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第2章 紀淡海峡周辺地域の地域交流資源の発掘

2-2 風土・文化の共通性・類似性の現状

2-1 地質・石のつながり
 紀淡海峡を通して歴史的及び文化的なつながりがみられるが、 その一方で、自然環境など人間が生活を行なう以前からのつながりとして、地域の地層に着目したい。 今日の本州側の大阪府や和歌山と、四国側とは海によって隔てられているが、 地層としては一つにつながっている。一つは、本州側の大阪府阪南市から、 和歌山県友ヶ島を通って、淡路島の南部、そして四国側の徳島県鳴門市につながっていく「和泉層群」である。
 もうひとつが、本州側和歌山県和歌山市から、兵庫県南淡町沼島、そして徳島県徳島市を結ぶ「三波川変成岩」である。
 広域的にみると、和泉層群は、奈良県~大阪府~和歌山県~兵庫県~徳島県~香川県とつながり、 三波川変成岩は、和歌山県~兵庫県~徳島県~高知県を結ぶ。

石のつながり図

和泉層群でのつながり
 和泉層群は、実際には東は三重県から、奈良県、大阪府、和歌山県、兵庫県(淡路島)、 徳島県、香川県、そして西は愛媛県にまで分布する白亜期後期(約1億~6400万年前)の堆積岩である。
 主に砂岩、頁岩、礫岩からなり、ところによって緑泥岩を含み青色を呈する。 それゆえに、青石という名称で呼ばれることもある。一般的には、和泉砂岩と呼ばれる。 和泉と地域名がつけられているが、この名で、兵庫県の淡路島、徳島県鳴門市でも、通じるようである。 しかし、『日本の石』(昭和55年)によると鳴門市で採石される石は「鳴門砂岩」とされており、 正式名と通称の間で違いがあるようである。
 また淡路の和泉層群の石材については、明確な名称が一般的にはないようであるが、 『日本の地質6近畿地方』(共立出版1987)によると、近畿地方の主な石材として、 兵庫県淡路島南部を産地とする、「青石」という名称がでている。 岩石名は「砂岩(和泉層群)」、用途は「土木・建築」とされている。 この青石が、東側(本州側阪南市)の和泉砂岩と、西側(四国側徳島県鳴門市)の鳴門砂岩に、 同じ和泉層群でつながるものと考えられる。大阪府の阪南市では、現在でも和泉砂岩の切り出しが行われている。 また徳島では鳴門市でも採石が行なわれているが、どちらも砕石して資材にされている。淡路でも同様に砕石が行なわれている。
 以下、飯島亮加藤栄一の『日本の石』(昭和55年・大和屋出版)によると、それぞれの石材に関する産地、石質、特徴、用途は次のようになっている。

和泉砂岩 泉南郡阪南町桑畑・砂岩(中生代のアルコース砂岩)
緑灰色、硬質、緻密・土木用、間知石、砕石、割石墓石、沓脱石、橋石、泉州青石および鳴門青石と同系。
鳴門砂岩 鳴門市一帯・砂岩
緑灰色、緻密堅固・石積、石塀、石造工芸品 和泉層群に属す。

三波川変成岩でのつながり
 三波川変成岩は、日本最大の広域変成帯である三波川変成帯に含まれる。 三波川変成帯は、関東山地から九州北東部にいたる。 変成作用はジュラ紀中期頃(約2~ 1.5 億年前)とされている。 近畿地方周辺では、東は三重県から、奈良県、和歌山県、そして、四国の徳島県、高知県、愛媛県へと伸び、 西は大分県までつながっている。主に塩基性片岩、泥質片岩、砂質片岩などの結晶片岩からなる。 塩基性片岩は、緑泥岩等の緑色鉱物を含み、緑色を呈するため緑色片岩とも呼ばれる。 これらは、各地で青石として庭の名石とされている。 それぞれの地方で、伊勢青石、紀州青石、阿波青石、伊予青石とブランドとなっている。 以下、『日本の石』では、それぞれの石材は次のように紹介されている。

●伊勢青石 鳥羽市管島・緑泥片岩
青石として伊予に次ぐ良品。変色なく、冴味少ない。景石に使われる。
古い時代の庭石で現在は採取されていない。
●紀州青石 海草郡西脇町(現在の和歌山市)・緑泥片岩
阿波青石のように、青味が強く形姿に優れている。景石、飛石、橋石、乱張用。
古くから京の名園に用いられ粉河寺の庭石は紀州青石の石組。
●阿波青石 吉野川南岸沿・緑泥片岩
青色を呈し伊予青石と同じように冴味あり、石肌の模様は伊予青石に較べあまり目立たない。
庭石、石碑、門柱、水鉢・工芸品としての加工が盛んである。庭石としては山採りものに現代的特色有り。 (阿波砂利:名西郡石井町付近。緑泥片岩青色、紫系の2種有り。 偏平で2センチ内外。敷砂利・阿波青石ノ砕石を加工したもので販路は広い。)
●伊予青石 西宇和郡三崎町・緑泥片岩
青緑色に冴え味があり色があせない。阿波青石に比べ石の表面に皺の様な地図模様あり。
景石、橋石、飾石、飛石。昔は船で海中に沈んでいた石を引き上げて出荷していたので海石として有名。
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