○和歌山県観光立県推進条例

平成21年12月24日

条例第93号

和歌山県観光立県推進条例をここに公布する。

和歌山県観光立県推進条例

日本列島本州の最南端に位置する私たちの郷土和歌山県は、陽光あふれる温暖な気候、青い海、緑豊かな山々、清らかな川などの豊かな自然や、神道しんとう、仏教、修験道しゅげんどうなどの多様な信仰によってはぐくまれた世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道さんけいみち」に代表される貴重な歴史や文化、さらには、懐かしさを覚える農山漁村の風景や四季折々の多彩な食材、心をいやす温泉にも恵まれている。

万葉の時代から数多くの人々が憧れ、安らぎを求め、この地を訪れ、私たちの先人は、人々を温かくお迎えしてきた。

先人が守り、受け継いできた魅力の数々は、現在の私たちだけのものではなく、世界の人々や次の世代の人々のかけがえのない資産でもある。末永くこの魅力を守り、さらに磨き、魅力あふれる地域をつくるとともに、国内はもとより東アジア、欧米等の海外から訪れる人々を温かく迎え、心と心の交流を通じて、いやしや楽しみ、感動を提供していくことが、この素晴らしい郷土に住む私たちの重要な役割であると同時に、私たちの誇りである。

観光は、単に観光産業だけではなく、農業、林業、漁業、製造業、サービス業等の幅広い分野にわたるすそ野の広い産業であり、その振興は、交流人口を拡大させ、地域経済の活性化や雇用の増大をもたらすものである。

少子高齢化が進む一方で、関西国際空港に近接していることなどにより国内外との交流の進展が見込まれる本県においては、観光を本県経済のリーディング産業となるよう育成し、観光立県を実現させることが重要な課題である。

こうした観光立県を目指した取組が、地域の自主、自立の精神を促し、観光客と地域の人々との交流の活発化と相まって、魅力ある活力に満ちた地域社会の実現に寄与するものである。

県民一人一人が、観光立県の意義を理解し、自然、歴史、文化等の郷土の魅力を見つめ直し、観光立県の重要な担い手としての認識をはぐくむことが重要である。

私たちは、県、市町村、県民、観光事業者及び観光関係団体が一体となって、県民総参加で観光立県の意義に対する理解を深め、その実現に取り組むことを決意し、この条例を制定する。

(目的)

第1条 この条例は、観光立県の実現のための基本理念を定め、県の責務並びに県民、観光事業者及び観光関係団体の役割を明らかにするとともに、観光振興に関する施策の基本的な事項を定めることにより、県民総参加による観光振興の取組を推進し、もって魅力ある活力に満ちた地域社会の実現、本県経済の持続的な発展及び県民生活の向上に寄与することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(1) 県民総参加 県、市町村、県民、観光事業者及び観光関係団体が、それぞれ主体的に、かつ、相互に連携協力しながら参加することをいう。

(2) 観光事業者 旅行業者、宿泊業者、飲食業者、公共交通事業者その他の観光に関する事業を営む者をいう。

(3) 観光関係団体 観光事業者で組織される団体並びに観光振興を目的として観光事業者及び行政機関で組織される団体をいう。

(基本理念)

第3条 観光立県は、次に掲げる事項を基本として、県民総参加で観光振興に取り組むことにより、その実現が図られなければならない。

(1) 観光が農業、林業、漁業、製造業、サービス業等に幅広く波及効果をもたらす総合産業であって、本県経済において重要な役割を担うことを認識すること。

(2) 地域における観光振興が、交流人口の拡大、地域経済の活性化及び雇用の増大をもたらし、魅力ある活力に満ちた地域社会の実現に寄与するものであることを認識すること。

(3) 自然、歴史、文化、景観、食、温泉その他の地域の魅力を再発見し、その情報を共有するとともに、その魅力を大切にしながら、創意工夫して活用し、観光客一人一人の視点に立った魅力ある観光を提供すること。

(4) 郷土の魅力を再認識することによって郷土を愛する心をはぐくみ、自信と誇りを持って郷土の魅力を国内外に発信すること。

(5) 観光客一人一人が、安全に、安心して、快適に観光が楽しめるようおもてなしをすること。

(6) 地域の生活環境、自然環境及び景観を維持しつつ、これらとの調和に配慮すること。

(県の責務)

第4条 県は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、第10条に定める基本方針に基づき、観光振興に関する施策を総合的に策定し、実施するものとする。

2 県は、県民総参加による観光振興の取組を進められるよう総合調整及び必要な支援を行うものとする。

(市町村との連携協力)

第5条 県は、市町村が基本理念にのっとり、その地域の特性を生かした観光振興に関する施策を策定し、実施することができるよう市町村と連携協力するものとする。

(近隣府県等との連携協力)

第6条 県は、観光振興に関する広域的な施策を効果的に実施するため、近隣府県と連携協力するものとする。

2 県は、観光振興に関する施策の効果的な実施を図るため、大学等と連携協力するものとする。

(県民の役割)

第7条 県民は、その一人一人が、基本理念にのっとり、観光立県の意義に対する理解を深め、地域における観光振興の取組に参画するよう努めるものとする。

2 県民は、その一人一人が、おもてなしの心を持って、観光客を温かく迎えるよう努めるものとする。

(観光事業者の役割)

第8条 観光事業者は、基本理念にのっとり、観光客に対し、心のこもった誠実なサービスの提供に努めるとともに、安全に、安心して、快適に観光ができる環境の提供に努めるものとする。

2 観光事業者は、県及び市町村が実施する観光振興に関する施策に協力するよう努めるものとする。

(観光関係団体の役割)

第9条 観光関係団体は、基本理念にのっとり、観光に関する情報の発信、観光客の誘致、人材の育成及び観光客の受入れの体制の整備に取り組むよう努めるものとする。

2 観光関係団体は、県及び市町村が実施する観光振興に関する施策に協力するよう努めるものとする。

(施策の基本方針)

第10条 県の観光振興に関する施策の基本方針は、次に掲げるとおりとする。

(1) 県民総参加による観光振興に取り組む意識を高めるため、広報及び啓発を積極的に推進すること。

(2) 郷土の自然、歴史及び文化並びに観光に関する学習及び体験の機会の提供を促進すること。

(3) 観光に関する施設の整備、道路の整備、交通機能の充実その他の観光の基盤の整備を促進すること。

(4) 自然、歴史、文化、景観、食、温泉その他の観光資源の保全及び活用を促進すること。

(5) 自然、農業、林業、漁業等を活用した体験型観光その他の多様な形態の観光旅行の創出及び普及を促進すること。

(6) 観光地の認知度の向上を図るため、観光事業者、テレビ、ラジオ、インターネット等を通じた戦略的な情報発信を促進すること。

(7) 各種大会の誘致、広域的な連携による取組その他の多様な誘客活動により、国内はもとより東アジア、欧米等の海外からの観光客の誘致を促進すること。

(8) おもてなしの向上を図るための研修、大学等と連携した人材の育成、伝統文化の担い手の育成その他の観光振興に寄与する人材の育成に関する取組を促進すること。

(9) 高齢者、障害者、外国人等をはじめすべての観光客が安全に、安心して、快適に観光ができる環境の整備を促進すること。

(観光振興実施行動計画)

第11条 知事は、毎年度、観光振興に関する施策を総合的かつ計画的に実施するための観光振興実施行動計画を定め、議会に報告するとともに、これを公表しなければならない。

2 知事は、観光振興実施行動計画を定めようとするときは、市町村、県民、観光事業者及び観光関係団体の意見を反映させるものとする。

3 知事は、毎年度、観光振興実施行動計画の実施状況を議会に報告するとともに、これを公表しなければならない。

(観光週間)

第12条 県は、県民総参加による観光振興に取り組む意識を高めるため、観光週間を設けるものとする。

(調査及び分析)

第13条 知事は、観光振興に関する施策を効果的に推進するため、統計調査その他の必要な調査及びその分析を行うものとする。

(施策の連携)

第14条 知事は、観光振興に関する施策の実施に当たっては、観光振興に関連する法令、他の条例等に基づく施策との連携を図るものとする。

(推進体制の整備等)

第15条 県は、観光振興に関する施策を推進するための体制を整備するとともに、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

この条例は、平成22年4月1日から施行する。

和歌山県観光立県推進条例

平成21年12月24日 条例第93号

(平成22年4月1日施行)