○和歌山県文化芸術振興条例
平成21年3月26日
条例第21号
和歌山県文化芸術振興条例をここに公布する。
和歌山県文化芸術振興条例
目次
前文
第1章 総則(第1条―第3条)
第2章 文化芸術振興基本計画(第4条)
第3章 文化芸術の振興に関する基本的施策(第5条―第18条)
附則
文化芸術は、人間が創造的な営みの中で自らの可能性を求めようとする根源的な欲求であり、生きる証であり、生きる喜びでもある。また、文化芸術は、人々の心のつながりをはぐくみ、多様な価値観が共生する社会をかたちづくり、そのよりどころとなるものである。
こうした文化芸術の持つ意義は、経済的、物質的な豊かさを享受しながらも、多くの人々が精神的な充足と心豊かな暮らしを求める今、さらにその重要性を増している。
私たちが暮らす和歌山県は、全国有数の文化財保有県であり、万葉の時代から歌に詠まれてきた美しい自然と、世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」に代表される高い精神性を有する悠久の歴史に恵まれている。そうした環境の下で、これまでにも多くの県民の力によって多彩な文化芸術が創造され、はぐくまれてきた。これらの文化芸術はもちろんのこと、それを支え、はぐくんできた「市民文化」そのものが、私たち県民共通の誇りとなっている。
また、21世紀に入り、「癒し」と「再生」を実感することのできるその精神性と歴史的な価値は、国際的にも高く評価され、注目を集めている。
今、私たちは、この個性豊かで魅力ある文化芸術の土壌を、未来へと継承し、発展させ、すべての県民の力を結集した地域の文化力を高めていくことにより、誇りと愛着の持てる元気な郷土をつくりあげていかなければならないと考える。
ここに、私たちは、すべての県民が自主的かつ主体的に、文化芸術の創造、鑑賞・評価、支援活動、伝統文化の保存・継承に等しく参加し、文化芸術が暮らしの中に息づく心豊かな社会の実現を目指すことを決意し、この条例を制定する。
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、文化芸術の振興に関し、基本理念を定め、県の責務を明らかにするとともに、文化芸術の振興に関する施策の基本となる事項を定めることにより、当該施策を総合的かつ計画的に推進し、もって心豊かな県民生活及び活力ある地域社会の実現に寄与することを目的とする。
(基本理念)
第2条 文化芸術の振興に当たっては、文化芸術を創造し、享受することが人々の生まれながらの権利であることにかんがみ、すべての県民が等しく文化芸術の創造、鑑賞、継承、支援その他の活動に参加することができるような環境の整備が図られなければならない。
2 文化芸術の振興に当たっては、県民一人一人が文化芸術の担い手であるという認識の下、その自主性及び創造性が尊重されなければならない。
3 文化芸術の振興に当たっては、その多様性が尊重されるとともに、地域における多様な価値観の共生が図られるよう配慮されなければならない。
4 文化芸術の振興に当たっては、文化芸術が地域間における相互理解を深める上で重要な役割を果たすことにかんがみ、文化情報の発信及び文化交流が積極的に促進されなければならない。
5 文化芸術の振興に当たっては、風土及び歴史に培われてきた地域の伝統的な文化芸術を県民が誇りや独自性を感じることができる共通の財産として将来にわたり引き継がれるよう配慮されなければならない。
(県の責務)
第3条 県は、前条に定める基本理念にのっとり、文化芸術の振興施策を総合的かつ計画的に推進するものとする。
2 前項の規定による文化芸術の振興施策の推進に当たっては、次に掲げる事項について十分に配慮しなければならない。
(1) 県民及び市町村の主体的な活動への支援並びに県民の相互連携の促進に努めること。
(2) 県民及び市町村の主体性及び創造性を損なうことのないように努めること。
(3) 広く県民の意見が反映され、高い公共性及び透明性が確保されるように努めること。
(4) 県民、国及び市町村との連携により、効率的かつ効果的な施策の推進に努めること。
3 県は、文化芸術の振興のために必要な施策を推進するための体制の整備に努めるとともに、財政上の措置を講ずるように努めるものとする。
第2章 文化芸術振興基本計画
(文化芸術の基本計画)
第4条 知事は、文化芸術の振興のために必要な施策の総合的かつ効果的な推進を図るため、文化芸術の振興に関する基本的な計画(以下この条において「基本計画」という。)を定めるものとする。
2 基本計画は、文化芸術の振興に関して必要な事項を定めるものとする。
3 知事は、基本計画を定めるに当たっては、県民の意見を反映させるために必要な措置を講じなければならない。
4 知事は、基本計画を定めたときは、これを公表しなければならない。
5 前2項の規定は、基本計画の変更について準用する。
第3章 文化芸術の振興に関する基本的施策
(芸術の振興)
第5条 県は、文学、音楽、美術、写真、演劇、舞踊その他の芸術(次条に規定するメディア芸術を除く。)の振興を図るため、これらの公演、展示等への支援その他の必要な施策を講ずるものとする。
(メディア芸術の振興)
第6条 県は、映画、漫画、アニメーション及びコンピュータその他の電子機器等を利用した芸術(以下この条において「メディア芸術」という。)の振興を図るため、メディア芸術の上映等への支援その他の必要な施策を講ずるものとする。
(芸能の振興)
第8条 県は、講談、落語、浪曲、漫談、漫才、歌唱その他の芸能(伝統芸能を除く。)の振興を図るため、これらの公演等への支援その他の必要な施策を講ずるものとする。
(生活文化及び国民娯楽の普及)
第9条 県は、生活文化(茶道、華道、書道、香道その他の生活に係る文化をいう。)及び国民娯楽(囲碁、将棋その他の国民的娯楽をいう。)の普及を図るため、これらの普及活動等への支援その他の必要な施策を講ずるものとする。
(文化財等の保存及び活用)
第10条 県は、有形及び無形の文化財並びにその保存技術(以下この条において「文化財等」という。)の保存及び活用を図るため、文化財等に関し、修復、防災対策、公開等の支援その他の必要な施策を講ずるものとする。
2 県は、県民が誇りや愛着を感じ、かつ、地域文化の母体となる歴史的な景観又は自然的な景観の保全及び活用を図るため、必要な施策を講ずるものとする。
(市民文化の振興)
第11条 県は、市民文化の振興により、県民がはぐくむ地域の文化力の向上を図るため、公演、展示等への県民の参加及びボランティア活動、寄附等の助成活動その他の文化芸術支援活動への県民の参加の促進に必要な施策を講ずるものとする。
2 県は、市民文化の振興により、文化芸術が息づく魅力的な地域づくりを推進するため、地域づくり活動の支援その他の必要な施策を国及び市町村と連携して講ずるものとする。
(文化情報の収集及び発信)
第12条 県は、地域に根ざした特色ある文化の形成のため、その基盤となる本県の多様な文化資源の把握、保存及び活用に必要な施策を講ずるものとする。
2 県は、県民に創造、鑑賞、支援等の活動に参加する機会を提供するため、文化芸術に関する情報の収集及び発信に必要な施策を講ずるものとする。
(文化交流活動の促進)
第13条 県は、本県の文化芸術の活性化及び向上のため、県民の他の地域との文化交流活動の推進に必要な施策を講ずるものとする。
2 県は、地域の活性化を図るため、文化交流活動と観光産業その他の産業との連携に努めるものとする。
(参加機会の提供)
第14条 県は、広く県民が多彩な文化芸術を鑑賞し、並びに文化芸術の創作活動及び支援活動に参加する機会を得られるように必要な施策を講ずるものとする。
2 県は、高齢者、障害者等の文化芸術活動が活発に行われるように環境の整備その他の必要な施策を講ずるものとする。
3 県は、広く県民が文化芸術活動に参加できる機会を提供するため、市町村及び民間団体等と連携し、広域的な視点から文化施設の効率的かつ効果的な整備及び活用に努めるものとする。
(文化芸術活動の担い手の育成)
第15条 県は、文化芸術の創造、鑑賞・評価及び支援活動の担い手を育成するため、必要な施策を講ずるものとする。
(青少年の文化芸術活動の充実)
第16条 県は、青少年が行う文化芸術活動の充実を図るため、青少年を対象とした文化芸術の公演及び展示への支援、青少年による文化芸術活動への支援その他の必要な施策を講ずるものとする。
2 県は、学校教育及び社会教育における青少年の文化芸術活動の充実を図るため、必要な施策を講ずるものとする。
(高齢者の文化芸術活動の充実)
第17条 県は、高齢者が行う文化芸術活動の充実を図るとともに、高齢者が有する知識及び技能を活用した文化芸術の振興を図るため、必要な施策を講ずるものとする。
(顕彰)
第18条 県は、文化芸術活動で顕著な成果を収めた者及び文化芸術の振興に寄与した者を広く顕彰するものとする。
附則
この条例は、平成21年4月1日から施行する。