モデル事例集「坂口淑子」

「命をはぐくむ授業」

橋本市役所 健康課

母子保健係長:坂口淑子 さん(橋本市)

本授業を展開しようとしたきっかけは

連日のようにテレビや新聞を賑わせている虐待問題をふくめ、本市でも(子供が健全に育つ)上で弊害となる状況がいくつも出てきていたからです。
特に、望まぬ妊娠や、DVの問題など子育てに向かう以前のところで心配な家庭が増加しており、何とか早期に予防しないと大変な事態になっていくのではないかと考えたのがきっかけでした。
私達母子保健係では、日々の仕事の中でその課題にどう取り組むかについて考え、小・中学校へ働きかけることはもちろんですが、地域で活動してくれている母子保健推進員のみなさんやほっとシッター(子育て支援グループ)、親子サークルの保護者の協力も得ながら授業に組み込んで頂くようになりました。
小学校では、思春期の入口であり心身ともに大きく成長する一歩手前の4年生および保護者を対象とし、

  1. 自己肯定感がもてること
  2. 自分を大切にすることはもちろんのこと他者をも大切にする気持ちの持てること(いのちの大切さ)
  3. 保護者に対しては、今までの育児を振り返り、来るべき思春期に向けて、親としてどう向き合い対応していくのかについて考えるきっかけとする

という以上3点をねらいとして実施しました。
実施内容については、いのちのルーツを伝え、どのように成長していくのか視聴覚教材を利用して講義をしたり、胎児人形の抱っこ体験や子宮モデルを使用しての出産模擬体験、心音の聞き比べ(脈拍の場合もあり)等子ども達には体験型で飽きない工夫を凝らしました。
また、保護者には子ども達と一緒に講義を聞いてもらい、帰宅後に授業で聞いたことを親子で共通の話題として話ができることを目標にしました。

実施後の感想を一部紹介させていただきます。

(小学生)

  • 今日は、命を育む教室で命の大切さを教えてくれてありがとうございます。わたしが、印象に残った言葉は、「お母さんはきみたちがうまれてすごくうれしかったんだよ。」という言葉です。わたしは、お母さんがきらいと思ったことがあります。だけど、今日の命を育む教室で、これからは、お母さんもわたしを大切におもってくれているんだ。と思ってとてもうれしくなりました。わたしが、ここにいられるのは、お母さんのおかげなので、これからはお母さんに感謝しようと思います。
  • ぼくは、命を育む授業をうけて、まず、いのちのたいせつさをかんじました。ぼくは、3か月のあかちゃんのもけいをだっこさせてもらいましたが、ずっしりと重くて、ぼくもこんなときがあったんだなとおもいました。夕食時ぼくがあかちゃんだったときの話を聞くことができました。小さい時の話しをきけてうれしかったです。これからも長生きしたいです。
  • 1番心に残ったのは、生まれてくる体験です。子宮の中はせまかったです。あんなせまいところから出てきたなんてすごいと思いました。お母さんもがんばって生んでくれたのだと感じました。
    2番目に心に残ったのは赤ちゃんが生後30日ぐらいで心臓が動くということです。生まれてくるまでに、2,000倍になるのがとてもおどろいたし、私は1分間に100回ぐらいしか心ぞうが動かないのに赤ちゃんは、1分間に120回ぐらい動くというのもおどろきました。
    「生きてるだけで100点満点」という言葉が心にひびきました。自分に自信を持てない時、この言葉で自分をはげまそうと思います。

私達の実施した1回のみの授業で、子ども達の心にどのように届いたかは解りませんが、感想には自分達の伝えたいことがきちんと書かれておりほっと一安心しています。
次に、中学校では、目の前に“性”の問題が控えていることから、養護教諭の先生とも相談して「命を丸ごと引き受ける責任について」というテーマで、

  1. 教室の目的
  2. 第2次成長期の心と身体のこと
  3. 人工妊娠中絶と性感染症について
  4. いのちの大切さ
  5. みなさんへのメッセージ

という以上5点について講義をし、その後、男女別のグループワーク、地域の親子サークルの子どもと保護者の交流を実施しました。

実施内容については、中学校においてもできる限り視聴覚教材を利用して、いのちの始まりの説明をしたり、子宮内胎児模型や胎児人形を活用しておなかの中での赤ちゃんの成長の様子を確認し、中絶することはどういうことなのか、また、避妊と性感染症については実物や教材を使用してグループワークや講義の中でより具体的に深めていきました。
グループワークでは、学校の先生方には敢えて入ってもらわずスタッフのみで対応しました。

そのため、色々な内容について質問してくれたり、こちらからも投げかけたりと深い話ができたのは良かったと思います。
性を意識したり興味を持ったりすることがいけないことではなく、興味本位の情報でなく、きちんとした知識を持つことの大切さや、お互いを大事に思い合う気持ちを持つことで望まぬ妊娠を防ぐことができることについて話をしました。
中学生になると、保護者や学校関係者には聞きにくいことも出来てくるので、私達のような外部の存在の方が興味深く聞いてくれることもあるようです。
早い段階から関わっていくことで、顔見知りとなり、誰にも相談できなくて困った時に、大事に到らない内に思い出してもらえたらと願っています。
また、講義だけでなく、最後に地域のサークルの子ども達や保護者と触れ合う機会が持てたので、より身近にいのちの大切さを実感してもらえたように思います。
地域のお母さん達には、中学生との交流は初めてなため、戸惑う場面もありましたが、「来るべき将来、自分の子どもも中学生になりこの様な体験をすることになるかもしれないのだから」と訴えると「この授業はとてもいいことだから協力します。」と何日も協力してくれた方々もいました。
実施場所として地域の拠点である公民館を選択し、公民館職員にも協力を得ました。

地域をも巻き込んだこの授業は、地域のつながりをつくる上でとてもよかったと思いました。

実施後の感想を一部紹介させていただきます。

(中学生)

  • 自分の身体を大切にしたいと思った。
  • 人を思いやる事が大切だと感じた。
  • 大人の人は、本当に僕達のことを思ってくれているんだなあと思った。
  • 改めて命の大切さがわかりました。性病の怖さもわかったので良かったと思います。
  • しっかり考えて行動したいと思います。1つ1つの行動に責任を持ちたいと思いました。
  • 自分も嫌な時は嫌と言えるようになりたい。
  • 性のことをよく理解して判断することが大切だと思いました。
  • 子どもを人工中絶するときの話がとても印象に残っています。1つの命やのに 、中絶しなくてはならないのは悲しいことやと思いました。
  • 今日の話を聞いて改めて「性」に対する意識が強まりました。大事な人を大切におもう気持ちを忘れずに生きていきます。あと、子どもとのふれあいで、自分も子どもを生んで幸せな家庭をきずきたいし、子どもとふれあえて本当に楽しかったです。
  • 性行為などをする時には、避妊道具がどれだけ大切かということがわかった。
  • 学校では聞けなかったことや初めて聞いたことがたくさんあってすごくいい勉強になりました。

最初は、小学校・中学校の児童生徒さん達が話を聞いてくれるのか不安もありましたが、こちらが真剣に大事な話をすれば、きちんと聞いてくれることが解り、安心しました。

日々の業務だけでは、学校保健との交流がなかなかできなかったのですが、今後もこの活動を全市的に広げ、母子保健活動とのつながりを作っていきたいと考えています。

情報

  • 活動内容

市内の小学校、希望のある中学校に出向き『いのちを育む授業』の開催

実施回数 平成22年度は、小学校1か所、
平成23年度は、小学校5か所、 中学校2か所
平成24年度は、小学校14か所、中学校2か所(予定)

  • 活動本拠地:橋本市役所 健康課 母子保健係
  • 代表者氏名:橋本市役所 健康課 母子保健係長 坂口 淑子

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