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知事からのメッセージ

知事からのメッセージを紹介します。

平成21年10月のメッセージ

平成21年10月

世界遺産登録5周年

 今年は「紀伊山地の霊場と参詣道」が世界遺産に登録されてから5周年に当たります。この世界遺産登録のおかげで、わが和歌山県の高野、熊野は世界中から注目されるようになり、訪れる人が大いに増えました。ありがたいことだと思います。県としても、この世界遺産の意義をさらに世に問うために、一連のシンポジウム、色々な趣向をこらした「体験ウオーク」、県立近代美術館の記念展示などを行っています。ぜひ皆さん参加してください。(予定は県世界遺産センターのホームページを見てください。)
 そんなシンポジウムの一つとして県の職員組合の世界遺産シンポジウムに参加しました。「走れコウタロー」で有名な山本コウタロー氏が基調講演をしてくれましたが、世界遺産の保全こそが我々の使命で、保全を忘れた観光開発は、世界遺産の意義をなくすというものでした。私も同感です。世界遺産を楽しみに来てくださる観光客は、下手な開発行為で世界遺産の持っている雰囲気を壊されたら二度と来てくれません。昔からの高野、熊野の素晴らしさを保全してこそ、観光という面でも報いられるものと思います。世界遺産の指定のおかげで、多くの人に高野、熊野が注目されるようになりました。そうすると、各人がその機に乗じて様々な行動に出始めます。例えば「語り部」がたくさん誕生するなどいい話も多くありますが、ちょっと首をかしげることも起こります。熊野古道を歩きに来る人によく見てもらうように、家の壁をよく目立つピンク色にでもして、飾ってみようかと考える人もいるかもしれません。要所に、東京や大阪の繁華街にあるような外国風のしゃれた喫茶店を作ろうとする人が出てくるかもしれません。これらは一つひとつは善意から出たことかもしれませんが、世界遺産となった熊野古道の全体の雰囲気にそぐわないものでしょう。こういうものを許すと、世界遺産のイメージを大事にして来てくれる大勢の方々に「もう熊野は俗化した」などと思わせてしまう可能性もあります。これは大変恐ろしいことです。世界遺産登録をされた奥ゆかしい古道をマウンテンバイクで走ったり、山岳マラソンレースのルートにしたりするというのも、やや似たような行為でしょうか。全体のイメージを壊さないように慎重に考えて利用するという態度が必要でしょう。それが保全ということだと思います。
 この考えに沿って、私は就任後直ちに全県的に景観条例を作ることを指示し、特に熊野古道、高野山については、厳しい保全ルールを作ろうと唱えてきました。世界遺産に関して、それを審査するICOMOS(国際記念物遺跡会議)の重要人物である西村幸夫東京大学大学院教授に委員長をお願いして、県内外の碩学からなる委員会で原案を作ってもらい、平成20年3月条例制定、平成20年12月この具体的な中味である景観計画制定を経て、現在は、この景観規制が施行されています。そしてもともと町の景観条例で厳しいルールを作っていた高野山と、県の景観条例下で特定景観形成地域とされた熊野古道周辺は、特別の地域として配慮されています。(我が国の法制上、中核市である和歌山市だけは、県の権限が及ばないので、空白になっています。早くよく似た制度をスピード感をもって作ってほしいものだと思います。)
 当県の持っている大自然の素晴らしさも同様です。私は数少ない仕事のない休日は和歌山の山中に出かけます。すると通るのに難渋する道路や鳥獣による被害のひどさ、増えていく休耕田など、県庁にいるとわからない県民のつらさがよくわかります。それとともに思うのは自然の美しさです。こんな美しい所は他にめったにありません。紀伊の国は木の国です。大分植林に変わってしまったとはいえ、特色のある常緑樹、落葉樹の混交した自然林も随所に残されています。植林もまた、青々とした緑とどこまでも続く紀伊山地の山並みにその姿をとどめています。こういう美しい山地は他にないのです。コンクリートの大ビルディングや街のにぎわいは、大都会にはあってもこのような山の美しさを味わえるところはめったにありません。海も美しい、川も美しい。それはまさに佐藤春夫が「空青し、山青し、海青し」と詠んだ通りであります。他にないものを大事にする、これが結局は観光や移住交流の発展にもつながると思います。自然を守るために、和歌山県は自然公園の見直しにも着手しました。もう宅地化などがすっかり進んでしまった所は、形ばかりの自然公園区域をはずすとともに、原始の森などが残っている所は、保護の水準を上げさせてもらいました。その一部は地権者の方のほとんど犠牲的行為とも言えるご了承によって実現しました。ここにあらためてお礼を申し上げます。
 このように当県は景観条例の施行、自然公園の見直しなどの一連の環境の保全政策を矢継ぎ早に実施してきました。このためには、多少の不自由を忍んでもらわないといけない方も出てきます。しかし我々の祖先が永々と守ってきたものを大事に次代に伝えること、すなわち保全が、実は我々の明日の暮らしを保証してくれるのです。

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