかに多量のイルカを食べていましたが、今も昔も水銀中毒の話は出ていません。

10.一部のイルカ肉はまぎらわしい表示で販売されているのではないか

 現時点において、イルカ肉が鯨肉として不正表示されている例はありません。そのような法律違反に関する具体的な情報を把握した場合は、国や市町村と連携して必要な調査等を実施します。
 そして、その事実を確認した際は、JAS法(農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律)に基づいて、規制当局が違反事業者に指導を行い、適正表示の徹底を義務付けます。

11.太地町のイルカ捕獲方法は非人道的ではないか

 太地町におけるイルカ追い込み漁は、以前は、映画『ザ・コーヴ』で示されたとおり、イルカを入江に追い込んだ後に、銛を用いて捕殺していました。
  しかし、2008年12月以降は、イルカが死ぬまでにかかる時間を短くするために、デンマークのフェロー諸島で行われている捕殺方法に改められています。この方法では、捕殺時間は95%以上短縮されて10秒前後になりました。イルカの傷口も大幅に小さくなり、出血もごくわずかになりました。
  また、家畜の解体が人目に触れないように専門の施設内で実施されているのと同様に、2008年12月からはイルカの解体も人目に触れない場所に移され、太地漁港内の新しい衛生的な施設内で行われるようになりました。
  映画『ザ・コーヴ』で指摘された問題の多くは解決されています。

12.日本だけが捕鯨やイルカ漁を継続しているのではないか

 鯨もイルカも鯨類ですが、一般的に成体が4mを超えるものを鯨、4m以下のものをイルカと呼んでいます。国際捕鯨委員会(IWC)は、大型の鯨の捕獲を規制対象としており、イルカや小型の鯨の捕獲については規制していません。
 大型鯨の捕獲規制の例外として、先住民が生計を維持するための捕獲は許されており、2012年において、アメリカで69頭、ロシアで143頭、デンマークで167頭が捕獲されています。
 ノルウェーとアイスランドは、IWCの規制に異議申し立てを行い、商業捕鯨を継続しており、2012年には、それぞれ464頭、52頭を捕獲しています。
  日本は、先住民生存捕獲も商業捕鯨も行っておらず、2012年漁期は、研究目的として424頭を捕獲しました。
 一方、IWCが規制していないイルカや小型の鯨の捕獲は、資源が枯渇しないように各国の自主管理のもとで行われており、2010年には、デンマーク領グリーンランドで2,429頭、デンマーク・フェロー諸島で1,142頭が捕獲されています。日本では、2011年において、3,283頭(2010年は6,577頭)を捕獲しています。うち、和歌山県では、1,218頭(2010年は1,557頭)を捕獲しました。
 このように世界中の多くの地域で鯨類の捕獲が行われており、日本だけが行っているわけではありませんし、ましてや太地町だけが行っているわけではありません。




(関連リンク)
※「米駐日大使のイルカ漁批判」に対する知事定例記者会見での質疑要旨

 

※世界動物園水族館協会(WAZA)が太地町での追い込み漁によるイルカ捕獲を理由として、日本動物園水族館協会(JAZA)の資格停止を通告したことについての和歌山県の見解