○和歌山県中小企業振興条例

平成25年12月26日

条例第75号

和歌山県中小企業振興条例をここに公布する。

和歌山県中小企業振興条例

和歌山県は、古くから盛んであるしょうゆ、みその製造をはじめ、繊維、染色、皮革、家具など数多くの地場産業を有し、それらを担う中小企業は、長い伝統に培われた進取の気性と積極果敢な挑戦により、環境の変化や景気変動の影響を乗り越えてきた。そのたゆまぬまい進により、産地には技術、人材等が集積している。

また、本県には、全国有数の生産量を誇るみかん、かき、もも、うめに代表される果樹をはじめ、野菜や花き、木材、魚介類等の豊富な農林水産資源や、世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣さんけいみち」に代表される歴史、文化、景観等の魅力的な地域資源が数多く存在しており、これらの資源を活用した事業活動も盛んに行われている。

このように、県内企業の大多数を占めている中小企業は、多種多様な分野において事業活動を行っており、本県経済の発展を支え、雇用機会を創出するなど、地域社会の担い手として県民生活の向上に大きく貢献している。

しかしながら、近年、国際競争の激化や人口減少社会の到来による需要の減少などにより、県内中小企業は極めて厳しい経営環境に置かれている。

このような状況の中、未来に羽ばたく元気な和歌山を築くためには、中小企業の成長発展が不可欠であり、中小企業の自主的な努力はもとより、社会全体でその成長発展を支えていかなければならない。

私たちは、中小企業の振興を県政の重要課題と位置付け、積極的に中小企業に対する支援を推進していくことを決意し、この条例を制定する。

(目的)

第1条 この条例は、中小企業が本県経済において果たす役割の重要性に鑑み、中小企業の振興に関し、基本理念を定め、県、中小企業者、中小企業団体、大企業者、金融機関、大学等、県議会及び県民の責務又は役割等を明らかにするとともに、県の施策の基本となる事項を定めることにより、中小企業の振興に関する施策を総合的に推進し、もって本県経済の持続的な発展及び県民生活の向上に寄与することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

(1) 中小企業者 中小企業基本法(昭和38年法律第154号。以下「法」という。)第2条第1項に規定する中小企業者で、県内に事務所又は事業所を有するものをいう。

(2) 小規模企業者 法第2条第5項に規定する小規模企業者で、県内に事務所又は事業所を有するものをいう。

(3) 中小企業団体 商工会、商工会議所、中小企業団体中央会その他の中小企業の支援を行う団体をいう。

(4) 大企業者 中小企業者以外の事業者で、県内に事務所又は事業所を有するものをいう。

(5) 金融機関 銀行、信用金庫、信用協同組合その他の金融業を行う者をいう。

(6) 大学等 国内外の大学、高等専門学校その他の研究機関をいう。

(基本理念)

第3条 中小企業の振興は、中小企業者の創意工夫及び自主的な努力が促進されることを基本とし、その成長が図られることを旨として推進されなければならない。

2 中小企業の振興は、中小企業が地域経済の活性化及び雇用の創出に貢献し、地域社会の担い手として県民生活を支える重要な存在であるという基本的認識の下に推進されなければならない。

3 中小企業の振興は、地域に集積された豊富な人材や優れた技術、豊かな自然や歴史、文化といった観光資源、多種多様で高品質な農林水産物など本県が有する地域資源の活用を図ることにより推進されなければならない。

(県の責務)

第4条 県は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、中小企業の振興に関し、総合的かつ戦略的に施策を実施する責務を有する。

2 県は、中小企業の振興に関する施策を実施するに当たっては、国、他の地方公共団体、中小企業団体、金融機関、大学等その他の関係機関との連携に努めるものとする。

3 県は、中小企業の振興に関する施策を講ずるに当たっては、経営資源(法第2条第4項に規定する経営資源をいう。)の確保が困難であることが多い小規模企業者や事業再生に取り組む中小企業者に対して配慮するとともに、中小企業者や関係団体等の意見を聴き、施策に反映するよう努めるものとする。

4 県は、その主催する行事等において、中小企業者が供給する紀州の地酒等の県産品の利活用に率先して取り組むほか、工事の発注、物品及び役務の調達等に当たっては、予算の適正な執行に留意しつつ、中小企業者の受注機会の増大に努めるものとする。

5 県は、中小企業の振興に資するため、交通や情報通信をはじめとした産業基盤の効果的な整備及び活用に努めるものとする。

(市町村への支援)

第5条 県は、市町村が行う中小企業の振興に関する施策に対し、情報の提供、助言その他の必要な支援を行うものとする。

(中小企業者の努力)

第6条 中小企業者は、基本理念にのっとり、経済的社会的環境の変化に対応して、経営基盤の強化、雇用の確保、雇用環境の整備、人材の育成等に努めるとともに、県産品の利活用、中小企業団体への加入、地域活動への参画等により、地域経済及び地域社会への貢献に努めるものとする。

(中小企業団体の役割)

第7条 中小企業団体は、基本理念にのっとり、中小企業の経営の向上に積極的に取り組むとともに、県が実施する中小企業の振興に関する施策に協力するよう努めるものとする。

(大企業者の役割)

第8条 大企業者は、基本理念にのっとり、その事業活動を通じて、中小企業の振興に配慮するとともに、県が実施する中小企業の振興に関する施策に協力するよう努めるものとする。

(金融機関の役割)

第9条 金融機関は、基本理念にのっとり、中小企業者の資金需要に適切かつ積極的に対応するなど、中小企業者の経営の向上に配慮するとともに、県が実施する中小企業の振興に関する施策に協力するよう努めるものとする。

(大学等の役割)

第10条 大学等は、基本理念にのっとり、中小企業と連携した研究開発の推進及びその成果の社会への還元並びに人材の育成を通じて、中小企業の振興に配慮するとともに、県が実施する中小企業の振興に関する施策に協力するよう努めるものとする。

(県議会の役割)

第11条 県議会は、基本理念にのっとり、中小企業の振興に関し、中小企業者をはじめ県民の声が施策に反映されるよう、政策提言等を行うものとする。

(県民の理解と協力等)

第12条 県民は、地域の中小企業の事業内容やその役割について、地域活動や学校教育等を通じて認識し、中小企業の振興が本県経済の活性化及び県民生活の向上に寄与することを理解するとともに、県が実施する中小企業の振興に関する施策に協力するよう努めるものとする。

2 県は、前項に規定する県民の理解の促進のため、広報及び啓発に努めるものとする。

(基本方針)

第13条 県は、基本理念にのっとり、次に掲げる基本方針に基づき、中小企業の振興に関する施策を講ずるものとする。

(1) 経営革新(法第2条第2項に規定する経営の革新をいう。)の促進及び経営基盤の強化

(2) 製品開発及び販路開拓の支援

(3) 創業及び新たな事業の創出の促進

(4) 事業活動を担う人材の育成及び確保

(5) 資金供給の円滑化

(6) 知的財産の活用及び産学官連携

(7) 国際的視点に立った事業展開の促進

(8) 中小企業者の事業活動の振興に資する企業誘致の促進

(9) 農商工連携及び6次産業化並びに医療福祉分野等との連携の促進

(10) まちの賑わいにつながる商業振興の促進

(11) 中小企業者の製品や技術等に関する情報の発信

(中小企業振興施策の公表等)

第14条 県は、前条の基本方針を踏まえ、毎年、県の講ずる中小企業の振興に関する施策を取りまとめ、適切な手段を用いて県民に公表するものとする。

2 知事は、前項により取りまとめた施策の実施状況等について、毎年、速やかに県議会に報告するとともに、適切な手段を用いて県民に公表するものとする。

(財政上の措置)

第15条 県は、中小企業の振興に関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

この条例は、公布の日から施行する。

和歌山県中小企業振興条例

平成25年12月26日 条例第75号

(平成25年12月26日施行)