○和歌山の森林及び樹木を守り育てる条例

平成23年12月22日

条例第58号

和歌山の森林及び樹木を守り育てる条例をここに公布する。

和歌山の森林及び樹木を守り育てる条例

目次

前文

第1章 総則(第1条―第7条)

第2章 基本的施策(第8条―第16条)

第3章 わかやま森林と樹木の日及び顕彰(第17条・第18条)

附則

和歌山は、紺ぺきの黒潮が洗う紀伊半島に位置し、穏やかな気候と豊かな水の恵みが育んだ美しい紀伊の山々があり、日本の山々に樹木の種をき、青山となした神が鎮まるところと神話に記された「木の国」である。

木の国和歌山の森林は、木材に代表される様々な林産物を供給するだけでなく、清らかな水を蓄え、災害から県民の暮らしを守り、多様な生態系を支える、まさに恵みの森である。

この恵みの森は、万葉の時代から歌に詠まれてきた美しい自然及び世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道さんけいみち」に代表される景観を形成し、先人が守り、受け継いできた貴重な財産である。

また、私たちの身近にある樹木は、やすらぎ、癒し、良好な景観の形成など様々な恩恵を私たちにもたらしてくれている。

平成23年5月22日、世界中の森林の保全に関する認識を高めることを目的に定められた国際森林年に当たる重要な年に、和歌山県で第62回全国植樹祭が開催された。

第62回全国植樹祭では、1万人を超える多くの子どもたちが竹ポットによる苗木の育成に取り組み、樹木を慈しむ心を育むとともに、全国に向けて、森林及び樹木の大切さを広く発信した。

私たちは、森林及び樹木がもたらす様々な恩恵を再認識し、県民総参加で木の国和歌山の森林及び樹木を守り、又は育てていくことを決意し、この条例を制定する。

第1章 総則

(目的)

第1条 この条例は、和歌山県(以下「県」という。)の森林及び樹木を守り、又は育てることに関し、基本理念を定め、県の責務並びに森林所有者及び県民等の役割を明らかにするとともに、県の基本的な施策に関し必要な事項を定めることにより、当該施策を総合的に推進し、もって県民の豊かな生活環境の実現に寄与することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

(1) 森林所有者 県内に所在する森林の所有者(国及び市町村を除く。)をいう。

(2) 県民等 県民並びに県内に所在する事業者及び関係機関をいう。

(3) 林業事業者 県内に所在する森林から木材を生産する事業を行う者をいう。

(4) 紀州材 県内に所在する森林から生産された木材をいう。

(5) 郷土樹種 県内に自生する樹木の種類をいう。

(基本理念)

第3条 森林は、県土の保全、水源のかん養、生物多様性の保全、地球温暖化の防止、保健休養、林産物の供給などの多面的な機能を有し、優れた風景及び貴重な文化遺産を構成するとともに、林業及び木材産業の振興に大きく寄与し、樹木は、県民生活に癒しや潤いを与え、生活環境の向上に寄与してきたものであり、今後も、森林及び樹木については、県、市町村、森林所有者及び県民等の協働により、持続的に守り、又は育てられなければならない。

(県の責務)

第4条 県は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、森林及び樹木を守り、又は育てるための施策を総合的に推進するものとする。

2 県は、前項の施策の推進に当たっては、国及び関係機関との連携を図るとともに、森林所有者及び県民等の意見を十分に反映するよう努めるものとする。

3 県は、第1項の施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

(市町村との連携協力)

第5条 県は、市町村が森林及び樹木を守り、又は育てるための施策を推進することができるよう、連携し、及び協力するものとする。

(森林所有者の役割)

第6条 森林所有者は、基本理念にのっとり、その所有する森林を適正に管理するとともに、森林及び樹木を守り、又は育てるための施策に協力するよう努めるものとする。

(県民等の役割)

第7条 県民等は、森林及び樹木に関する理解を深めるよう努めるものとする。

2 県民等は、森林保全の活動に参加するとともに、その所有し、又は管理する土地に植栽している樹木の適切な育成及び植樹に努めるものとする。

3 県民等は、積極的に紀州材の利用に努めるものとする。

4 森林組合は、基本理念にのっとり、地域の特性に応じた一体的かつ計画的な森林施業を実施するよう努めるものとする。

5 林業事業者は、その事業活動を行うに当たっては、森林の多面的な機能が維持されるよう努めるものとする。

第2章 基本的施策

(森林の保護及び保全)

第8条 県は、法令又は条例により保護及び保全が義務付けられている森林又はこれらに類する森林について、県民の理解を深めるとともに、森林保全の制度の適切な運用を行い、必要に応じて、森林の買上げその他必要な措置を講ずるものとする。

(森林整備の推進)

第9条 県は、市町村又は森林所有者に対し、森林の整備を推進するため、自然災害等により荒廃した森林並びに放置された里山及び人工林の整備に係る支援並びに造林、間伐、樹種転換その他の森林施業に関する助言その他必要な措置を講ずるものとする。

(多様な主体による森林保全の推進)

第10条 県は、事業者等による県内の森林環境の保全への取組及び県民等による森林保全の活動への参加が積極的に展開されるよう、情報の提供、助言その他必要な措置を講ずるものとする。

(効率的な森林施業の実施)

第11条 県は、森林施業が効率的に実施されるよう、森林施業の集約化、林業機械の導入及び林内路網の整備に係る支援その他必要な措置を講ずるものとする。

(紀州材の利用拡大)

第12条 県は、紀州材の利用の拡大を図るため、紀州材に関する情報の提供、公共事業における紀州材の活用、紀州材を使用する住宅の建設の促進、紀州材の販路の拡大その他必要な措置を講ずるものとする。

(人材の育成及び確保)

第13条 県は、林業又は木材産業に関わる人材の育成及び確保を図るため、研修の実施、情報の提供、助言その他必要な措置を講ずるものとする。

(樹木の育成及び植樹)

第14条 県は、その設置し、又は管理する施設について、植栽している樹木の適切な育成及び植樹に努めるものとする。

2 県は、国及び市町村に対し、その設置し、又は管理する施設について、植栽している樹木の適切な育成及び植樹に努めるよう要請するものとする。

3 県は、県民等が行う第7条第2項の樹木の育成及び植樹について、必要な支援を行うものとする。

(普及啓発)

第15条 県は、森林及び樹木に関する県民等の理解を深めるために必要な広報その他の啓発に努めるものとする。

2 県は、子どもの森林及び樹木を尊重する人間性をかん養するため、森林の多面的な機能に関する理解と関心を深める森林環境教育の充実及び当該森林環境教育を支える人材の育成その他必要な措置を講ずるものとする。

(郷土樹種の活用)

第16条 県は、森林及び樹木を守り、又は育てるための施策の実施に当たって、環境への適応性や生態系の保全を考慮し、郷土樹種による植樹を推進するため、郷土樹種の苗木の使用に関する指針を別に定めるなど必要な措置を講ずるものとする。

第3章 わかやま森林と樹木の日及び顕彰

(わかやま森林と樹木の日)

第17条 森林及び樹木を守り、又は育てることに関する県民の理解をさらに深めるため、わかやま森林と樹木の日を設ける。

2 わかやま森林と樹木の日は、5月22日とする。

3 県は、わかやま森林と樹木の日には、市町村、事業者及び関係機関と連携して、その趣旨にふさわしい事業を実施するように努めるものとする。

(顕彰)

第18条 県は、森林及び樹木を守り、又は育てる活動について、特に顕著な功績があると認められる者を顕彰するものとする。

この条例は、平成24年4月1日から施行する。

和歌山の森林及び樹木を守り育てる条例

平成23年12月22日 条例第58号

(平成24年4月1日施行)