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乳酸菌製剤利用による鶏肉生産技術改善試験

  (肥育後期のブロイラーへの乳酸菌製剤添加による効果)

坂口勝規 西岡行男


【 はじめに 】

 現在のブロイラー種はよく改良が進み、その産肉性、経済性は優れている。しかし、その能力を十分に発揮させるためには高度な飼養管理技術が要求され、さらに飼料についても成長促進作用とコクシジウム症の予防を目的に抗菌性物質を添加した飼料の給与が一般的に行われている。

 一方、近年、消費者の食品の安全性に対する関心が高まる中で、鶏肉に起因する食中毒や耐性菌の発生等による健康への不安が社会問題化し、抗菌性物質を使用しない期間いわゆる休薬期間を延長したり、抗菌性物質を極力使用しない飼養管理技術が求められおり、さらに、近い将来、抗菌性物質を使用することができなくなることも予想される。

 しかし、集約的なブロイラー産業での抗菌性物質の使用中止は、成長の遅延、様々な疾病の発生、特にコクシジウム症の発生を招くことは必至であり、鶏自体の防御機能を高める技術の開発が急務である。

 一方、乳酸菌は家畜に給与すると腸内細菌叢を改善し、生産性や病気に対する抵抗性を高めることが知られている。

 そこで、我々は、肥育後期のブロイラーに抗菌性物質を含まない仕上げ飼料に乳酸菌製剤を添加給与して、生産性に対する効果を調査し、効率的な乳酸菌製剤を用いた飼養管理技術について検討をした。

【材料および方法】

試験1 乳酸菌製剤添加による生産性への効果を調査するために以下の試験を実施した。

  1. 試験期間
      平成12年2月15日〜平成12年4月4日

  2. 供試鶏および試験区分
      供試鶏はブロイラーの1銘柄であるチャンキー種で、餌付けから20日齢まで市販のブロイラー前期用飼料(CP 23%、ME 3.0Mcal/kg)で飼養後、21日齢で@乳酸菌添加区、A仕上げ飼料区、B従来区の3区に区分けした。各試験区は100羽×2反復つまり1区200羽で、各区の詳細は第1表のとおり。
  3. 飼養管理方法
      試験は所内のウインドレス平飼い鶏舎で実施した。各試験区は雌雄混飼で、飼育密度は50羽/坪、飼料および飲水は自由摂取とした。ワクチン接種およびその他の飼養管理は当所の慣行に従った。

  4. 調査項目
      調査項目は、育成率、平均体重、飼料消費量、飼料要求率、解体成績、経済性の比較とした。   また、21、28、35、42、49日齢に各区の床面に排泄された比較的新鮮な糞便を採取し、コクシジウムOPGおよび大腸菌群数、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)数の測定をした。

試験2 試験1の結果を基に効率的な乳酸菌製剤添加方法について調査するために2つの濃度で乳酸菌製剤を飼料添加する以下の試験を実施した。

  1. 試験期間
      平成13年3月6日〜平成13年4月24日

  2. 供試鶏および試験区分
      供試鶏はブロイラーの1銘柄であるチャンキー種で、餌付けから20日齢まで市販のブロイラー前期用飼料(CP 23%、ME 3.0Mcal/kg)で飼養後、21日齢で@0.25%乳酸菌添加区、A0.5%乳酸菌添加区、B仕上げ飼料区、C従来区の4区に区分けした。
    各試験区は100羽×2反復つまり1区200羽で、各区の詳細は第2表のとおり。
  3. 飼養管理方法
      試験1と同様。

  4. 調査項目
      試験1と同様。

【 結  果 】

試験1 乳酸菌製剤添加による生産性への効果に関する試験

  1. 育成率
     各区の21〜49日齢の育成率は第3表に示したとおりで、乳酸菌添加区が他の2つの区より低かったが、統計的には各区の間で有意な差は認められなかった。また、各区の斃死鶏については、その原因、症状等の特定の傾向は認められなかった。

  2. 平均体重
     各区の21、35、49日齢の平均体重は第4表に示したとおりであった。
     各日齢において、各区間で統計的に有意な差は認められなかった。

  3. 飼料消費量および飼料要求率
     各区の飼料消費量および飼料要求率を第5表に示した。
     飼料消費量では、乳酸菌添加区が最も多く、次いで従来区で、仕上げ飼料区は最も少なかった。
     飼料要求率では、乳酸菌添加区が最も高く、従来区と仕上げ飼料区は同じであった。

  4. 解体成績
     49日齢で各区から平均体重に近い個体をオス6羽、メス6羽、計12羽ずつを抽出して解体試験に供した。
     各区の解体成績を第6表に示した。各項目において各区間で有意な差は認められなかった。

  5. 経済性の比較
     各試験区の経済性の指標として性能指数と収益指数で比較した。(第7表)
     性能指数(プロダクションスコアー)は従来区と仕上げ飼料区がほぼ同程度で、乳酸菌添加区はやや劣った。
     収益指数では仕上げ飼料区が最も高く、次いで従来区で、乳酸菌添加区は試験に用いた乳酸菌製剤が高価であったためかなり劣った。

  6. 糞便検査
     試験期間中の各試験区からコクシジウムのオーシストは検出されなかった。
     大腸菌群数は従来区の28日齢を除いて各試験区ともほぼ106.5〜107.0CFU/gで推移していた。各区の比較では、従来区がやや多い傾向であった。(第1図)
     ウェルシュ菌は乳酸菌添加区では35日齢から、仕上げ飼料区では42日齢から、従来区では49日齢から検出され始めたが、その菌数はいずれも少なく、仕上げ飼料区の42日齢および49日齢での104.1CFU/gが最高であった。(第2図)
  

試験2 効率的な乳酸菌製剤の添加方法に関する試験

  1. 育成率
     各区の21〜49日齢の育成率は第8表に示したとおりで、従来区が2つの乳酸菌添加区および仕上げ飼料区より低かったが、統計的には各区の間で有意な差は認められなかった。また、各区の斃死鶏については、その原因、症状等の特定の傾向は認められなかった。

  2. 平均体重
     各区の21、35、49日齢の平均体重は第9表に示したとおりであった。  35日齢では0.5%乳酸菌添加区のオスが仕上げ飼料区のオスより有意に重く(P<0.05)、0.5%乳酸菌添加区のメスは従来区のメスより有意に軽かった(P<0.01)が、雌雄の平均体重では各区間で差はなかった。  また、49日齢のオスでは0.25%乳酸菌添加区が最も軽く、従来区との間で有意差(P<0.05)が認められたが、わずかな差であり、メスおよび雌雄の平均体重ではいずれの試験区間でも有意な差は認められなかった。

  3. 飼料消費量および飼料要求率
     各区の飼料消費量および飼料要求率を第10表に示した。
     飼料消費量では、21〜35日齢では従来区が他の区に比べてやや多く、35〜49日齢では0.25%乳酸菌添加区が他の区に比べて多かったため、全試験期間では0.25%乳酸菌添加区が171.4g/日・羽、従来区が170.0g/日・羽で、0.5%乳酸菌添加区の167.5g/日・羽、仕上げ飼料区の167.4g/日・羽よりやや多い結果になった。
     飼料要求率では、35〜49日齢で0.25%乳酸菌添加区が他の区より高く、全試験期間でも他の区より高い結果であった。

  4. 解体成績
     49日齢で各区から平均体重に近い個体をオス6羽、メス6羽、計12羽ずつを抽出して解体試験に供した。
     各区の解体成績を第11表に示した。と体歩留まりはオスでの比較で仕上げ飼料区が0.5%乳酸菌添加区および従来区より有意に低かった(P<0.05)が、その差は大きなものではなく、メスおよび雌雄の平均では有意差は認められなかった。また、と体重に対する正肉重量の割合ではオスで0.25%乳酸菌添加区が他の試験区より低く、従来区との間に有意差も認められた(P<0.05)が、メスおよび雌雄の平均では差は見られなかった。と体重に対する可食内臓の割合ではオスで0.25%乳酸菌添加区が最も高く、次いで仕上げ飼料区が高く、0.5%乳酸菌添加区および従来区との間に有意差が認められたが、メスおよび雌雄の平均では差は見られなかった。腹空内脂肪の割合では各試験区間に有意な差は認められなかった。と体重に対する盲腸重量の割合ではオスで0.25%乳酸菌添加区と従来区の間で有意差が認められたが、その差は大きなものではなかった。

  5. 経済性の比較
     各試験区の経済性の指標として性能指数と収益指数で比較した。(第12表)
     性能指数(プロダクションスコアー)は0.5%乳酸菌添加区、従来区および仕上げ飼料区がほぼ同程度で、0.25%乳酸菌添加区はやや劣った。
     収益指数では仕上げ飼料区が最も高く、次いで従来区で、2つの乳酸菌添加区は試験に用いた乳酸菌製剤が高価であったため、乳酸菌製剤の添加量に応じて飼料費が高価になったために仕上げ飼料区および従来区より劣った。

  6. 糞便検査
     試験期間中の各試験区からコクシジウムのオーシストは各試験区で28日齢から検出され始め、35〜42日齢でピークを示し、49日齢では減少した(第3図)。
    しかし、試験区によるOPGの差は認められず、血便等の症状は認められなかった。
     大腸菌群数は各試験区とも概ね107.0〜108.0CFU/gで推移していたが、各試験区間で特定の傾向は見られなかった。(第4図)
     ウェルシュ菌は従来区では検出されなかったが、その他の区では42日齢で検出され、2つの乳酸菌添加区では49日齢で検出されなくなったが、仕上げ飼料区では49日齢でも検出され、その数が増加した。しかし、何れの検出数も少数であり、壊死性腸炎等の疾病の発生も認められなかった。(第5図)
    

【 考  察 】

 試験1では休薬期間の延長を図る目的で、通常のブロイラー用飼料の給餌体系のなかで後期飼料を抗生物質あるいは抗菌剤の添加しない飼料いわゆる休薬飼料に替えて給与し、そこに乳酸菌製剤を添加した場合、育成率、増体性、飼料要求率等に及ぼす効果について調査した。乳酸菌製剤添加によって育成率はやや劣ったものの統計的に有意な差ではなく、また、増体量は従来の後期飼料給与と同程度の発育を示した。飼料消費量では乳酸菌添加区がやや劣り、飼料要求率も乳酸菌添加区が他の2区より劣ったが、その差はそれほど大きな差ではなく、乳酸菌製剤の飼料添加によって休薬期間を延長できることが示唆された。しかし、収益指数の比較では、使用した乳酸菌製剤が高価であったため乳酸菌添加区が他の区よりかなり劣っていた。

 そこで、試験2では乳酸菌製剤の適正添加濃度を調査する目的で2つの濃度(0.25%と0.5%)で乳酸菌製剤を添加して、育成率、増体性、飼料要求率等に及ぼす効果について調査をした。乳酸菌製剤添加およびその添加濃度の違いによる育成率の差はなく、また、増体量も2つの乳酸菌添加区は従来の後期飼料給与区にはわずかに及ばないもののほぼ同程度の発育を示した。飼料消費量では試験後半で0.25%乳酸菌添加区がやや多く、飼料要求率でも他の区よりわずかに劣った。解体成績では生体重に対すると体重の割合、と体重に対する正肉重量、可食内臓重量および盲腸重量割合でオスでのみ有意差が認められたが、いずれも大きな差ではなく、メスでや雌雄の平均では各試験区の間で有意差は認められず、また、乳酸菌製剤の添加の有無やその濃度の違いによる特定の傾向も見られなかった。経済性の比較、特に収益指数の比較では使用した乳酸菌製剤が高価であったためやはり2つの乳酸菌添加区が仕上げ飼料区および従来区よりかなり劣ったが、2つの乳酸菌添加区の比較では、0.25%乳酸菌添加区が0.5%乳酸菌添加区より1羽当たり約10円優れた。

 今回使用した乳酸菌製剤は子豚の単純性下痢の予防治療が用途である動物用医薬品であるが、今後、低価格な乳酸菌製剤の検索、乳酸菌の自家培養による低価格化あるいは無償化によって飼料費の高騰を防ぎ、さらに鶏肉の差別化、有利販売による売り上げの増加を図ることによって乳酸菌添加区の収益指数を上昇させることは可能だと思われる。また、鶏に有効性が高い乳酸菌の菌種、菌株の検索も重要であると思われる。

以上の結果から乳酸菌添加区については従来区に比して育成率や増体性に遜色が無く、乳酸菌添加によって後期飼料を抗生物質等が含まれない仕上げ飼料に替えることが出来ることが判った。しかし、今回の2回の試験は特定の疾病の発生がなく、各試験区の育成率も高いことから、比較的良好な衛生環境下で行われた試験であると思われ、そのために仕上げ飼料区においても疾病の発生等の障害が無かったとも考えられ、実際の生産現場では鶏舎の空舎期間や飼育環境が異なるため、飼育環境の検討も今後の課題である。また、試験2での乳酸菌製剤の添加濃度についての比較では、飼料要求率や正肉割合などで0.5%乳酸菌添加区の方が優れていたが、いずれもわずかな差であり、飼料添加によって高くなる飼料費のことを考慮すると、今回使用した乳酸菌製剤は0.25%添加が妥当であると思われる。

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