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連13号

躍動する自然の息遣い 熊野の森から生まれる版画・木彫アート


木版画『woo−wow』。緑が少なくなってしまった山に、心優しい生き物「ウーワウ」が花を届けるというストーリー。   木彫「森のたまご」と「森のこども」。ここから新しい森が生まれて育っていく…そんな物語が始まりそうだ。
 

神々が宿る熊野。その山懐に抱かれたアトリエに、
ひとりのアーティストが暮らしている。
番留京子さん。東京で育ち、
版画の表現力と出合った彼女は今、
木版画や木彫を中心に国内外で活躍し、
数々の賞を受賞する気鋭の作家だ。
その作品の鮮やかな色彩と自由な造形からは、
森の生命が、力強く新しい姿で立ち現れている。

 

 

ア−ティストとしても、「語り部」
としても、熊野古道は番留さん
の大切なフィールドだ。

制作スペース兼生活スペース。ここにも、木の温もりがあふれている。

 


アトリエに広がる生命の物語。
 うっそうと繁るシダの上を飛ぶ「やたがらす」、都会に住む子供たちに森を届けるオオカミ「デリバリーウルフ」、花が咲かなくなった山に花を届ける「ウーワウ」…。番留さんのご自宅兼アトリエ「木楽伝(きらくでん)」は、彼女が熊野の森から着想し、生み出した様々な生き物たちであふれていた。鮮やかな色彩と、木肌のコントラストに、まず目を奪われる。熊野の森が引っ越してきたような、生き生きとした躍動感に満ちている。
 「ここをアトリエにしたのは、目の前に見える岩山の眺めが気に入ったからなんです」。もともと森が好きだったという番留さんが、制作と生活の拠点を熊野に移したのは1992年のこと。「ここで暮らしていると、熊野の森の『いいもの』が日々私の中に蓄積して、それが少しずつ作品になっているような気がします」と話してくれた。

緻密な版画制作。ダイナミックな木彫。
 版画の制作は、緻密な作業の連続だ。まず、版木と向き合う。「木目を見ながら、作品のイメージを具体化します」。鉛筆で下絵を描き、重ねる色(版)の数だけ版木にトレースし、彫り上げ、刷っていく。どう色分解をするのか、最初の段階ですべて計算した上での、根気のいる作業だ。
 それと対極にあるのが、木彫だ。林家の山仕事を手伝ううち、チェーンソーで木を切る魅力に出会った。そこからキャラクターたちが立体の作品になって飛び出し始める。「たくさんの作業を積み重ねて最後にようやく結果が見える版画と、どんどん形が見えてくる木彫と。まったく違うから、自分の中のバランスがとれるのだと思います」。

 

森へ行こう。―そこで感じたことから、
すべてが生まれる
 番留さんは多忙な人だ。熊野の生き物たちが登場する絵本もつくりたい、森の写真も撮りたい、木彫の看板づくりもしたい。最近では、熊野古道を訪れる人たちに由来や伝説などを解説する「語り部」としても活躍している。「やりたいことが、どんどん増えてしまって…」と笑うが、その活動ぶりは、番留さんが、この環境を満喫していることの何よりの表れだろう。作品をつくることも、山仕事や語り部の活動も、すべてが自然に渾然一体となってつながっている―そんな印象だ。その日々を通して、番留さんが蓄積した『いいもの』は、やがてまた次の作品となり、見る人に熊野の森の新たな魅力を伝えてくれるに違いない。

熊野の伝説に登場する「やたがらす」も、番留さんによって、新たなキャラクターとして生命を吹き込まれた。


木版画『Delivery』。都会に暮らす、森を知らない子供たちに、熊野の豊かな森を運んでくれるオオカミ「デリバリーウルフ」が主人公だ。
 
木版画家・木彫アーティスト
番留京子さん
【主な受賞歴、作品展】
1997年 オレゴン国際版画展/ウクライナ国際トリエンナーレ
1998年 神奈川国際版画トリエンナーレ優秀賞受賞
2005年 第6回高知国際版画トリエンナーレ
作品展「森へ行こう」(2001年)など、発表は関東中心だが、2005年12月には、県内の那智勝浦町でも個展を開催。次回は2007年1月ギャラリーオカベ(東京・銀座)を予定。


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