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和歌山県の津波避難困難地域と津波対策について

 先日公表(10月28日知事記者会見)した「和歌山県の津波避難困難地域と津波対策について」、当日の知事の説明と記者との間での質疑の要旨をご紹介します。
 今回策定した「津波から『逃げ切る!』支援対策プログラム」では、県が独自に津波避難困難地域を抽出し、“命だけは絶対に助ける”という強い思いでより具体的な対策を示しました。

和歌山県知事室長

和歌山県の津波避難困難地域と津波対策について
(平成26年10月28日 知事記者会見)

知事説明要旨

知事:和歌山県の津波避難困難地域と津波対策についてです。大変重い深刻な、そして勇気を持って一生懸命やらなければいけない、そういう対策について、ずっと詳細に検討してまいりましたので、その結果を報告させていただきます。

 和歌山県は、南海トラフの震源域に近いところにあるものですから、今我々がいる和歌山市は、南海トラフの地震が起こっても、津波が到達するまで随分時間がかかります。だけど和歌山県の半島の南の方は、ついそこの先のところで地震が起こるので、到達時間が近いという問題があります。一般的には、和歌山県における津波対策の考え方は、「命だけは絶対に助けよう」ということでございます。そのためにどうやって逃げるかとか、避難路を作ったり、それから地震がその前に起こって潰れたら困るので、家の耐震化とか建物の耐震化とかで誘客施設の耐震化とか、そのようなことをずっとやってきたわけです。
 ところがあまりにも震源域に近いと、実は逃げようと思っても逃げる時間がないという地域があると思うわけです。それを思うだけじゃいけないので、一戸一戸の家、その小さい路地のようなところの部分まで、きちんと分析をして、それでここの家の方は、南海トラフの大地震が起こって、それで大きな津波が来たら逃げられないかもしれないということを、きちんと分析をしました。それで分析をするだけでは、そんなものは学者の仕事ですから、我々の仕事は、そういうところにいる人を、それでも全部助けるというのが我々の仕事であります。
 したがって、どうやったら助けられるかということをやってみました。市町村ともよく話し合いをして、今のところ、分析結果、4町で津波避難困難地域があるということが分かりました。二通り想定し、3連動地震、これは歴史的に起こったこともある、分かっている地震なので、特にきちんと備えておかないといけないということですね。この3連動地震、昭和南海地震みたいな小さい南海トラフの地震が来たら、そんなものはへっちゃらなんですが、歴史的に見ると系列の地震の中で一番大きな宝永の地震クラスです。これは3連動地震と我々は俗に言っていますが、そのぐらいの地震が来た時に、避難困難地域があるかということを全部分析したら、4町においてあるということが分かりました。そこで、その4町の避難困難地域にある人をどうやって助けるかということを対策も併せて考えて、今日発表することにしました。今後十年間で、その対策を完備しますから、十年経ったら、その地域も3連動地震が起こった時は、全員逃げられるはずだということになります。

 もう一つは、学者さんが巨大地震というお考えになった大きい地震がありますね。理論的にこれ以上ないというぐらいのことを学者さんが考えられた地震想定があります。その想定も浸水想定とかも、ちゃんと発表してあるんですが、その時に、全部助けられるかということについては、今のところ、全部答えができておりません。それについては、それでもやっぱり起こるかもしれないから、地域の改造とか、更に今まだ計画が立っていないような大きい避難ビルとかを、これから建てていくことによって地域を改造していかないといけないですね。しかもその地域は、4町だけではなくてもうちょっと多くなります。そういうところを、改造することによって全部の人を助けたいと、そういう時には、そういうことが起こっても助けたいと思っています。ただ、具体的に今ここで、「こういうビルを建てることになってるから十年後は大丈夫よ」というところまで計画がちゃんとできていないということであります。だけど、どこが危ないかということについては発表をしておくということです。確率の問題としてはうんと低いと思うので、その地域に住めないというようなことを考える必要はないと思います。だけどやっぱり念のために、我々は備えておかないといけないと思うから、これから継続的に、更にやっていくということであります。

 もう一度、資料に沿って申し上げますと、避難困難地域の抽出方法というのは、資料の1ページの枠の中にあるような、そういう定義を置いてやりました。それで3連動地震の分析ですが、大きく分けると4町の、次のような地区には、その3連動の地震が起こった時の避難困難地域がありますということを正直に申し上げます。その地域については、どういうことをやるかということについて、1から6までの分類でいろんな対策が考えられると思います。
 例えば1は、逃げ方をうまく工夫することによって、何とか逃げられる。それから2津波避難ビルを指定して、指定と言ったって大都会と違うから、いくらでもあるわけじゃないんです。それから昔の古いビルなんかがありますから、この耐震強化なんかもその間やっておかないと、あのビルと言ったって、地震でそのビルが崩れてたらしょうがないわけで、そういうこともやっていかないといけません。それから、3避難路がここで行き止まりっていうのはやっぱり困るので、最短距離でここへ逃げようと言った時に、そこの避難路を作っておくということを、更にやる必要があるんじゃないかということです。それから4番目は、津波避難施設の整備、これはビルだけではなくて、タワーなどを作って、とりあえず逃げ上がるということもやっておかないといけません。それから、どちらかというと順番が、もうちょっと前にあっても良いんですが、5堤防・護岸の整備というのをやっておかないといけません。これは堤防を作っても、大きい津波が来れば、堤防で全部はね返せるわけではありません。小さいのが来ればはね返せますけど、大きいのが来ればはね返せないけども時間稼ぎができるんです。後で細かく説明しますが、時間稼ぎをしているうちに、より遠くまで逃げられる、そういうために、やっぱりやることはやっておかないといけない。そういうことで、そういうこともやります。6その他、例えば県営住宅に外階段をつけて、それで屋上に上っていけるようにするようなことを、いろいろと具体的に考えました。

 分類をすると、次のようになり、イメージは4ページにございます。例えば逃げるということを考えると、例えばこの図を見ていただきますと、S1というところから逃げると考えましょう、その時に、この右の方から津波が来るわけです。右の方から津波が来て、津波が浜から来るわけですから、このS1の人は、まっすぐ津波から遠ざかるように山の方に逃げたくなるわけです。ところが、そうやって逃げると、多分途中で津波に追いつかれて×のところで時間切れになるということです。したがって、これは津波の反対側に逃げるのじゃなくて、津波の方向を横切るような形で、この○の方向へ逃げろと、そうしたら山により近いからたどり着くことはできるというようなことを、一戸一戸の方にちゃんとお教えして、それで、そのように思っておいてもらわないといけないということです。これで随分多くの人が助かるはずであるということです。

 それからその次の資料をめくっていただきますと、さっき申し上げましたような町による対策や堤防等の整備とか、いろいろありますが、要するに施設を作って逃げられるようにするというようなこととか、あるいは堤防ですが、さっき言いましたような県の事業で、堤防を嵩上げしたりするということです。資料の下の図を見ていただきますと、今の堤防については、黒い箇所の高さしかない。そうすると、例えば、串本町の串本というところを見ますと、第一波のピーク3.9m、最大波8.5mというふうになってます。第一波から最大波まで16分間があるという分析が、実はもうされているんです。地震が起こった時に、どういうふうな影響が出るかというのは、海底地形とか、そういうのものをすごく詳細に調べて、これを聞いたら、コンサルタント会社でコンピューターを回してもらったんですが、11日間回し放しで出てくるような答えだそうです。そういうことがあるのでこの第一波をとりあえず止めておこうということであれば、最大波までの時間は稼げるわけです。この3.9mというのは、常に3.9m来るかどうか分からない。だけど3連動地震で来たら第1波は3.9mで、一番大きい津波は、8.5mが最大波で来るということが分かるんですね。多分、地震の大きさが小さかったら、これが比例的に小さくなっていくと思うんですが、そういう形でありまして、堤防を薄い灰色のところに大きくしておくと、第一波が止められるわけです。そうすると逃げる時間が稼げますね。そうすると、第一波の時間だったら巻き込まれる可能性がある人たちも、最大波まで津波が来ないということになったら、時間的余裕を持って山の上に駆け上がることができると、高齢者は駆けるのは無理だから行くことができるというような考え方です。したがって、それも結構一生懸命やっておかないといけない。
 それから次に、津波避難困難地域以外の津波対策も考えておかないといけない。これは逃げられるかもしれないけども、やっぱり、例えば逃げ遅れた人とか、そういうこともあるし、それからできれば小さいぐらいの津波だったら堤防ではね返した方が良いに決まっているということになるわけでありまして、次のような形で、津波避難ビルの指定は今あるようなビルに、「そこに逃げなさい」というようなことも考えておかないといけない。それから避難路、避難施設の整備。それから公共用の庁舎や幼稚園、学校、福祉施設、病院については、津波が来ても大丈夫なように高台移転しておこうと思います。それから、港湾・漁港の堤防等の整備をさっき言ったみたいにしておこうということが、津波避難困難地域以外でもやっぱり必要になってくるということであります。それで、どういうところにやっておかないといけないというと、次の6ページの上の15市町の6港湾10漁港というところで、今申し上げたようなことをこれからやることにいたします。
 実は、万里の長城がひっくり返った時に越えてきた波が、丘側の下を抉ったんですね。あれが構造的な問題だって指摘されているので、我々は、今度直しておく時には、そこの6ページの真ん中にあるように、もちろん高さも上げますが、丘側で返しの波で抉られてひっくり返るというようなことがないように、そこのところもちゃんと固めておくというようなことを、これからやっていかないといけないと思います。

 それで、県市町の全部で今までの話を具体的に詰めておりますが、そういうことをやると、だいたい683億円ぐらいかかると思われます。これを、10年ぐらいかけて、精力的にやっていきたいと思っています。もちろん、県だけじゃなくて市町の対策もあります。実は、ここに数字があるということは、積み上げができているということでやっていきたいと思っています。

 それから巨大地震は7ページにございまして、巨大地震は、4町だけじゃなくて12市町で避難困難地域が発生すると予想されます。
 7ページの下のような状況なんですが、これについては、さっき言ったみたいに、今あのビルを建ててこうなってというような計算が、まだ十分できているわけではありませんが、これから更に市町と相談をしたり、あるいは住民と相談をしたりして、地域の改造をしていかないといけない。やっぱり命だけは助けたいと思いますので、巨大地震は来ないかもしれないと思って放置するということの考え方はありません。だけど現実的にはですね、やっぱり、より確率の高いところから手をつけていかないといけない。例えば堤防の強化なんていうのは、両方共通してやっていきますから、その堤防の強化によって、巨大地震が起こった時も、例えば小さ目の巨大地震であれば、助かる確率も高くなってくるということになります。
それから資料の8ページにいろいろ書いてございます。その時のイメージは、9ページでございまして、避難困難地域がこの黄色いところに3つ出てくると、そうすると右の方は、これはやっぱり複合避難ビルを造ろうと。例えば、ここに県営住宅や民間の集合住宅、市営住宅とかを作って、周りの人はできるだけ上に住んでもらおうと、いろんな制度も考えようといういうことになります。それから、真ん中の黄色いところは、高台にその地域の人がみんな集団で移転しようよということで話をつけて、それで日頃住んでる所は丘の上にすると考える。それから左の方は、例えば、津波避難ビルを指定したり、あるいはタワーを建てたり、そんなような形で対応をしていくという、いろんなやり方があると思います。それぞれの生活もあるので、そんな乱暴なことはできないんですが、その辺と折り合いをつけながらやっていくということになります。

 それから、基本的な津波対策というところでまとめていますが、全部の分析に必要なところを対策でまとめたら、こういうことになるわけで「早期避難の徹底」を絶対にやらないといけないということです。そのためには、避難対策それぞれがこっちに逃げる、あっちに逃げると、例えば、3連動地震が来た時に、自分のところが危ないということが分っても、その中で3連動地震だって、必ずいつも最大とは限りませんからね。だから、一番、命の助かる確率の高いのは何かをいつも考えながら対応してもらったらいいわけです。
 それから「津波避難訓練の取組」で、これは是非、参加をしてくださいということであります。
 それから「条例を活用した避難の確保」です。和歌山県というのは、いろいろと条例で工夫をするところでございまして、実は、景観の目的で廃墟を片づけていくという条例を持っておりますが、それと共に、避難路を開けるために廃墟を壊すという条例も持っています。これは市町村が、できることになっておりまして、こういうことを活用して、避難路を防ぐような壊れかけの建物は全部撤去しといてもらうということが大事だと思います。
 それから「耐震化、家具固定の促進」が、津波以前の問題として大事でございますので、家庭、それから大規模建築物、集客施設もちゃんとやってもらわないといけないということで、そのための支援措置は、和歌山県は全国のトップぐらいのものを持っております。
 それから防災教育で、子供にも徹底的に教えないといけない。
 それから、家具の転倒防止対策で、家庭でいろいろと対策をしておいてもらわないといけないということであります。

 参考で、資料の11ページに被害想定も併せてやりました。これは、国において、巨大地震で平成24年の8月と平成25年の3月に被害想定の公表が行われましたが、和歌山県は、より詳細に地形情報とかが分っているものですから、それを基にして、同じような考え方でより詳細なものをこの際に作っておきました。その前提としては、逃げるんですが、逃げ方がちょっとなまやさしいというか、十分でないというような想定で、国は巨大地震で8万人ぐらい死んでしまうといわれてるんですが、それをいろいろと申し上げますと、例えば昼間は5分は逃げない。それから夜間は10分は逃げない。その前提で、5分後、10分後、35%の人が逃げる。それから、40%の人は10分間足して、昼間だと15分後に逃げ始めると。それから、夜は20分後に逃げ始める、40%の人はそうする。残りの25%の人は逃げないという前提を置いた時に、ああいう被害状況になるんです。しかも、対策がまだできてないという状態ですね。その時に、8万人死んじゃうぞと。それなら、死んでたまるかというふうに思うんで、実際にもっと逃げてもらえば、こんなに被害は大きくなることは今でもないんですが、さっき言いましたような対策をすることによって、この数字の通りになるという話では全くありません。我々は地形情報なんかが分かっていて、浸水予測は国交省の言うこと聞いて、せっかく造った堤防が全部壊れたという前提でやりましたので、浸水区域が大きいんです。その中で今のような前提を置いてやってみますと、9万人ぐらい亡くなることになるということです。3連動地震の場合は、人的被害の最大ケースは2万人弱ということになります。ただ、こんなことを言ってもあんまり意味がないので、その前提をちょっと壊せば助かるわけだし、助からない可能性のあるという先ほどの避難困難地域は、今のような対策で全部助けるということをやろうとしているわけです。
 それから、既に皆さんにいろいろと詳細な説明をやっていると思いますので、分からないことがあったら、更に聞いていただければ、何でも、担当からお答えしますし、私に聞きたかったら聞いていただいたら結構です。

質疑要旨

記者:避難困難地域が新しく見直しされたんですが、それと、国を上回る新想定ということで、この数字を見て知事が率直に思うことを聞かせていただければ。

知事:国を上回る新想定というのは、ほとんど何の意味もありません。一応計算しておいただけです。だけど、そんなことを言って「9万人が危ないですよ」なんていうのは、ちゃんとした行政をやっている人にとっては許されないことですよね。8万人か9万人かなんてのは、もともと意味があんまりありません。それよりも、被害者をゼロにするにはどうしたらいいかと考えるのが我々の仕事です。3連動地震の対策を基本的にやっておけば、巨大地震が来た時も、だいぶん役に立つというところもあるので、やっぱりその歴史的に来たことが分っているような3連動地震については、一人もむざむざ亡くなるということのないようにしておこうと思って、もう対策は全部できているんですよね。そっちの方の対策をするということが、私たちにとっても大事なことだし、県民にとっても大事なことで、何万人とかを言って喜んでるのは、あんまりマスコミにとっても賢いとは思えないということだと思います。

記者:予算も膨大になってくると思うんですが、今後、国などに働きかけをされると思うんですが。

知事:もちろん、それは今もやってますし、今後もやっていきたいと思います。例えば、いろんな制度がたくさんありまして、高台移転なんかも、防災集団移転促進事業というのがあって、何かしらの補助金をくれるんです。しかし、例えば東日本大震災の時の被災地で、もうすぽんと無くなってしまったような方々が、そこの元のとこに建てないで、別のとこへ立てようという時は、自己負担がゼロに近いぐらいの助成が受けられるんです。ところが、我々は何十年に一回ぐらい必ず来るというところで、そのままだと必ず死んでしまうというようなところがあるにも関わらず、その助成程度は大変薄いんです。助成はあるんだけど、あることを国に対しては感謝をしないといけないが、やっぱり、本当に命の危ない人のところに、「私有財産だなんだ」って言ってないで強力に助けるように、その対策が進むように助成してほしいと思います。何年も政府に言い続けているんですが、まだ、動きはありません。

記者:今回、避難困難地域とか具体的な数値が出たんですが、これを持ってやっぱり強く。

知事:もちろん、そうです。実は、もう分析はできてたので、今日は発表ですが、この間、中央防災会議の防災対策実行委員会というのがあって、津波の被害が想定される9県の知事が呼ばれて、意見陳述の機会を与えられたんです。その時に実は、発表前だったんだけど「串本の辺りがこうなりますよ」ということを、全部一枚の紙にして色をつけて「ここの人を助けるには、こうやってもらわないと本当に困る」と言って、さっきの「防災集団移転促進事業」と「東日本大震災の被災地特例」の対比を出して、命が危ない人だけは被災地並みに助けてほしいということを強く訴えました。今、移転のことばかりを申し上げましたが、例えば都会で大きいビルを建てて、ビルの上に住むというのはかなり安全なんですよね。それが、耐震がちゃんとできているビルであれば、津波が来ても下を抜けるだけですから何とかなるんです。
 ところが、和歌山県の南の方の地方部は、そんなに所得の高い人とかマンションの需要があるとか、そういうことじゃないですよね。だから、大きなビルを建てるのも簡単にはできないんですよね。もちろん県も必死になってやるつもりで、県営住宅なんかは戦略的に投入していこうと思っているんですが、そういう国の助成があったらこういう事業もどんどん進んでいくのになという気持ちはありますね。例えば、和歌山市のようなところは、もう私有財産は自分でやりなさいと言って任せたらいいと思うんです。だけど本当に死んでしまうかもしれないというところは、やっぱり特例として手厚い補助があってもいいんじゃないかなと、自分の倫理感からすると思いますけどね。これからも、強く訴えていきます。

記者:今回の津波対策のお話の中で、具体的にどの方向に逃げるのかまで詳細に検討をされたお話もありましたが、改めて今回のこの津波対策において優れている点をお願いいたします。

知事:優れている点というよりも、こうでなければいけないと思ってる点と思っているんですが、「危ない、危ない」と言って統計で何万人死ぬぞとか、そんなことを発表するのは行政の仕事じゃないと思っています。それよりも、一人一人の人を全部助けるんだと、助けるにはどうしたらいいかと、真面目にやるというところが行政の仕事ですよね。ですから実際に例えば、道の構造や路地の構造みたいなことまで分析しておかないと山の中腹までたどり着けるかどうかというのは、全部違ってきますよね。そういうことを徹底的に少し時間をかけてやりました。そうすると次は危ないと、たどり着けないかもしれないという人に対しては、今度は対策の方で「こうやったら助かりますよ」ということをちゃんと明示しないと、「あなたはもう見捨てました」というのと同じですもんね。

 それは、また、行政のやることじゃないでしょう。ですからちゃんと分析をして、危ないところを詳細に抽出して、その危ないところを危なくないようにするにはどうしたらいいかということを考えて、市町村と打ち合わせをして「10年間でやります」と言って、県民の方に発表したというのが真面目にやったとこですかね。

記者:津波対策についてなんですが、津波避難困難地域の設定も住民側が5分後に避難をするということで、住民側の努力も求めるというかそういう高いハードルになっているかと思うんですが、その辺、知事から住民の皆さんに「こういうところをこうして欲しい」とメッセージというか、そういうのがあればお願いします。

知事:5分後というのは、地震がゆっさゆっさと揺れるのが、巨大地震の場合は3分間ぐらい続くだろうと、よく聞くんですよね。その時だって、逃げたらいいんですが、やっぱりなかなか揺れている時は逃げられないだろうなということですよね。それで念のため落ち着いて「さあ、逃げよう」と思った時だから5分ぐらいになるというふうに想定しました。それから、歩くスピードですが、すごいゆっくりしてますよね。だけどこれはお年寄りの人なんかも、このぐらいのスピードでないと動けないよねと、例えば、我々だと1時間で4、5キロ行けますよね。だけど、しかも身の危険があるわけですから、少し走ったりするともっと行けますよね。だけど、そんなふうに全ての人に期待するのは無理だから、念のために、こういうふうにして考えているわけです。これでいうと、5分間動かなくて、そこからスピードは1.8キロのスピードですね。
 この計算になるんですが、実際の時は、そのぐらいのスピードで考えておかないと計算違いをするという考え方なんです。だから、本当はもっと早く逃げられる人もいると思います。ですから、とにかく方向はもう決まっているんだから、できるだけ早く行った方がいいんですから。まず、起こったら逃げるようにしましょうと。後片付けとかそういうのはもういいから、とにかく逃げるようにしましょうということですよね。それからもう一つは、逃げる前に家が壊れて挟まったり、圧死したりしたら話にならないんですよね。ですから、耐震だけはちゃんとしておきましょうねと。それは県の補助金とかがありますので、それを使っていただいて、とにかくぺちゃんこにならないでちょっと傾きましたと。でも這い出すことができましたというような状態には、少なくともしてもらわないと、助かる命も助けられませんね。その二つを考えておいてもらいたいと思います。
 それから、対策の中では、避難ビルの指定とかがいろいろと行われていきます。それから場合によっては、ここに県営住宅を建てるとか市営住宅を建てるとか、本格的な避難ビルも建っていったりするかもしれない。それから今考えてる対策以上に、集団移転しようかというようなこともあり得るかもしれない。

 そういう時には是非、積極的に協力していただきたいと思います。そういういろんな対策について、多くの人が「もういいっ」って言ったら、本当に逃げたい、助かりたいと思う人も巻き添えになる可能性がありますもんね。ですからそういう点では、ちゃんと考えていますから、協力してくださいと申し上げたいと思いますね。

記者:冒頭でもお話をいただいたと思うんですが、この想定を出す前提として和歌山県には、どういう特徴があるからこの想定を出したというところと、この想定自体には住民にとってどういう意味があるかというところを、もう一度お願いできたらと思うんですが。

知事:まず、我々も計算はしましたが、8万人死ぬぞとか、9万人死ぬぞとか、10何万人死ぬぞとか言っているようなところは、いっぱいありますよね。あんなのは、住民にとっては何一つ役に立ちませんね。住民にとって役に立つことは何かというと、自分はどういう状況にあるかということをちゃんと分かり、そして自分も努力をするけれども、どうしようもないところは、公共が中心になって助けるようにしてほしいというのが住民にとっては大事なことですよね。我々は、一人一人の県民の命を全部預かっているわけだから、そういうことを一人一人について、そういうことをちゃんと分かっていただいて、対策もこうしますからと言って、申し上げて、やる責務があると思うんです。そういう当たり前の責務を、随分と苦労がありますが、我々は全部やりましたということです。ただ、計画できただけですからね。完成までは、この3連動地震だけでも、やっぱり、いろいろと全部いれると10年はかかります。だから、そういうのをできるだけ早く完成するように、みんなで協力をしてやってきましょうということだと思います。

記者:和歌山県自体が地震に対してはどういう特徴があるかっていうのは。

知事:それは、震源域が近いのが最大の問題ですね。東日本大震災場合は、どこで起こったというのは、もういろんな報道がありますよね。
 あれで見ると、陸地からかなり遠いところで日本海溝があって、そこに津波が来た。しかも並行に来てますよね。30分ぐらいで、第一波が到達してそれが何波も来てるということになりましたね。だから、あれで言えば30分は余裕があったんですよね。ここまで来るものかと思っているから、逃げなかった人なんかが、すごい被害にあって犠牲者がいっぱい出ましたが、あれが来るぞと分かっていたらみんなが30分でだいぶ逃げられたと思いますね。ところが和歌山県は、例えば和歌山市のような北にあるところと、半島の先で南に突き出してるところありますね、その半島の先のすぐ先に南海トラフの海溝があるんですね。そこに沈み込みが起こるから、そこでバリッといくと実はその目の前で地震の発生源があり津波もそこから来るので、あっという間に到着してしまうという嫌なところがあるんですね。だからこれが和歌山県にとっての一番嫌なところで、これを克服するにはこういうやり方しかないというのが我々の考え方です。もっと余裕のあるところで、例えば和歌山市なんかを考えたら、これはもう一時間近く余裕はあるんですよね。そうすると、別にこんな地域の改造を考えなくても、どこまで来るか分からないけども命だけは助かろうと思ったら、一時間の間に例えば和歌山城とか高いビルの上や山の上とか、そういうとこにみんなが逃げてしまえば全然セーフなんですよね。それに逃げ遅れたり家が潰れたりするとまずいですが。南の端の方はすぐ来るというこの自然条件からすると、最大の弱点がある。その弱点を克服するために我々は努力をして、これからも続けていくということです。

記者:平成20年4月に出された対策プログラムの中において、東海・東南海・南海地震など大規模地震災害による死者を今後10年間で半減するとありました。今回は死者をゼロにするということで、更に踏み込んだ内容、対策を進めていくんだと強い気持ちがある。

知事:そう考えていただいていいと思います。ただ想定すべき条件は、実は東日本大震災を我々が経験して知見も上がっているので、もっと激しい仮定なんですよね。あの時の仮定の方が3連動地震しかやっていないし、「このぐらいだな」と思っていたのが「いや、もっとすごいぞ」というようなことだし、もっと詳細に知られたし。前の時はこの避難困難地域をゾーンで考えて、そのゾーンを小さくしていったら何とかなるだろうと。あるいは無くしていけば何とかなるだろうと考えたわけです。だから、例えば避難困難地域の真ん中に避難タワーを建てたら、それはその地域が避難困難地域でなくなるというぐらいの精度でやっていたわけです。今度は、例えば、そのタワーまでたどり着くか、タワーがもつかとかですね。もっと詳細に、例えばタワーが近くにあっても、そのタワーまで家が建て込んでいて足りないというところがあるでしょう。前はゾーニングで「このぐらいで行けるんじゃないか」というぐらいの感じだったんです。そういうのはタワーまでたどり着かないとなったら、もう一基建てないといけないことになっていきますよね。そういう各戸のそれぞれの家からして大丈夫かということを徹底的に調べて、今度はその人たちも助かるにはどうしたらいいかということの対策の方も、市町と一緒になって考えたということです。これも詳細に考えた。

記者:例えば、今後十年間にまた国の想定とか、また新しい想定が出てきた場合はこれもまた変わっていくんでしょうか。

知事:あんまり意味はないと思います。可能性の質問としてはあり得る質問だと思うんだけど、地質学のいろはがひっくり返らなければ、これ以上厳しい想定が出るはずがないと思います。ですからどちらかというと、より現実的に巨大地震の想定をしたけども、「あれ、ちょっとやりすぎたかな」というような話はあるかも知れません。だけど、今の予想で考えると、対策はいらないというふうにはならないから、そんなに影響はないんじゃないでしょうか。

記者:最後に大胆な質問で恐縮なんですが、この新しい対策によって完全に逃げ切ることはできますか。

知事:この計画どおり全部できたらできますよ。だけど、その前に地震が来たらどうしようと、いつもドキドキしますよね。それから、例えば住民の方が耐震をやっておかないといけないんだけど「面倒くさい」と言ってやらなくて足挟まれて、実は逃げられるはずだったのが「あれ、いない」と、逃げてこなかったというふうになっちゃったら困りますよね。ですから、そういうことにならないように、我々も全部助けるような計画を立て、それを実行するんだけど、住民の方もそれに合わせて、いつも自分を助けるためには「この方向でこうやって」と言って、今考えているようなやり方で全部やってほしいと思いますね。そしたら助かります。助けられない状態で「あなたは死ぬかもしれない」と言ってほったらかしというのは、ちょっと耐えられない。だから、ちょっと耐えられないんだけど、巨大地震の時はまだ十分できていないから、今のところ心配なんです。だけど、より難しいし、より広範になるので、そこはこれから精力的に更に対策を考えていくということになると思います。

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