知事からのメッセージ 平成23年5月

知事からのメッセージを紹介します。

平成23年5月のメッセージ

平成23年5月

社会実験

 社会実験という言葉が大はやりです。現政権が色々と新しい政策を行う際にこの言葉を使い、マスコミがそれをどっと流したもので、現在一種の流行語になっています。例えば、高速道路の料金ですが、どこかの路線だけ、つまみ食いで無料化がなされています。本来公平の見地からは全国で一律の合理的な基準に従って決められるべきものが、社会実験ということで、あっという間に正当化されてしまいます。本来実験という考えは、自然科学のものです。私達は理科の実験を色々習いました。これは物質や機械器具を使って行います。医学になると、これに加えて動物などで実験します。その過程で動物が苦痛を感じたり、死んだりしますが、人類の幸せのために犠牲になってもらっています。そうして、よほど安全だと確かめた上で治験と称して、人間に試してみるのです。
 私は、人間生活に実験を軽々しく行うことは反対です。その意味で、社会実験だと言って十分な結果予測もしないで政策を行うのは神をも恐れぬ所業だと思います。間違った政策を実験して影響を受けるのは生身の人間です。無料化がなされた高速道路で渋滞が発生し、そこからはずれたところで観光客ががた減りになる。そうしておいて、渋滞が起こったからじゃあやめたでは、人間は振り回されるだけです。人権とかプライバシーとか人間を軽く扱わないという流れは強固だと思っていたら、ちょっと格好いいスローガンが唱えられ、マスコミがあおったら、人々がそれを無批判に受け入れ生身の人間や地域を社会実験の名のもとに振り回す。恐ろしいことだと思います。
 政治や行政の世界では果断に実施しなければならないことは一杯あります。決断力のないどこかの政治家のように、生ずる影響を恐れて責任回避のため、やたらとぐずぐずしているというのも問題ですが、生身の人間を相手にする限り、その政策でどういう影響がどう出るか、そのために打つ手として他に何をしなければいけないか、ありとあらゆることを考えに考えぬいた上で(しかもそれを迅速に行った上で)責任を持って実施することが正しいことだと思います。

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