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県庁 仕事百景

職員の頑張りやエピソード、苦労話を通じて県の様々な仕事を紹介します。

「新宮港を地球深部探査船『ちきゅう』の支援拠点港湾に」(メタンハイドレートプロジェクトチーム)

和歌山県知事 仁坂 吉伸

 皆さん、「ちきゅう」という船をご存知でしょうか。世界一の掘削能力(7000m)を誇る地球深部探査船「ちきゅう」は、今年(2007年)9月から新宮市沖で、巨大地震発生メカニズムの究明や地下生物圏の探査などを目的とした科学掘削を開始しました。「ちきゅう」は掘削作業開始に先立って新宮港に寄港し、その雄姿を披露してくれました。船底から掘削やぐらの先端までの高さは130m、30階建てのビルくらいの高さになり、近くで見上げていると首が痛くなるほどです。夜には、たくさんの照明が船体を彩り、まるでイルミネーション付き超高層ビル出現。「ちきゅう」が着岸した新宮港第3号岸壁は地元の皆さんの隠れたナイトスポットになっていたようです。
 「ちきゅう」は今後、数年間にわたり、新宮市沖で作業を続けることになりますが、掘削作業中は大型台風などによる余程の暴風が襲ってこない限り、調査海域に停泊を続けます。そのため、燃料、食料及び掘削機材等はサプライボートと呼ばれる補給船を使い支援拠点港湾から搬送されます。その支援拠点港湾に本県の新宮港が選定されました。地域経済の活性化や港の知名度アップなど、その波及効果は大きなものがありますが、何と言っても、人類の未来を拓く最先端の調査・研究を、和歌山県の新宮港が支えているというのは、本当に喜ばしいことです。
 今回は、新宮港が「ちきゅう」の支援拠点港湾に選定されるまでのエピソードを紹介します。

 県庁では、複雑多様化する行政需要に迅速かつ弾力的に即応するため、部局横断型のプロジェクトチームをいくつか設置していますが、そのうちの一つに「メタンハイドレートプロジェクトチーム」(以下、「PT」という。)があります。
 メタンハイドレートとは、天然ガスの主成分であるメタンと水からなるシャーベット状の固形ガスで、水深1000m~2000mの海底に層状に存在します。日本近海の埋蔵量は国内の天然ガスの年間使用量のおよそ100年分に相当すると試算され、将来のエネルギーと期待されています。熊野灘(新宮市沖)でもその存在が確認され、これまでに国による基礎調査も行われています。PTでは、国や研究開発機関の動向を探りながら、メタンハイドレート開発計画とリンクした和歌山県の地域振興策を研究しています。
 メンバーは情報収集のため、色々なコネクションを活用しましたが、この時活用されたのが大学在席時の研究室ルート。県庁の職員は入庁時、一般行政職(いわゆる事務屋)や土木、建築、電気等の職種に分けて採用されますが、一般行政職の中にも理科系の人間がたくさんいます。PTメンバーの中にも理学部で地質学を専攻した事務屋がいました。情報収集を続ける中で、大学時代の地質関係の知り合いから「『ちきゅう』という船があり、マントルをぶち抜くような大規模な地質調査を行う」という情報を得ました。彼は「メタンハイドレート開発にも大型船が使用されるから、大型船を和歌山に誘致するためにはどのようなインセンティブが必要なのか、などの情報も得た方が良いだろう」と思い、「ちきゅう」の運航を行っている独立行政法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)を訪問することにしました。
 そこで巡り会ったのが、「ちきゅう」の運航管理を行うセクションの担当課長さん。この方は以前、有人潜水調査船「しんかい」のパイロットをやっていたそうですが、話を聞いていると地質調査の関係者で共通の知人がいることもわかり、話が弾んだようです。おまけに、帰る間際には、地質学関係者の間では神様と言われる、JAMSTECの役員にも紹介され、感激したとのこと。実はこの時、他県も「ちきゅう」誘致に動いているとの情報もつかんでいたのです。
 県庁に戻ってから、彼はPTメンバーと手分けし、JAMSTECが欲しがっている情報(港湾機能、サービス施設、交通アクセス、近傍の宿泊施設や医療機関等)を、競争相手より早く提供し、和歌山(新宮港)に好印象を持ってもらえるよう奔走しました。
 私が知事に着任して間もなく、「ちきゅう」の話を聞き、「これは和歌山にとって良い話だ。絶対新宮港に誘致しよう」と私自身のコネクションも活用しながら、関係の所にお願いに回りました。
 結果的に、新宮港が選ばれたのですが、PTの皆さんの地道な、そして機動力のある活動が支えになったことは言うまでもありません。
 後日、次のような話をPTメンバーから聞かされました。「JAMSTECが和歌山(新宮港)を支援拠点にすることについては、当初から前向きであったと思います。それは、これまでに別の船で和歌山沖の調査を行った際、和歌山の漁師さん達が非常に協力的だったからと聞いています。調査の際に漁の範囲が制限されたりするため、他の地域では文句を言われることが多いが、和歌山の人たちは、『自分達には津波というのが生死に関わってくる。巨大地震の仕組み解明につながるのであれば協力する。』と言い、漁を行いたい場所が調査海域であることを知ると、快く別の場所で漁を行ってくれたそうです。」

 PTのメンバーは今、来年2月に新宮港で行われる「ちきゅう」の一般公開に向け、準備を進めています。キーワードは、「和歌山の次代を担う子ども達への『ちきゅう』からのメッセージ」。「ちきゅう」に実際に触れてもらうことにより、科学へのあこがれや巨大地震への理解を深めるきっかけになれば幸いです。一般公開までに、県内のいくつかの学校へは「ちきゅう」に乗り組んだ研究者による出前講座も予定しています。一般公開に行って、単に「大きい船だな~」という感想に終わるのでなく、その子の人生観が変わるような大きなインパクトが与えられれば良いですね。とは言っても、大人の人も是非「ちきゅう」を見に来てくださいね。


新宮港入港中の地球深部探査船「ちきゅう」 照明に彩られた「ちきゅう」
(新宮港入港中の地球深部探査船「ちきゅう」) (照明に彩られた「ちきゅう」)

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