○和歌山県世界遺産条例

平成17年3月25日

条例第22号

和歌山県世界遺産条例をここに公布する。

和歌山県世界遺産条例

日本列島本州の最南端に位置する和歌山県は、すでに「記紀」の時代に「木の国」と表されているように、その大部分が深い森林に覆われた紀伊山地と呼ばれる山岳地帯で、しかも黒潮の寄る海洋に接しており、変化に富んだ気候、多種多様な動植物など、豊かですばらしい自然に恵まれています。

また、奈良や京都の南に位置し、1,200年以上にわたり都とも密接な関係を有してきた地域でした。

このような自然環境と、歴史的地理的な条件を背景に、この地域では神道、仏教、修験道などの多様な信仰が育まれ、日本人の精神文化に大きな影響を及ぼしてきました。

そして、神道と神仏習合の霊場「熊野三山」、真言密教の霊場「高野山」、そこに至る「熊野参詣道」や「高野山町石道」といった参詣道は、信仰を育んだ神秘的な自然と人々の営みが一体となった文化的景観とともに、世界に比類のない文化遺産であるという評価を受け、「紀伊山地の霊場と参詣道」としてユネスコ(国際連合教育科学文化機関)の世界遺産に登録されています。

私たちは、「紀伊山地の霊場と参詣道」の周辺環境も含めた資産を人類のかけがえのない宝として保存し、その価値を損なうことなく適切に活用するとともに、その意義を全国に、さらには世界へ向けて発信することが、広く有形及び無形の文化や自然環境の重要性等を訴えていくことになるということを、深く認識する必要があります。

このような認識のもとに、私たちは、世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約の精神に基づき、人類共有の財産「紀伊山地の霊場と参詣道」を将来の世代へ確実に引き継いでいくことを決意して、この条例を制定します。

(目的)

第1条 この条例は、世界遺産の保存及び適切な活用について、基本理念を定め、並びに県及び県民等が担う役割を明らかにするとともに、県の基本的施策に関して必要な事項を定めることによって、世界遺産の価値を将来の世代へ確実に引き継ぎ、もって世界の人々の心の豊かさの向上に寄与することを目的とします。

(定義)

第2条 この条例で、「世界遺産」とは、世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約第11条に規定する世界遺産一覧表に記載されている紀伊山地の霊場と参詣道のうち、県内に所在するものをいいます。

2 この条例で、「県民等」とは、県民、事業者及び県内への来訪者をいいます。

3 この条例で、「民間団体等」とは、県民、事業者又はこれらの者の組織する民間の団体をいいます。

(基本理念)

第3条 世界遺産は、人類のかけがえのない多様な価値を有する財産として守られ、適切に活用されつつ、将来の世代に良好な状態で引き継がれていかなければなりません。

(和歌山県世界遺産の日及び和歌山県世界遺産週間)

第4条 県は、県民等が世界遺産についての理解と関心を深めるため、和歌山県世界遺産の日及び和歌山県世界遺産週間を設けます。

2 和歌山県世界遺産の日は、7月7日とします。

3 和歌山県世界遺産週間は、7月1日から7月7日までとします。

(県の役割)

第5条 県は、第3条に規定する理念(以下「基本理念」といいます。)を十分に踏まえ、世界遺産を保存し、及び適切に活用するための基本的な計画を定めます。

2 県は、世界遺産の所在する地域の状況を十分に把握しながら、前項の計画に基づき適切な施策を積極的に実施します。

3 前項の施策を実施する場合において、県は、国、他の地方公共団体その他関係機関と密接な連携及び調整を図ります。

(県民等の役割)

第6条 県民及び事業者は、基本理念を十分に踏まえ、それぞれ自らの世界遺産という思いを持ちながら、世界遺産を率先して保存し、及び適切に活用するように努めるものとします。

2 県民等は、世界遺産を訪れる場合は、ルールを守るとともに、世界遺産の魅力と価値を多くの人々に伝えるように努めるものとします。

(県民等の意見の反映)

第7条 県は、世界遺産の保存及び適切な活用について、基本的な計画を定め、及び施策を実施する場合において、県民等及び市町村の意見が適切に反映されるように努めます。

(自発的な活動の推進)

第8条 県は、民間団体等が基本理念を十分に踏まえて自発的に行う活動に対して、必要な施策を実施します。

(県の基本的施策)

第9条 県は、基本理念を十分に踏まえ、県民等の理解のもとに、世界遺産に係る保存、調査研究、整備、活用その他の活動について、適切に必要な施策を実施します。

2 県は、世界遺産についての理解を深めるために必要な広報その他の啓発活動を行います。

(推進体制)

第10条 県は、世界遺産の保存及び適切な活用に係る施策を推進するため、必要な体制の整備を図り、次の業務を行うものとします。

(1) 世界遺産の保存管理計画等に関すること。

(2) 来訪者の受入れ態勢に関すること。

(3) 世界遺産の保存及び適切な活用に係る施策を実施するに当たっての民間団体等との調整に関すること。

(4) 三重県及び奈良県との連携に関すること。

(5) 世界遺産の所在する地域とその他の地域との連携に関すること。

(6) 世界遺産に係る情報発信、学術研究並びに民間団体等の活動及び交流に関すること。

(7) 県民等からの意見の広聴に関すること。

(8) その他世界遺産の保存及び適切な活用に関して必要なこと。

この条例は、平成17年7月1日から施行します。

和歌山県世界遺産条例

平成17年3月25日 条例第22号

(平成17年7月1日施行)