モデル事例集「市場美佐子」

「防災に女性の視点を伝え続ける」

スリーダブリュー わかやまウィメンズワッチタワー

代表 市場 美佐子さん (和歌山市)

同じ目線で伝えていくこと

市場さんは、防災・減災の啓発をすすめる女性グループ「わかやまウィメンズワッチタワー」の代表として様々な活動を続けています。
市場さんが防災に関心を持ったのは、阪神淡路大震災のとき。地震発生時、市場さんが住む和歌山市も大きく揺れ、別室で寝ていた子どもたちの悲鳴を聞きながら、立ち上がることすらできず、ただ寝室に置いてあったタンスを押さえていたといいます。生まれて初めて体験する大きな地震、被災地、神戸の目を疑うような悲惨な状況がテレビで放送されました。様々な情報が飛び交う中、毛布や防寒着などの物品が不足しているため、和歌山港から神戸に物品を運ぶ船が出ることを知りました。市場さんは家じゅうの毛布や衣類、食べ物などを一つの箱に入れ梱包して送ったといいます。が、あとで仕分けが大変だったことを知らされ、知識がなかったことに反省。その後、子どもたちと神戸に向かい、震災の爪痕の残る神戸の街をみてその現実に絶句。もしこの地震がわが町、和歌山で起きていたらどうなっていただろう。家族を守りたい、家族を守るために自分に何ができるだろうという思いがあふれたといいます。そして、自分にできることを考え、防災の意識を高めようと地域に働きかけました。その頃は思いだけで防災に関しての知識もほとんどなく、また防災は男の役割だと言われ、誰からも全く相手にもしてもらえず気持ちは萎えていきました。
そんな市場さんに新たに防災への情熱があふれだしたのは、今から10年前のことでした。40歳半ばでガンを発症、生死にかかわる病気になり、手術を受ける前に今までやり残したことはないか、もし、この先も生かされるのなら一体自分は何をやりたいのかをノートに書きだしました。その時に一番心に残ったのが防災で、もう一度防災に取り組もうと決心しました。
手術も成功、ちょうど和歌山県と和歌山大学防災研究教育プロジェクト(現・和歌山大学防災研究教育センター)が連携した地域防災リーダー育成講座「紀の国防災人づくり塾」が和歌山大学で開催されることを知り受講を決意。講座修了時には防災士の受験資格を付与され、防災士の資格を取得しました。受講者は約100人、そのうち女性は1割にも満たない状況だったといいます。
資格は取得したけれど活かし方がわからない。そんなとき、和歌山大学の今西客員教授から、これからは防災の分野も女性も男性とともに取り組む時代です、と背中を押され、修了生で女性だけのグループを立ち上げました。『ワッチタワー』は『火の見やぐら』、防災に警鐘をならす和歌山の女性たちの会ということで命名、愛称を3W(スリーダブリュー)としました。現在、19歳から50代の10人の女性メンバーは、短大生、子育て中の人、また介護士、看護師、民生委員など、様々な職種に携わっています。
和歌山大学のサポートと、啓発されている側が何を求めているのかを考え、それを訴えていくという今西教授のマーケティングの手法を活かし啓発活動を始めますスリーダブリューでは和歌山大学防災研究教育センター今西教授より「防災啓発プログラム」をいただき、『トイレが大変!』(山下享:著)の読み聞かせ・新聞紙でつくるマイトイレ(スリーダブリュー考案)の防災減災啓発講座は現在まで約120か所で開催され、徐々に女性の視点での防災が認められるようになったと語られました。
昨年は県の支援で「いとはんプロジェクト」コンサートを開催。地域の絆づくりと防災、減災に興味のない人に伝えるために、コンサートで防災に関心のない人を惹き付け、マイトイレづくりを取り入れて防災に関心をもってもらう企画が好評を得たといいます。参加者からは、「元気をもらった」「防災に関心を持つことができた」との感想をいただいたそうです。

子どもたちに防災教育を

そのほかに力を入れているのが、小学校、幼稚園、保育園などでの防災教育です。東日本大震災後、災害ボランティアとして岩手県に向かい、被災した男性の実話をもとに大型紙芝居「逃げろ、逃げろ」を作成し、子どもたちに逃げることの大切さを伝えています。紙芝居では効果音に、津波の警報、無線の声、サイレン、消防署の鐘、半鐘の音などを用いることによって臨場感が増し、より子どもたちを惹き付けられるそうです。
また、地元の保育園に防災対策の大切さをお話したところ、熱い思いが伝わり、毎月防災訓練を取り入れてくれるようになりました。園長先生の独断で職員にも園児にも知らせず、不定期に防災訓練を行うため、その都度、問題点が明確になり、生きた防災訓練になっているといいます。子どもたちに防災訓練を通して、子どもたちがそのことを家で親や祖父母に話すことで、「防災減災の大切さ」が伝わっていくようです。
災害などで子どもや孫を亡くすと「未来をなくす」ことになり、気持ちの問題としてもなかなか立ち上がれなくなります。子どもがひとりでも逃げられるように、”逃げる“ことを教えることが大人の責務、自分の命を守ることを教えてきたかが問われると語られました。

地域で活きた防災啓発を

地域での反応は十数年前と比べると格段と違い、自治会等で防災講座を行うことができるまでになりました。昨年の3月には地元公民館で防災講座と避難訓練を開催しました。和歌山市に津波が到達するとされている45分の間に、実際にどこまで行けるかを確認するために、防災リュックを背負い避難所まで歩きました。今西教授が言う「人は実際にやったことしか非常時にはできない。経験すること、逃げる意識が大事」ということを伝え続け、「参加者を巻き込んで質問を投げかけ、受け答えしながら伝えていくことが基本。同じ目線に立ち続けること、女性の視点の大切さを伝えること」と話されることを大切にして啓発活動をしているといいます。
市場さんは、「今後スリーダブリューが大きくなることより、スリーダブリューのような小さなグループが和歌山にたくさんうまれることが大事。地域によって防災の仕方が違う、地域の環境に合った防災に取り組む小さいグループがたくさんできることが大きな力につながっていく。また、子どもたちに防災教育を根付かせていくこと。子どもたちが自分の命を守り、自分を大切にすることができたら、周りの人も大切にできる。そのことはいじめ問題にもつながる。小さい頃から意識させることが大事」と、防災・減災への思いを熱く語られました。

防災ワンポイントチェック!

  • 避難用の防災リュックの中におむつや介護用品、生理用品など1個ずつでもいいから入れておくことも。自分には必要なくても誰かのために使える。
  • 何を持って逃げたらいいかを考え、防災リュックを準備する。実際にその防災リュックを背負ってみて、避難する間、ずっと背負っていられる重さかどうかをチェックする。
  • 地震の時には、一番に窓を開けること、これは逃げ場の確保として必要。

などなど、生活の視点でチェックすることが大事です。

(センターニュース第58号より、一部修正して掲載)

情報

  • スリーダブリュー わかやまウィメンズワッチタワー

TEL:073-454-8267

FAX:073-454-3226
メール:info@3w-itohan.jp

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