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総務部総務管理局総務課

和歌山県の新しい情報公開制度のあり方について

― 提 言 ―


平成12年12月

和歌山県情報公開推進懇話会

提言にあたって

 和歌山県情報公開推進懇話会は、平成12年6月9日、知事から新しい情報公開制度のあり方について検討を依頼され、鋭意審議を重ねてまいりました。

 現行条例は平成5年10月に施行され、これまで公文書開示制度及び情報提供制度を通じ、県民の県政に対する理解と信頼を深め、県政への参加を促進し、開かれた県政の推進に寄与してきたところであります。

 しかしながら、近年の情報化社会の急激な進展には、目を瞠るものがあり、また、国においても「行政機関の 保有する情報の公開に関する法律」が制定され、一方、地方分権が本格的に推進される中で、本県においても情報公開制度の果たすべき役割について、改めて強 い期待を込めた関心が寄せられています。

 当懇話会は、こうした状況を踏まえ、検討に際しては、現行条例の「原則公開」の徹底と「個人のプライバ シーの保護」について最大限の配慮を行うことを基本とし、県民の知る権利や行政の説明責務について検討を加え、国の情報公開法との整合性を図り、他の都道 府県の情報公開条例をも考慮しつつ、請求権者、実施機関、対象公文書の範囲、非開示情報など条例の全般にわたって見直しを行いました。

 各委員は、6回の全体会議、5回の小委員会を通じ、それぞれの立場から積極的に意見を出し合い、限られた 時間内の審議でありましたが、懇話会として和歌山県の21世紀を開くにふさわしい情報公開制度の確立に向けた提言をとりまとめることができ、ここに提出す る運びとなりました。

 今後、知事がこの提言を踏まえ、できる限り速やかに条例改正など必要な措置を講じられ、情報公開の積極的な推進に取り組まれ、より一層県民に開かれた県政の運営に努められることを期待いたします。

 最後に、当懇話会において終始熱心にご審議いただいた委員各位に、あらためて深く謝意を表する次第であります。

 

 

  平成12年12月26日

 

 

                               和歌山県情報公開推進懇話会

                                会 長  月 山   桂

 

 

 

目   次

第1 提言にあたっての基本的な考え方 

  1. 現行条例の見直しの背景
    (1) 条例制定後の社会情勢の変化
    (2) 地方分権の推進に伴う情報公開の一層の推進
    (3) 法律との調整


  2. 現行条例の見直しにあたっての基本的な考え方
    (1) 「知る権利」と「説明責務」
    (2) 基本原則の維持
    (3) 公文書開示の範囲の拡大
    (4) 公文書開示請求権者または第三者の権利保障の明文化
    (5) 情報提供施策の充実・推進 

第2 新しい情報公開制度のあり方についての提言

  1. 条例の名称
  2. 条例制定の趣旨
  3. 条例の目的
  4. 実施機関の範囲
    (1) 公安委員会及び警察本部長
    (2) 議会
    (3) 出資法人等
  5. 対象公文書の範囲
  6. 請求権者の範囲
  7. 非開示情報
    (1) 原則公開の理念
    (2) 非開示情報の整備
    (3) 個別非開示条項 
      ① 法令秘情報
      ② 個人情報
      ③ 事業活動情報
      ④ 犯罪の予防、捜査等情報
      ⑤ 国等関係情報
      ⑥ 合議制機関等関係情報
      ⑦ 意思形成過程情報
      ⑧ 行政運営情報
    (4) 非開示条項の整理統合
    (5) 公文書の部分開示
    (6) 公益上の理由による裁量的開示
    (7) 存否応答拒否情報
    (8) 公文書不存在
  8. 開示請求・決定の手続
    (1) 請求書の補正原則
    (2) 大量請求
    (3) 利用者の責務
    (4) 事案の移送
    (5) 第三者保護
    (6) 公文書の開示方法
    (7) 費用負担
    (8) 任意開示
  9. 審査会
  10. 公文書の管理
    (1) 管理の徹底
    (2) 請求者への情報提供

 

第1 提言にあたっての基本的な考え方

 

1 現行条例の見直しの背景

 

 現行条例は、県民の県政に対する理解と信頼を深め、県政への参加を促進し、開かれた県政を一層促進する目 的をもって「和歌山県公文書の開示に関する条例」として平成5年3月30日に公布され、同年10月1日に施行されたものである。本県の公文書開示制度は、 他の都道府県に比較して、施行の時期は遅れてはいたが、情報公開に関する県民の意識の向上と関係者の制度推進の努力の結果、条例制定当初年間200件あま りにすぎなかった開示請求が平成9年度には、大量一括請求等によって、25,000件に達し、平成11年度には、依然として8,600件を超える請求が行 われている。また、請求件数のみでなく、請求人数も増加し、公文書開示制度が着実に県民の間に定着し、制度としての目的を果たしつつあることが窺われる。

 しかしながら、21世紀の幕開けにあたり、下記のような時代の推移に伴う諸事情を考えれば、情報公開の一層の充実、発展を期するために、この際、本条例を見直す必要がある。

 

(1) 条例制定後の社会情勢の変化

 条例制定後、前述のとおり公文書開示制度に対する理解と関心が深まり、さらには、県における全庁的なOA化の進展に伴い、情報の記録媒体としてフロッピーディスク、磁気テープ、光ディスクなどの電子情報をも情報公開の媒体としてとらえなければならない時代に入った。

 同時に、各都道府県の公文書開示審査会の答申や裁判所の判例の積み重ね等により非開示条項のあり方等制度の運用について再検討して整理する必要性が全国的に高まった。

 

(2) 地方分権の推進に伴う情報公開の一層の推進

 地方分権の推進によって機関委任事務が廃止され自治事務が増加することにより、地方公共団体の自己決定権 が拡充されることとなった。このような地方分権に伴う行政体制の整備という観点から、県政の公正の確保と透明性の向上を図り、県民の県政への参加を一層促 進する必要があり、そのためには県政に関する情報公開を一層進めることが必要となった。

 

(3) 法律との調整

 国は、平成11年法律第42号をもって「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」(以下「情報公開 法」という。)を制定した。同法は、その目的条項の中に「国民に説明する責務」という新たな概念を規定するとともに、対象機関や対象情報の範囲を拡め、ま た、非開示条項を整理するなど参考にするべき点が少なくない。そして、地方公共団体は、この法律との整合を図るため条例を見直すことを期待されている。

 

2 現行条例の見直しにあたっての基本的な考え方

 

(1) 「知る権利」と「説明責務」

 県が保有する情報は、本来、県民のものであり、県は県民の信託を受けてこれを保有するのである。したがって、理念としては、県民は自らの情報について本来的に「知る権利」を有するものといわなければならない。

 住民自治の本旨からすれば、行政が信託を受けた住民に対し、県の諸活動を具体的に明らかにするとともに、 県民の必要とする情報を開示し、県民が自らの判断により県政に参加できるよう、「説明責務」を全うすることは、行政側の指導理念でなければならない。そし て、県が成熟した民主主義社会を創造し、地方分権を推進していくためには、県民の協力が不可欠であり、県と県民が情報を共有することが一層必要である。

 このように「知る権利」は、情報公開制度の指導理念を県民の側から見たものであり、「説明責務」は、これ を行政の側から見たものであって、両者は表裏の関係にあるとともに、互いに、補完し合う関係にある。したがって、情報公開制度の理念として、この両者を条 例上併記することが適当である。

 

(2) 基本原則の維持

 現行条例は、地方自治体の健全な発展を目的とし、県の有する情報の公開を原則としつつ、個人のプライバ シーを最大限に保護しなければならない立場から、「原則公開」と「個人のプライバシー情報の最大限の保護」を制度の基本原則とするものであった。この基本 原則は、今後とも堅持されなければならない。

 

(3) 公文書開示の範囲の拡大

 社会経済活動が広域化し、情報媒体の利用が多岐にわたり、情報の流通が緊密化するに従い、県政に対する理 解と信頼を深めるには行政を透明化し、開かれた県政を実現する必要性が従前にも増して大きくなった。この要望に応えるためには、県政にかかわる情報を開示 する実施機関の範囲を拡げるとともに、開示の目的である情報の媒体及び内容を拡張し、公文書の開示請求権者の範囲についても県境を取り払った社会の一体化 や国際化の現状を考慮しなければならない。

 

(4) 公文書開示請求権者または第三者の権利保障の明文化

 公文書開示制度の推進にあたっては、開示請求、請求に対する決定、開示の実施、さらには、不服申立てに対 する審査等の各段階において、請求権者の権利の実現が正当に確保され、第三者の権利利益が不当に侵害されることのないよう明確に保障されなければならな い。実施機関は、現行条例のもとにおいても、運用上できる限りその点に配慮してきたが、条例の見直しにあたっては、行政手続法、情報公開法等の規定に倣っ て、これらを整備拡充するとともに、条例上明記して制度化する必要がある。

 

(5) 情報提供施策の充実・推進

 請求に基づく公文書開示制度は、広く情報公開に連なるものとはいえ、実質的には開示請求を行なった一部の 県民に対し開示するにすぎない。しかしながら、情報公開の目的を達するためには、開示請求がなくても、県の重要施策に関する情報や県民の必要とする情報 は、積極的に、適時、適切にかつ、分かりやすい方法で提供すべきであり、さらに、21世紀の高度情報化社会のニーズに即応できる情報公開に関する施策を速 やかに検討し、充実、推進する必要がある。

 

第2 新しい情報公開制度のあり方についての提言

 

1 条例の名称

「和歌山県情報公開条例」に変更することが適当である。

 【説明】

 現行条例は、他の都道府県と同様に「公文書開示制度」を主として規定しているため、その名称を「和歌山県公文書の開示に関する条例」としていた。

 しかし、公文書開示制度は、情報公開制度の一分野をとらえたものにすぎず、現行条例も、公文書開示制度以外の情報公開の総合的な施策に関し定めている。

 さらに、対象となる情報も、公文書という書面形式のものだけではなく、その媒体を電磁的記録などを含めたものに拡張する必要がある。

 また、一般にはこの種の条例を従前から情報公開条例と呼んでおり、県民にとっても「情報公開条例」とする方が分かりやすく、なじみやすい。

 以上の理由から、条例の名称は、「和歌山県情報公開条例」に変更するのが適当である。

 

2 条例制定の趣旨

条例制定の趣旨は、県民の「知る権利」と県の「説明責務」を情報公開制度の理念としてとらえ、併せて、個人のプライバシーを最大限に保護しつつ、地方自治の本旨を実現するにあることを条例に明記することが適当である。

 【説明】

 県民が、県政に参加するには、県民の「知る権利」が保障されなければならない。情報公開は、県民に対し県 民自らが正当な判断をするに必要な基盤を提供するものであり、情報公開制度は、県民のこのような「知る権利」の実現に奉仕するものにほかならない。県は、 県民の権利利益を保障し、県民とともに県政を発展させるには、県の有する情報を県民に対し説明する責務 を負うのであって、この「説明責務」を果たすこと が、地方自治の健全な発展をもたらすために不可欠である。このような認識のもとに、県が「説明責務」を全うして県民の「知る権利」を保障し、併せて、個人 のプライバシーを最大限に保護しつつ、地方自治の本旨を実現し、その健全な発展に寄与するためにこの条例を制定する。

 条例制定の趣旨として、おおむね、上記のような内容を前文に掲げることが適当である。

 

3 条例の目的

この条例は、情報の公開を求める県民の権利を明らかにし、情報公開に関する基本的な事項を定めることにより、公正で透明な県政の運営を確保し、開かれた県政を一層推進することを目的とすることを示すのが適当である。

 【説明】

 この条例は、公文書の開示を求める県民の権利を明らかにし、公文書の開示に関し必要な事項を定めるととも に、総合的な情報提供の推進に関する施策について、基本的な事項を定めることにより、県政の公正で透明な行政運営を確保し、県民の県政に対する理解と信頼 を深めるとともに、県政への参加を促進し、もって開かれた県政を一層推進することを目的とする。

 条例の目的として、おおむね、上記のような内容を定めることが適当である。

 

4 実施機関の範囲(現行条例第2条第1項)

 

(1) 公安委員会及び警察本部長

公安委員会及び警察本部長を実施機関に加えることが適当である。

 【説明】

 条例の目的は開かれた県政の実現にあり、県民の立場から見た場合、知事部局、行政委員会等の区別はなく、 県として一体的に認識されていることから、本来、公安委員会や警察本部長をも実施機関とすべきであった。しかしながら、現行条例制定の際には、犯罪捜査等 の警察業務の特殊性やその所掌事務について全国的な統一性、一体性の確保などの問題があり、公安委員会や警察本部長を対象機関には含めなかった。

 ところが、最近、情報公開法で国家公安委員会や警察庁が対象機関(実施機関)に加えられ、他の都道府県の 公安委員会や警察本部長も実施機関に加わるのが大勢となり、さらに、法律の規定に倣った非開示条項の整備等により公安委員会や警察本部長を実施機関に加え る環境が整った。したがって、実施機関に公安委員会と警察本部長を加えることが適当である。この場合、公安委員会と警察本部長は、行政組織法上別個の実施 機関とする必要がある。

 なお、施行時期については、警察庁や他の都道府県警察との運用の斉一性を確保するため、法律の施行時期や他の都道府県の条例の施行状況を考慮して別に規則で定める必要がある。

 

(2) 議会

議会については、その自主的な判断により情報公開制度の実施に向けて、必要な検討が行なわれるよう期待する。

 【説明】

 議会の情報についても県民からすれば、執行機関の情報と区別し、情報公開制度の対象外とする積極的な理由 はないと考えられる。すなわち、議会関係の事務に関する情報も県が有する情報であって、県政の公正の確保と透明性の向上を図り、県政への参加を一層促進す るには、情報公開制度を実施することが望まれているといえる。

 しかしながら、議会は住民に選挙された議員により構成され、執行機関とは別の独立性をもった地方公共団体の意思決定機関であることからすれば、知事部局の行政委員会と同列に考えることは適当ではない。

 したがって、議会については、議会自らがその自主的な判断により情報公開制度の実施に向けて、必要な検討が行なわれるよう期待する。

 

(3) 出資法人等

出資法人等は、自ら情報公開に努める責務を負うこと、また、実施機関は、出資法人等が情報公開を行うために必要な指導に努める責務を負うことを条例に規定することが適当である。

 【説明】

 出資法人等については、その性格や県とのかかわりなどが多様であるが、県行政の補完的、代替的機能を果た すものが多く、県民から見た場合、出資法人等に係る情報は、実施機関の情報と異なるところはなく、その果たす役割に応じた情報公開を行うことが県行政の透 明性の向上を図る上で必要であり、県民の要請も強い。

 ただ、出資法人等は、県から独立した法人格をもち、他の法律等に依拠しており、したがって、一概に県条例をもって情報公開及び情報提供すべき実施機関とすることは困難である。

 県は出資しているとはいえ、運営の全容についてまで直接把握することができないため、出資法人等の運営に関する情報は、実際に運営にあたっている出資法人等が主体的に運営状況を明らかにすることが必要である。

 このような点を考え合わせ、出資法人等の自主性や自立性に期待し、出資法人等は、情報公開に努める責務を 負うことを明らかにするとともに、実施機関は、当該出資法人等が情報公開を行うために必要な措置を講じるよう、その指導に努める責務を負うことを条例に規 定することが適当である。

 

5 対象公文書の範囲(現行条例第2条第2項)

開示請求することのできる公文書の範囲を拡張することが適当である。

 【説明】

① 県の情報化が進展し、電磁的記録の利用が拡大してきたため、情報公開による県政の透明性の向上を図るに は、開示すべき情報媒体として電磁的記録を対象に含め、再生機器を用いなければ情報を知覚し得ない録音・録画テープや磁気ディスクなども対象とすべきであ る。ただし、電磁的記録の開示方法については、検討を要するところである(後述8(6))。

② 決裁、供覧という文書処理手続の終了を経ていなくても、実施機関の職員が組織的に用いるものであれば開 示の対象とすべきである。決裁、供覧という文書処理手続が終了し、文書管理規程等により管理されているもののみを対象公文書とすることは、その範囲を明確 にする長所があるが、意思形成過程への住民参加という点では、遅きに失する。のみならず、職員が作成し取得した文書で文書処理手続を要しない文書の中にも 県民の生命、健康、財産その他県政にかかわる情報がないとはいえない。したがって、決裁、供覧の手続を経ていなくとも、既に組織の共用文書としての実質を 備え、実施機関が業務上の必要性から利用し、管理しているものであれば、これを対象公文書とするのが適当である。

 

6 請求権者の範囲(現行条例第5条)


請求権者の範囲は、「何人も」とすることが適当である。

 【説明】

 現行条例では、請求権者の範囲を「県内に住所を有する個人」及び「県内に事務所又は事業所を有する個人及 び法人その他の団体」に限っている。これは、情報公開制度が、県民の県政に対する理解と信頼を深め、県政への参加を促進することを目的とするものであり、 その経費は、県民の負担にかかわるものであるという考えから出たものであった。

 しかしながら、経済活動が広域化し、権利関係や利害関係は、県境を越えて存在し、情報網も広域化されるに 至り、県民が、他の都道府県の有する情報を知る必要があるのと同様に、他の都道府県の住民が、本県の有する情報を知る必要がある場合もある。現行条例のも とにおいても、実施機関は、それら必要のある他の都道府県の住民より開示請求があった場合、「任意開示」の方法により、これに応じてきたが、権利者でない ため、開示されない場合に不服申立権等が認められなかった。このような制度では、利害関係を有するものの要請に応えたことにはならない。このことは、国際 化された社会における外国人に対しても同様にいえることである。

 国は、情報公開法において、「何人も」開示請求権を有することを認め、多くの道府県もこれに倣っている。さらに、近隣府県も「何人も」開示請求 権を有することを認めており、相互主義的な考え方からしても本県も「何人」に対しても開示請求権を認めるのが適当と考える。 

 また、情報開示を求めたいと思うものは、県民に依頼して開示を求めることができるのであり、現行条例においても任意開示の方法により、実質的に「何人」に対しても請求権を認めてきたことを考えれば、実態はさほど変わることがないと考える。

 

7 非開示情報

 

(1) 原則公開の理念(現行条例第9条本文)


情報公開制度の理念である「原則公開」を条例に明記することが適当である。

 【説明】

 現行条例の第3条は、情報の原則公開の旨を規定していたが、その趣旨が必ずしも明確ではなく、その結果、 第9条の解釈として非開示情報は、原則公開の例外規定であるといいながら、開示事務の手引等において「開示をしないことができる」とは、「実施機関に当該 公文書を非開示とする権限を与えたものである」とし、「本条各号に該当する情報が記録されている場合には、実施機関は、当該公文書を開示してはならないも のである」とすることにより、実施機関をして情報開示に消極的ならしめる効果をもたらしてきたといえないではない。

 したがって、規定の仕方としては、本来、県の情報は、原則的にすべて公開しなければならないものであり、 非開示情報は、極めて例外的なものであることを正面から条文にうたい込むべきである。そして、条例改正にあたっては、このことを宣明する意味でこれまでと 規定の仕方を逆にし、「実施機関は、開示請求があったときは、開示請求に係る公文書に次の各号に掲げる情報(非開示情報)が記録されている場合を除き、当 該公文書を開示しなければならない」と規定するのが適当である。

 

(2) 非開示情報の整備

原則公開を理念とし、非開示情報は必要最小限にとどめ、できる限り具体的、限定的に分かりやすく定めることが適当である。

 【説明】

 情報公開制度は、原則公開を理念とするものであることから非開示情報は、必要最小限にとどめるべきであり、できる限り具体的、限定的に分かりやすく定めるべきである。

 情報公開法は、その制定にあたり、地方公共団体の条例の規定や運用状況、判例の傾向や諸外国の立法例等を詳細に検討した上で、非開示情報を6項目に集約して具体的、限定的かつ明確に規定をしている。

 同法第41条により、地方公共団体は情報公開について、法の趣旨に則った必要な見直しを求められているとも解され、先行する他の都道府県の多くも法律に倣った改正を行なっている。

 非開示情報の規定は、できる限り情報公開法や他の都道府県の規定と軌を一にした方が、利用者にとって解釈、運用を知る上で便宜であり、実施機関が開示・非開示等の判断をするにあたっても、国や他の都道府県の例を参考にすることができるため、利するところが多い。

 したがって、非開示情報の見直しにあたっては、特別の事情のない限り、法律や他の都道府県の規定との整合を図るような見直し整備をすることが適当である。

 

(3) 個別非開示条項

 

 ① 法令秘情報(現行条例第9条第1号)

現行条例に加え、国からの法的拘束力のある明示の指示があるものについても非開示とすることが適当である。

 【説明】

 地方自治法の改正により、いわゆる機関委任事務は廃止され、地方公共団体の事務は、自治事務と法定受託事 務に区分されることになった。法定受託事務については、一定の範囲で普通地方公共団体に対する国の関与が認められ、法律又はこれに基づく政令に根拠のある 指示等が予定されており(平成11年に改正された「昭和22年法律第67号地方自治法第245条第1号」)、非開示とすべき旨の指示等がなされる場合がある。これら法的拘束力のある明示の指示がある場合には、これに従わなければならない。したがって、現行条例の法令秘情報に併せてその旨を規定することが適当である。

  ② 個人情報(現行条例第9条第2号)

① 現行どおり「個人識別型」で個人情報を保護すべきである。
また、「特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの」についても非開示とすることが適当である。
② 公務員の職及び職務遂行の内容に関する情報について、個人情報の例外として開示することが適当である。

 【説明】

① 個人の識別性のない個人情報について

 現行条例は、いわゆる「プライバシー型」によらず、「個人識別型」によっており、今後も、この立場に立っ て個人情報を保護すべきである。しかし、個人にかかわる情報でありながら、「特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利 利益を害するおそれがあるもの」がある。例えば、事業活動情報に属しない個人の日記帳、旅行記、感想文、反省書、カルテの記載のように、その個人の人格と 密接に関係する情報であり、この種の情報は、氏名等が示されず、個人識別性がない場合であっても、公にすることができないことを明らかにしておくことが適 当である。

② 公務員の個人情報について

 個人情報が公務員の職務の遂行にかかわる情報であるときは、その情報のうち公務員の職及び職務遂行の内容 に係る部分は、開示すべきである。すなわち、公務員の職に関する情報は、個人情報でもあるが、同時にそれは、行政情報でもあるので、後者の点に重きをお き、その情報が他の非開示情報にあたる場合のほか、例外なく開示することが当然である。

 もっとも、公務員の氏名については、公務員の私生活に影響を及ぼす可能性があるので「法令の規定により又は慣行として公にされ又は公にされることが予定されている場合」以外は、保護されるとすることが適当である。

 

  ③ 事業活動情報(現行条例第9条第3号)

現行条例に加え、非公開の約束のもとに任意に提供された情報については、合理的と認められる場合に限り非開示とすることが適当である。

 【説明】

 法人等の団体や事業を営む個人が実施機関の要請を受け、非公開を条件として任意に提出された情報(非公開 約束情報)が、実施機関において、一方的に開示することが許されることとなると、将来そのような情報の任意提供が受けられなくなるおそれがある。したがっ て、要請を受けて非公開の約束のもとに任意に提出された情報については、情報提供者の非公開への期待と信頼を一定の範囲で保護することが必要である。

 この保護を受ける情報は、法的に提出が義務付けられていない情報で、しかも実施機関の要請を受けて提出し たものに限られる。法的に提出が義務付けられている情報については行政機関の要請の有無を問わず提出しなければならないものであり、また、実施機関等から 要請を受けていないにもかかわらず、自ら進んで実施機関に提出するような場合には、情報のコントロール権を放棄したものとして特に保護するにあたらない。 さらに、非公開の約束をすることが公序良俗に違反するような場合はもちろん、生命、身体、財産その他の保護法益と比較衡量して開示する方が公共の利益にか なう場合には、開示することは正当と認められなければならない。したがって、非公開約束情報を保護するにあたっては、その情報の性質や提出した時点におけ る状況等から客観的にそのような約束をすることが合理的(相当)と認められる場合に限られるべきである。

 この非公開約束情報を法人等事業情報の中で定めるべきか、あるいは独立した条項として定めるべきかについ ては検討する余地がある。しかし、国・地方公共団体との間の信頼関係の維持、秘密保持については、他の非開示情報として保護されるので、ほとんど問題とな らない。また、このような情報の提供者が個人である場合もあるが、その場合も、そのほとんどが事業に関する情報と考えられ、そうでない場合は、個人情報に 係る非開示情報として保護されると思われる。したがって、非開示情報の範囲をできる限り必要最小限にとどめる意味からも、情報公開法に倣い、法人その他の 事業活動情報に関する条項中に定めるのが適当である。

 

  ④ 犯罪の予防、捜査等情報(現行条例第9条第4号)

公共の安全及び秩序の維持に関する情報については、司法警察を念頭におくこととし、警察行政の全国的な相互関連性もあり、実施機関の第一次的判断を尊重することが適当である。

 【説明】

① 現行条例は、標題のように公文書を開示することにより、犯罪の被疑者、参考人、情報の提供者等の生命、 身体の保護に支障が生じるなどの社会的危険の発生を防止するため設けられた規定であるが、「人の生命、身体、財産又は社会的な地位の保護」と「犯罪の予 防、犯罪の捜査」等を並列的に規定したため、規定の趣旨ないし適用範囲が必ずしも明確ではない。したがって、本号は、情報公開法第5条第4号(公共の安全 等に関する情報)の規定と軌を一にし、司法警察を念頭においた規定であることを明確化するのが適当である。「人の生命、身体、財産又は社会的な地位の保 護」については、他の非開示情報として保護されるとともに、情報の開示によって、人の生命、身体等に危害を及ぼすおそれのある主たるものは「犯罪の予防、 鎮圧、犯罪の捜査その他の公共の安全と秩序維持に支障を来すおそれのある情報」であることを考えれば、情報公開法の規定に倣うのが適当と考えられる。

② 公にすることにより、公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすかどうかは、機微にわたる判断を必要とする ので、実施機関の第一次的判断を尊重することとするのが適当である。殊に、公安委員会や警察本部長を実施機関に加えた場合、警察行政の全国的な相互関連性 から非開示情報の運用につき統一を図る必要があり、その趣旨からいっても、実施機関の第一次的判断を尊重することが適当である。

 

  ⑤ 国等関係情報(現行条例第9条第5号)

本号は、削除することが適当である。

 【説明】

 この規定は、従前から抽象的すぎて曖昧なため、主観的運用がなされるおそれがあるとされ、運用の実状から みても、この規定のみによって非開示とした例を聞かない。殊に、地方分権の推進の流れの中にあって、国等との協力、信頼関係を特別の非開示条項をもって対 応する必要は認められない。したがって、後出の「審議、検討又は協議に関する情報」あるいは「事務又は事業に関する情報」の規定をもって対応すれば足り る。さらに、法定受託事務については、「法令秘情報」の項において述べたとおりである。

 

  ⑥ 合議制機関等関係情報(現行条例第9条第6号)

本号は、削除することが適当である。

 【説明】

 合議制機関等における情報を一定の範囲で非開示にすることは、理由がないわけではない。しかしながら、合 議制機関等の会議に関する情報の開示・非開示を合議制機関等の自主的判断に委ねる点については、事実上合議制機関等に関する情報すべてを開示請求対象から 除外する結果をもたらすおそれが多分にあり、実質的に合議制機関等を実施機関から除外することにもなりかねないので、不適当である。合議制機関等の公正、 円滑な議事運営の目的を達するためには、特に合議制機関等に対し特別の規定を設けなくとも、審議事項の性質、内容、審議の状況等により、後出の「審議、検 討又は協議に関する情報」あるいは「事務又は事業に関する情報」の規定をもって対応すれば足りると解される。

 

  ⑦ 意思形成過程情報(現行条例第9条第7号)

本号は、削除することが適当である。

 【説明】

 意思形成過程情報を非開示とすることは、それなりの理由があった。ただ、現行条例の規定は、行政の各段階、各過程を一律的にとらえる形で理解され、そのため過度に拡大して解釈、適用されるおそれがあった。

 そもそも、県民の理解と信頼のもとに、公正で民主的な行政の推進を図ることを目的とする情報公開の理念か らすれば、むしろ最終的な意思決定前の情報を開示することが必要な場合が少なくない。決裁、供覧の手続を経ていなくても、組織共用文書として保有する公文 書を開示請求の対象としようとする傾向からしても、また、行政が県民に対する「説明責務」を果たす趣旨からしても、意思形成過程情報を非開示とする場合を できる限り限定する方向で検討する必要がある。少なくとも意思形成過程情報という概念や用語は、避けるのが適当で、後出の「審議、検討又は協議に関する情 報」あるいは「事務又は事業に関する情報」の規定をもって対応すれば足りると解される。

 

  ⑧ 行政運営情報(現行条例第9条第8号)

  本号については、事務事業の情報をできる限り類型化し、それぞれについて開示した場合の支障を個別的、具体的に例示するよう規定を整備、統合することが適当である。

 【説明】

 この規定は、包括的条項としての性質上、これまで非開示決定をする場合の根拠として用いられる場合が多かった。規定を明確にすることは望ましいが、事務事業の範囲は広く、多種多様であり、事務事業の遂行に生ずる支障の性質や態様も異なる。

 したがって、事務事業を個別的に把握し、各事務事業ごとに非開示情報を定める場合、かえって混乱を生じる ことが予想される。そこで、現行条例の国等関係情報、合議制機関等関係情報、意思形成過程情報をも視野に入れ、解釈、適用に支障が生じることのないよう に、事務事業の情報を、その性質によって類型化し、それぞれの情報を開示した場合の支障を個別的、具体的に例示する等して、何が保護の対象となるのかを明 確化し、開示請求者にも、実施機関にも分かりやすい規定とするのが望ましい。

 

(4) 非開示条項の整理統合

現行条例第9条第5号ないし第8号規定の情報に係る非開示条項は、情報公開法第5条第5号及び第6号の規定に倣い、Ⅰ 「審議、検討又は協議に関する情報」、Ⅱ 「事務又は事業に関する情報」として整理統合して規定することが適当である。  

 【説明】

 情報公開法は、既述のとおり、その制定にあたり、各自治体の従前の非開示条項の運用の実態や、判例、学説 の動向、その他諸外国の法制等を検討の上、策定されたものであるから、批判に耐え得るものであり、現行条例における非開示条項を整理、統合するにあたっ て、それぞれの規定の仕方についても参考とするに適当なものと考える。 

 なお、Ⅰの「審議、検討又は協議に関する情報」については、現行条例第9条第5号ないし第8号を整理、統 合する意味もあるので、① 県、国、他の公共団体のそれぞれの内部、② 国の機関相互間、③ 地方公共団体相互間、④ 国の機関と地方公共団体相互間等の すべてが包含されることを明らかにする必要がある。Ⅱの「事務又は事業に関する情報」については、先に行政運営情報について述べたところである。

 

(5) 公文書の部分開示(現行条例第10条)

個人識別性のある部分を削除すれば、開示しても個人の権利利益が害されるおそれがないと認められる個人情報については、部分開示とすることが適当である。

 【説明】

 個人情報は、氏名等個人識別性のある事項を削除しても個人情報であることにかわりはないが、氏名等個人識 別性のある部分を削除した残りの個人情報については、公にしても個人の権利利益が害されるおそれがないと認められる場合に限り、開示することの条例上の根 拠を明らかにすることが適当である。

 

(6) 公益上の理由による裁量的開示

非開示情報に該当する場合であっても、公益上特に必要があると認められる場合には、開示することができるよう、公益上の理由による裁量的開示の規定を設けることが適当である。 

 【説明】

 非開示情報が記録されている公文書は、情報公開法第5条第1号ロ、同条 第2号ただし書のように例外的に開示すべき旨の定めのある場合(いわゆる義務的開示の場合)を除き、原則として非開示とされることとなる。

 しかしながら、当該情報の解釈自体として非開示とすべき情報であっても、現実に生起する個々の具体的事例 において、非開示とすることによる利益と開示することによる利益を比較衡量した場合、開示することによる利益が非開示にすることによる利益に優越する場合 のあることを否定できない。

 したがって、このような場合、前述の例外的開示事由(義務的開示事由)が定められている場合以外にも、例外的に実施機関が公益上の必要から裁量的に開示を行うことのできる条例上の根拠を設けておく必要がある。

 しかし、実施機関に「裁量による開示」を認める規定をおくとしても、無制限の裁量を認めるべきではなく、 比較衡量の結果、非開示条項の趣旨に反しても、なおかつ開示すべき「公益上特に必要であると認める場合」に限られるとすべきであり、決して恣意的な裁量が なされるべきものではない。

 情報公開法にいう「裁量的」という文言の趣旨は、明白ではないが、全くの自由裁量でないことは明らかで、裁量的開示に関する決定が適切であったか否かの判断は、行政不服審査や司法審査の対象になる。

 

(7) 存否応答拒否情報

開示請求に係る公文書の存否を答えるだけで、非開示情報の規定により保護される権利利益が侵害されることとなるときは、当該公文書の存否を明らかにしないで開示請求を拒否できることとするのが適当である。

 【説明】

 公文書の開示請求に対し、当該公文書が存在するか否かを明らかにすることのみによって、非開示情報を開示したと同一の結果を来す場合がある。

 例えば、特定の個人の特定の疾病や犯歴捜査情報について開示請求があった場合、その公文書を開示するとき は、個人のプライバシーを侵害することになるから非開示とするとした場合、その個人の疾病ないし犯歴の存在が明らかとなり、非開示とすることにより保護し ようとした個人のプライバシーが侵害されてしまう。このことは、個人情報に限らず、法人等の事業活動情報その他すべての非開示情報についていい得ることで ある。

 そこで、実施機関がこのような公文書の開示請求を受けた場合、当該公文書の存否自体を明確にしないで、開 示請求に対し拒否処分(行政処分)をなし得る規定を設けるべきである。なお、この処分は拒否処分であるから、拒否理由を提示する義務があり、行政不服審 査、司法審査の対象になることは、もちろんである。

 

(8) 公文書不存在

公文書不存在を理由に請求を拒否する場合については、これを行政処分として位置付けることが適当である。

 【説明】

 現行条例では、請求に係る公文書が存在しない場合には、請求に応じることが不能であるので、請求書不受理として処理することとされていた。

 しかしながら、請求権者による申請が、受付されず不受理とされることは、行政手続法第7条の規定に照らし、不適法な処理というべきである。

 したがって、「公文書の不存在」を理由として開示請求を拒否する場合には、すべてこれを拒否処分(行政処分)として明白に位置付けることが必要である。そして、その場合は、不存在の理由を提示しなければならないし、行政不服審査、司法審査の対象となるのである。

 

8 開示請求・決定の手続

 

(1) 請求書の補正原則

請求書に形式上の不備があるときは、実施機関は、請求者に対し補正を求めることとし、その際には、補正の参考となるような情報提供をするように努めることが適当である。

 【説明】

 公文書の開示を請求する場合、公文書の特定が必要となるが、請求者にとって、それは容易でない。そして、 開示請求する公文書が特定できない場合、当該開示請求は不適法として、非開示決定がなされることになる。しかし、実施機関が公文書不特定という理由で、安 易に非開示決定をするようでは、情報公開制度は、充分にその機能を果たさないこととなる。

 したがって、公文書の開示請求書に公文書の特定の不備その他形式上の不備があるときは、実施機関は、相当 の期間を定めて、補正を求めることができることとするとともに、行政手続法第9条第2項の趣旨を一歩進め、「開示請求者の求め」がなくても、進んで補正の 参考となるような情報提供をするように努めることが必要である。この旨の規定を設けることが適当である。

 なお、この規定に基づき補正を求めた場合、補正に要した日数は、開示決定期間に算入しないこととするのが相当である。

 

(2) 大量請求

開示請求に係る公文書が大量であるために、通常の期間内に決定を行うことにより、実施機関の事務事業の遂行に著しい支障が生ずるおそれがある場合の決定期間の特例について規定することが適当である。

 【説明】

 現行条例では、公文書開示請求を受理した日から15日以内に開示決定等をしなければならないが、その期間内に決定することのできないやむを得ない事情のある場合には、請求書を受理した日から60日を限度として、上記決定期間を延長することができることとしている。

 しかしながら、実施機関の過去の経験からみて、開示請求に係る公文書が大量であるため、60日以内に、そのすべてについて決定をしなければならないこととなると、実施機関の事務の遂行に著しい支障の生じる場合のあることが予想される。

 そこで、実施機関の円滑な事務の遂行が妨げられることのないように、開示請求された公文書が著しく大量で あるため、開示請求があった日から60日以内にすべての決定をすることができない場合には、情報公開法第11条の規定の趣旨に倣った処理をすることができ る旨の特例を設ける必要がある。

 

(3) 利用者の責務(現行条例第4条)

制度利用者の適正請求に関する責務の規定を設けることが適当である。

 【説明】

 現行条例は、利用者の責務として、公文書の開示を受けたものは、得た情報を濫用して他人の権利、利益を侵害するようなことがあってはならないので、この趣旨を示すために、本制度によって得た情報を適正に使用する責務を規定している。

 しかしながら、本制度利用者の中には、請求者の閲覧能力を超えた大量の公文書の一括ないし総括的な開示請 求をし、しかも実施機関の職員が多大の時間と労力を用いて整理、提示した公文書を真摯に閲覧、利用しているか否か疑わしい事例がある。このような請求は、 いたずらに行政コストを高め、実施機関の事務の円滑な遂行を著しく妨げるものであって、権利濫用といえないとしても、利用者としての誠実さを欠き、情報公 開制度の円滑な実施を妨げるものである。

 したがって、情報公開制度の適正、円滑な運用のためには、実施機関の責務だけでなく、制度利用者側にも開示請求権を誠実、適正に行使する責務のあることを明らかにする必要がある。

 

(4) 事案の移送

開示請求に係る公文書が、他の実施機関において作成された場合など、他の実施機関が開示決定等を行うことについて正当な理由がある場合には、事案の移送を行うことができるよう規定することが適当である。

 【説明】

 開示請求に係る公文書の中には、他の実施機関が作成したものや、他の実施機関の事務と重要な関連を有する 情報にかかわるものがある。このような場合、開示請求を受けた実施機関が自ら開示決定等をするよりは、当該公文書に係る事案を関連ある他の実施機関に移送 した方が、適切に開示の当否を判断できる場合がある。

 そこで、このような場合を予想して、請求を受けた実施機関が、他の実施機関に開示決定等させることにつき正当な理由がある場合、事案を移送することができること及びそのための所要手続を定めておくことが適当である。

 なお、この場合、移送したこと自体が請求者の不利益とならないように、開示決定等の期間は、当初の開示請求の時点から進行することとしておくことが適当である。

 

(5) 第三者保護(現行条例第7条第5項)

開示請求に係る公文書に第三者に関する情報が記録されている場合、当該情報について公益上の理由等により例外的に開示決定を行うにあたり、当該第三者に対する意見書提出の機会の付与など第三者の保護に関する規定を整備することが適当である。

 【説明】

① 任意の意見聴取について

 開示請求に係る公文書に第三者の情報が含まれている場合、実施機関としては、その第三者の意見を聴いた方 が、誤った判断を回避することができる。現行条例は、この趣旨から実施機関が必要と認めた場合、第三者の意見を聴取することができるとしている。この規定 の趣旨を生かし以下の点で情報公開法第13条の規定を参考にしながら第三者保護に関する規定の整備・充実を図るべきである。

② 義務的意見聴取について

 実施機関が開示請求を受けているものの中に、本来、非開示情報であるにもかかわらず、公益上の理由から 「義務的開示」あるいは「裁量的開示」を行なう場合がある。このような場合、その第三者は、情報が開示されることにより自己の権利又は利益が侵害されるこ ととなるので、開示に対して自己の意見を述べる機会が確保されなければならない。これは、「デュー・プロセス」の理念からして当然である。

 そこで、公益上の理由による「義務的開示」又は「裁量的開示」を行なう場合、その第三者に対し、必ず意見を述べることのできる機会を与えることが必要である。

③ 争訟の機会の保障について

 実施機関は、第三者の情報が記録されている場合、たとえ、その第三者から反対意見書が提出されていても、 拘束されることなく、開示することができる。この場合、第三者としては、一旦、開示されてしまうと取り返しのつかない損害を被ることがある。そこで、反対 意見書を提出している第三者については、その第三者が開示の実施前に、開示決定に対し行政不服審査法に基づく不服申立てや行政事件訴訟法に基づく取消訴訟 (執行停止を含む。)等必要な争訟を準備する時間的猶予を保障することが必要である。

 

(6) 公文書の開示方法(現行条例第8条)

電磁的記録の開示方法については、できる限り請求者の要望する方法で実施することが望ましいが、その記録の種別、情報化の進展状況や技術的な制約などを勘案し、規則等で別に定めることが適当である。

 【説明】

 現行条例は、情報の媒体が文書であることを前提とし、公文書(場合によっては写し)の閲覧又は写しの交付の方法によることとしている。

 ところで、情報の媒体が電磁的記録である場合、当該電磁的記録の開示の実施にあたっては、その特性から請 求者の希望した方法で開示することが不可能な場合があり得る。したがって、実施機関の使用している電磁的機密や電子情報のセキュリティーを勘案し、実施可 能な開示方法を検討する必要がある。

 そこで、情報が電磁的記録に入力されている場合の開示方法については、できる限り請求者の要望する方法で実施することが望ましいが、電磁的記録の種別、情報化の進展状況その他前述の諸事情を勘案し、規則等で別に定めることが適当である。

 

(7) 費用負担(現行条例第11条)

費用負担については、現行どおり、手数料は徴収せず、写しの交付等に係る費用を徴収すべきである。なお、その額については、コスト等を勘案し、できる限り軽減化を図ることが適当である。

 【説明】

① 現行条例は、公文書の開示請求手数料や開示実施手数料を徴収せず、公文書の写しの交付を受けるものは、写しの交付に要する費用を負担しなければならないとし、公文書の閲覧については、これを無償としている。

 しかし、請求、閲覧の手数料については、情報の開示を受けるものは、現実には、特定の請求者であり、特定の個人に対する役務の供与については、受益者負担とし、開示請求に対する事務処理コストを考慮して、手数料を徴収すべきであるとの論がある。

 しかしながら、情報公開制度は、未だ、普及、浸透を図る過程にあること、開示請求は条例によって創設され た県民に与えられた権利を行使するものであること及び実施機関は、県民に対し説明責務を負っていること等を勘案すると、情報公開制度の実施に伴う経費は、 民主主義の必要なコストと考えるべきであるから、現段階では、新たに手数料を徴収することとする特段の事情は認められず、現行条例を変更すべきではないと 考える。

② 現行の写し交付の費用負担(謄写費用)は、できる限り軽減化を図る必要がある。また、電磁的記録の開示に伴う費用負担についても、これに要するコスト等を勘案して検討することが適当である。

 

(8) 任意開示(現行条例第16条)

改正条例施行以前の公文書については、できる限り情報公開の実を上げる立場から、任意開示により対応することが適当である。

 【説明】

 現行条例は、第16条において、公文書の任意開示について規定しているが、今回の条例改正においては、開示請求権者の範囲が「何人も」と拡張された場合、開示請求権者との関係では、任意開示の必要はなくなる。

 しかし、改正条例施行以前の組織共用文書あるいは改正条例施行以前から存在する電磁的記録等について開示 請求があった場合、どのように処理するかが問題である(もっとも、これは、現行条例第15条第2項のような適用除外規定を設けるかどうかにもかかわること ではある。)。

 実施機関において、これら条例上の開示請求の対象となり得ない公文書の開示請求を受けた場合、開示する義 務はなく、したがって、開示しなかった場合においても、行政不服審査法上の不服申立てや行政訴訟の対象とはなり得ないものではあるが、できる限り情報公開 の実を上げる立場から、任意に開示できるものとしておくことが相当と思われる。この意味で、従前の任意 開示の規定は、第2項の規定を除き、存置しておく のが適当である。

 

9 審査会(現行条例第13条)

審査会の調査権限を強化するとともに、審査会の適正かつ実効性のある審議手続などを明確にするため規定の整備を行うことが適当である。

 【説明】

① 開示決定等は、行政処分としての性質をもつので、行政不服審査法による不服申立てが可能である。そし て、不服申立てがあった場合、原則として裁決機関は、異議申立て又は審査請求につき、いわゆる情報公開審査会(本県においては公文書開示審査会)に諮問し なければならないこととなっている。そして、実施機関は、この諮問に対する答申は、これを尊重して不服申立てに対する裁決又は決定を行なわなければならな い、と定めているため、特段の理由がない限り、答申と異なる裁決又は決定をすることは困難である。

② そのような点から、情報公開審査会の機能は極めて重要であり、本県を含めて地方自治体における情報公開 制度の定着に一定の役割を果たしてきた。それを受けて情報公開法は、国段階の不服申立て等に関する情報公開審査会については、その組織、調査手続、審査会 の答申等に関し、同法第18条から第35条までの規定をもって詳細な定めをしている。本県の審査会は、これまでもそれらの趣旨に沿った運営を実際上行って きた。

③ そこで、条例の改正にあたっては、審査会の名称を「和歌山県情報公開審査会」と改めるほか、情報公開法の規定に倣い、下記事項などに関する規定を条例上設けることが適当である。

ア 第三者からの不服申立てを棄却する場合の手続(情報公開法第20条、第13条第3項)

イ 審査会の調査権限(同法第27条)

ウ 不服申立人等の審査会の審理に関与できる権限(意見の陳述、意見書等の提出、提出資料の閲 覧権限)(同法第28条、第29条及び第31   条)

エ 委員による調査手続(同法第30条)

オ 調査審議手続の非公開(同法第32条)

カ 答申の公表等(同法第34条)

キ 規則への委任(同法第35条)

 

10 公文書の管理

 

(1) 管理の徹底

情報公開制度を適正、円滑に実施するためには、公文書の管理は適正に行なうことが必要であり、その趣旨を条例に明記し、そのための基準となる規定は、条例に基づく規則により規定することが適当である。

 【説明】

 従前の「公文書の管理に関する定め」は、公文書は行政機関が職務に用いる公用物であるという認識が一般的 であることから、訓令の形式をとる文書管理規程とされ、法規的な性格を有しないものであった。ところが、情報公開を適正、円滑に実施するためには、存在す るはずの公文書が保存されていなかったり、所在不明で検索できなかったりするようでは、情報公開の目的 を達することができない。このように、公文書の適 正な管理は情報公開の基礎というべきものである。そして、公文書開示制度のもとにおいては、公文書は、単に実施機関が職務の遂行にあたって用いる公用物で はなく、県民すべてが利用する、いわば公共用物としてとらえられなければならない。

 殊に、情報公開という面からいえば、実施機関は、県民に対し「説明責務」を負うのであるから、公文書の分 類、作成、保存、廃棄等公文書の管理は、これを適正に行なうことが必要であり、その趣旨を条例に明記し、そのための基準となる規定は、条例に基づく規則に より規定すべきである。

 

(2) 請求者への情報提供

容易かつ的確に目的となる公文書を特定し、開示請求をすることができるように開示請求者の利便を考慮した適切な措置を講じることが必要である。

 【説明】

 県民が特定の情報を得ようとする場合、どこにいかなる公文書が存在し、どのように開示請求を行えばよいの か分からなければ、この情報公開制度は生かされない。そして、説明責務の原則からすれば、開示請求をしようとするものが、容易かつ的確に目的となる公文書 を特定し、開示請求をすることができるような検索資料の備置き等開示請求をしようとするものの利便を考慮した適切な措置を講じることが必要である。

 殊に、電磁的記録に入力された情報及び組織共用文書に係る情報については、公文書管理に関する規則等の整備、充実とともに、検索資料の作成や供用の方法について、より一層の工夫が望まれる。

 

11 情報公開・提供の推進(現行条例第17条)

公文書開示制度による開示請求をまつことなく、県民の必要とする情報の収集、整理等に関する施策の充実、高度情報通信社会の進展に即応した広報媒体の活用等に関する体制づくりを考慮し、適時、適切な方法で積極的な情報公開の推進に努めるべきである。
なお、情報公開制度の推進にあたっては、子ども、高齢者、障害者、外国人にとっても分かりやすく、利用しやすい制度とするよう配慮するべきである。

 【説明】

① 現行条例による公文書開示制度は、県民から公文書の開示請求を受けて、公文書の開示を行う制度である。 しかしながら、公文書開示制度は、県民に対する情報公開制度としては、充分なものではない。地方自治の本旨を実現するためには、県民の県政に対する理解と 信頼を深め、県政への参加を促進し、開かれた県政を推進する必要があり、この目的を達成するためには、県民より行う開示請求をまって、公文書を開示すると いうのではなく、県民からの請求がなくとも、進んで県民に対し、県の重要な政策や県民が関心を寄せている課題に関する政策等について広く県民に情報を提供 すべきである。

② 現行条例も、第17条で「情報提供の推進」をうたい、実施機関は、各般にわたり、積極的に県民に対し、 これら情報の提供に努めてきたところである。しかしながら、地方分権の推進に伴い、住民に対する情報公開の必要は、より高まり、情報公開制度のもとにおい ても行政側の説明責務が強調されるに至ったことは、既述のとおりである。情報公開法においても、政府は、行政機関の保有する情報が適時、適切な方法で、国 民に明らかにされるよう「行政機関の保有する情報の提供に関する施策の充実」に関し、規定を設け、各都道府県も情報公開の総合的な推進に関する施策の充実 について、一層努力すべき旨の規定をおいている。

③ 以上のような流れを受け、本県としても、現に問題となっている県政の諸問題につき、適時、適切な方法で 県民に対しその判断の基盤となる資料を提供する等、積極的な情報公開の推進に向けての努力規定を設けるほか、実施機関において、県民の必要とする情報の収 集、整理とその利用方法の周知に関する施策の充実、さらには、民間の各種広報機関の利用やインターネットの普及などの高度情報通信社会の進展に即応した広 報媒体の活用等に関する体制づくりを考慮する必要がある。

 なお、情報公開制度の推進にあたっては、子ども、高齢者、障害者、外国人にとっても分かりやすく、利用しやすい制度とするよう配慮しなければならない。