和歌山の経済の再建を目指して
1.和歌山経済と産業の特徴(資料1)
和歌山県は、昭和50年代までは繊維産業を中心に地場産業が盛んであり、鉄鋼、石油、化学、製紙等の基礎素材型の産業も好調で、県民の所得も高く、県経済の発展を支えてきました。
この産業構造は、その後30年間大きな変化がありません。国内産業の比重が、知識集約産業、加工組み立て産業などに移行して、日本全体が大きく発展するなか、当県では新規企業の立地が進まず、いくつかの、新進の企業が発展を遂げたものの、国際競争力を喪失して縮小する既存産業も多く、経済的にも長く低迷してきました。このことは、言い換えれば働き場所が足りないということで、若い人たちの県外流出が進み、人口もずいぶん減りつつあります。
当県の経済が好調であった時代は、基幹的交通手段である鉄道は紀伊半島を
一周し、紀の川沿いに走り、沿岸部の都市から奥地へ向かう路線も整備されていました。しかし、高速道路の整備が全国的に進展する中で、当県におけるその整備は後回しにされ、その結果、企業誘致、観光客誘致等の面で、不利な立場に立ってまいりましたことも、経済的低迷の一因になっているものと思われます。
一方、当県には「オンリーワン」の技術を持つ中小企業がたくさん生まれつつあります。また、農林水産業では、日本一の生産を誇る産品も多数あります。さらに、紀伊半島全域にまたがる「紀伊山地の霊場と参詣道」の世界遺産を始め、美しい海岸と数々の清流など、観光資源に恵まれているところ大きなものがあると自覚しています。
このため、積年の停滞を打ち破り、恵まれた資源を生かして、もう一度経済の再活性化を図るべく、県民一同努力を開始したところです。
2.企業誘致と県内企業の育成(資料2)
新規企業の立地が進まなかった当県ではありますが、県民の企業誘致に対する気持ちも随分積極的になったことも受けまして、ここ5年ぐらい、県が中心になって熱心な企業誘致に取り組んでいます。地価、賃金等の基礎条件は改善されていますが、特に交通インフラの未整備と、過去誘致に熱心でなかった時代に流布した産業界における「評判」などに悩まされながら、他に遜色のない優遇策と県・地元市町村一体となった熱意で、積年の遅れを取り返そうと、頑張っています。特に気を遣っているところは、企業立地に伴う諸規制・手続きを、県庁を挙げて迅速に行うことです。諸規制の実質面を省略することはいたしませんが、手続き面は努力次第で企業も驚くほどスピードアップができ、好評を博しています。
また、新規立地企業に限らず、県内で事業展開をしている産業及び企業には、県庁の職員を担当者として指名し、日常的にも様々な情報交換を行っています。このような結果、色々な制約を抱えつつも、ここ3年でそれ以前の20年間に匹敵するような新規投資を実現することができました。
一方、県内企業を育成することも、さらに重要であります。昔から、「初めは和歌山」とでも言うべき発明や工夫は、当県で多くなされましたが、今でもそうして企業を興した中堅・中小企業は多く存します。新規起業も含め、そのような企業をさらに育てるべく、第1に国の資源を利用しながら、研究開発プロジェクトを多く起こして技術革新による企業成長を図り、第2に販路を世界市場も含め、広く開拓する積極的企業経営を支援するという政策を強化しつつあります。
とりわけ、技術開発の点では、当県における発明協会の活動が60周年を迎えるのを祝して行われました「発明の祭典in和歌山」において、ご来賓の常陸宮同妃両殿下にも、優れた企業の取組や次世代を担う子どもたちの技術教育の一端をご覧いただきました。
昨年から急激に進みました不況の中で、当県の産業も大変に苦しんでいますが、その中でも、まだ雇用を増やそうという企業もあり、相対的には何とか健闘しているというのが現状です。
3.農林水産業の再活性化(資料3)
和歌山は自然に恵まれ、現在もみかん、かき、梅、桃など全国2位の果樹王国で、また、クエ、生マグロなど水産物にも恵まれています。当県を訪問される人はその味を評価してくれますが、丹精を込めた生産活動に比して、マーケティングに力を入れてきたとはいえません。そこで、特に県の振興策としては、海外市場を含む県外への販売促進に力を入れ始めました。中でも、世界中で一段と重要性を増している内外の大規模見本市に出展し、和歌山県物産の露出度を高めようとしております。アジア一の食品見本市である幕張の「FOODEX」に、他県を圧する形で出展しているのもその一例です。
一方、今年度からは、もう一度県内各地の有望な食品等の生産のてこ入れも行い、生産から販売まで一貫した振興策を地域ぐるみで、地域の振興策を兼ねて行おうという「わがまち元気プロジェクト」などの地域おこしプロジェクトを開始し、各地域の潜在的な資源の掘り起こしを着々と行っているところであります。
このような努力を県内各地の志ある人々がこぞって開始することによって、全体として和歌山の農林水産業が、もう一度力強さをとり戻すことを狙っています。
4.世界遺産を活かした戦略的観光の展開(資料4)
当県には、世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」、ラムサール条約湿地に登録された串本の海、山・川・海にある多数のすばらしい温泉、中国以外では世界最多のパンダ、全国で6番目に多い国宝・重要文化財など、枚挙にいとまのないほどの観光資源があります。また、1000年以上にわたり、高野や熊野を訪れる人々を分け隔てなく受け入れてきた、おもてなしの伝統もあります。
しかし、交通ネットワークから取り残されたこともさることながら、積極的なPRやてこ入れに遅れたことから、全国や世界の認知度は低く、ここ数十年停滞を続けてきました。そこで、毎年「観光振興アクションプログラム」を定め、進んで他の地域に当県の魅力をアピールしていこうということにしました。平成21年度は特に、世界遺産登録5周年記念事業として、高野、熊野の魅力を全世界に発信すべく努力しております。
また、アジア各国に加えて、欧米も含めた海外からの誘客活動、農作業体験、熊野古道ウォークなど、300余の体験メニューを持つ「ほんまもん体験」(体験型観光)や、体験を中心とする修学旅行誘致やスポーツ合宿誘致など、当県ならではの特色ある観光誘致に取り組んでいます。その効果も徐々に出始め、最近は「ミシュランガイド」で高野山が三つ星、熊野が二つ星をいただけるようになりました。
平成23年春には田辺市で第62回全国植樹祭を、平成27年には県下各地域で第70回国民体育大会を開催する予定であり、和歌山ならではの「おもてなしの心」いっぱいの大会とすべく取組を進めております。
5.県民に希望と安心を
「恒産なきものは恒心なし」といわれるように、経済的ゆとりがあって始めて民生の安定も保てると感じております。世界的な金融危機から1年有余が経過し、我が国の経済情勢は改善の兆しはありますが、当県のように中小企業が多い地域にありましては、まだまだ、懸念要因が拭いきれません。当県には、構造的には高速道路ネットワークの不備など、まだまだ県民の前向きの努力の足かせとなる要因もあり、このような基礎条件の整備にも、県としては努力しなければなりません。
しかしながら、当県は、明治の時代、産業革命をいち早く我が物とし、戦後荒廃からもいち早く経済を再興した人間力があると信じます。今や、長年の停滞を脱却すべく、県の政策にすべての県民が、和してくれるものと信じています。
紀伊半島を一周する高速道路などの基盤整備や、さまざまな東南海・南海地震対策、あるいは高潔な人材を育成するための教育・青少年対策など、このような厳しい時にこそ、将来を見据えた施策を、誠実に、着実に取り組んでまいります。







