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知事からのメッセージ

知事からのメッセージを紹介します。

平成21年8月のメッセージ

平成21年8月

思考停止社会

 官製談合による知事逮捕という汚名を二度と着ることがないように、和歌山県の公共調達制度の大改正を行った時、検討委員会の委員長として知恵を貸してくれたのが郷原信郎教授です。その郷原さんが「思考停止社会」という著作を送ってくださいましたので、早速読んでみました。同感する所が多々ありました。
 日本の現代社会は思考停止の社会になっているというのです。時々の主流の考えに対して、皆が自分でそうかなあと考えることなく同調し、それに反対の意見を唱えたり、行き過ぎを指摘したりする人々をまるで悪者であるかのように攻撃するため、時流に迎合する動きばかりが大きくなり、結果、社会が一斉に右に振れたり、またしばらくすると左に振れたりするというのです。
 また、郷原さんは、このような動きはマスコミの報道によって増幅されるとも指摘しています。改革、偽装表示、郵政民営化、政権交代、談合防止、官僚支配・・・・私たちの周りにも、スローガンが強烈なもので、中身を考えて、でもこの点は違うんではないかなどと言いにくいものがたくさんあります。自分の頭で批判的に考えて、異論を唱えるのは勇気がいるのです。「世論」なるものに迎合して、時流に漂う方がずっと楽なのです。かくて思考停止社会ができてしまうのです。
 しかしながら、いくら時流でも、間違ったことは、いつかはその間違いが顕在化します。もっと正確に言うと、たとえ正しい目的のために考えられたことでも、それによって起こる副作用や反作用を十分検討することなく実行されてしまったら、いつか副作用や反作用が山のように押し寄せて来て、進退窮してしまうということになります。思考停止はいけません。たとえ一見良さそうなことでも、「待て待て」とその実行によって何が起こるかをよく考えて、その手を打っておけば、行き過ぎとゆれ戻しの混乱はありません。
 しかし、強い流れができて、人々が思考停止状態になり、「つべこべ言わずに一回やってみろ」という気分になった時、「ちょっと、ちょっと。こういうことも考えてみましょうよ」などと言うことは中々つらいことなのです。ともすれば、多くの人に嫌われてしまいます。流れに乗って「やってしまえ」と唱えることの方がはるかに楽だし、人気が出ることなのです。
 もっとひどいと私が思うのは、そういう思考停止によって流れができ、事態が進み、その結果、論理的には当然起こると予想された副作用、反作用が起こった時、この間まで「やれ。やれ」と言っていた評論家などが、「こんな馬鹿なことをやった当局の責任はどこにあるのか」などと正反対の世論作りをし始めることです。かくて、事態は、行き過ぎとゆれ戻しの混乱の窮みとなるのです。
 我々は、日本全体が熱に浮かされたように戦争に突き進んでしまった歴史を持っています。そして、コテンパンに負けた後は、今度は「平和、平和」と唱えることだけに熱心で、冷静にその敗因や問題点、歴史的教訓を学ぶこともなくなり、少しでも自衛力とか抑止力とか国家戦略とかを語る人々を軍国主義者だ、いやな奴だと白眼視したことはなかったでしょうか。今でも世界的発行部数を誇る日本の大新聞の昭和20年8月15日以前の論調が戦争礼賛、戦意鼓舞の一辺倒であったのに対し、8月15日以降の論調が手のひらを返すように違っていることを見ると、同じ会社、同じ人々が書いたものとは信じられません。
 私は、どんな世の中でも、どんな事態になっても、人間は思考停止だけはしてはいけないと思います。我々は常に「ほんまにそうかしら」「なぜそうなるのかなあ」「そうしたら、こっちが無茶苦茶にならないかなあ」などといつも考え、仮に自らの考えが時流とは異なったものであったとしても、是々非々で、勇気を持って発言し、行動しなければならないと考えます。それが思考停止社会の弊害を免れる唯一の道です。
 私もまた、愛する和歌山の未来のために、しんどいけれど勇気を持ってそのように行動していきたいと思います。

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