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知事からのメッセージ

知事からのメッセージを紹介します。

平成19年7月のメッセージ

平成19年7月1日

 最近、記者会見の際、コムスン問題で発言した姿が全国版のテレビに取り上げられ、大いに反響を呼び、多くの人に励ましの声と少数の人に批判の声をいただきました。皆さん御興味のおありのことと思いますので、いきさつや思うことを申し述べます。

 例のテレビや新聞に出た発言は、偶然に世に出てしまいました。当日たまたま定例記者会見があって、発表項目は主として本年の政府要望であったのですが、その後記者の方から質問があり、しゃべったことが報じられたものです。別にコムスン問題で発言してやろうと思ってやったものではありません。私の職業人としての関心は、選挙の時からずっと言っていますが、和歌山県をよくすることでありまして、個人としては思うところはありますが、和歌山県にとって大問題となるという以外は国の政策についてはどうこう言う立場にはありません。

 私は、質問に答えて三つのことを申しました。一つめは、和歌山県でも厚生労働省の指示により、ここのところコムスンの事業所を調べていて、今のところ不正は発見されていないということ。二つめは、大事なことはコムスンが事業から排除されたとき、今サービスを受けている人と従業員の人をどうするかということで、この方々のソフトランディングを考えなければならないと申しました。三つめに申し上げたのが企業の行動の問題ですが、更に尋ねられて述べたのが、例の「脱法行為は正義に反する。正義に反することは認めない云々」という発言であります。

 冒頭申し上げた少数の方の批判とは、「正義漢ぶって、今サービスを受けている人がどれほど困るか考えたことがあるか」という趣旨でした。この意見はある意味では正鵠を射ていると思います。県の行政としてやるべきはその点なのでして、先述のように私はその点を強調していますし、その時も語りましたように、コムスンが悪いからといって営業を認めなくなるのは次の免許更新期からであるので、すぐサービス受益者が困ることはありません。また、さっそく県は相談窓口を作って心配な方の相談に応じていますし、大変誠実な長寿社会推進課長以下、コムスンサービスの円満な引き継ぎのための相談をずっとやっていまして、その点は既に目途が立っているとのことです。

 さて、「脱法行為」ですが、皆さんには耳慣れぬお言葉かもしれませんが、永年行政をやってきた私には耳にたこができるほど慣れ親しんだ言葉です。森羅万象をさばく法律や制度はできるだけ客観的に物事を決しようとして文章で示すことを心がけていますが、それでも皆は書ききれません。そういうときは、役人は立法の精神や正義、情理、公共の福祉といった一般的徳目から一生懸命考えて法律を運用しているわけです。もちろん、それで行政と民間の間で争いが生じたときは、紛争になって裁判所が最終的な有権解釈をするわけですが、その前に、法律を執行する人がいつも上記を頭に置いて対処するわけです。民間の企業の中には、不都合な規制を逃れようと色々悪あがきをして法の目をくぐり抜けようとする輩もいます。これを脱法行為といいます。今度のコムスンのように、処分対象となった会社の営業をグループ内の別の会社に譲渡して処分を逃れようとすることなどはその典型的な例と考えます。こういうとき、役人はどうするか。通常は絶対に許しません。それは許していたら、後から後からいい加減な業者が出てきて法秩序はグチャグチャになります。私はそういう世界を知っている人間ですから、以上のようなことをすぐ思いました。しかし、県の担当に「厚生労働省からは何と言ってきている?」と聞いた時、答えは「担当の人は法律上適法になってしまったので、手出しができないと言っています」というものでした。それで私は怒ったわけです。そんなはずはないと。その怒りの気持ちを持ちつつ記者会見に臨んだもので、その部分の発言は少しきつくなりました。しかし、私が「そんなはずはない」と思ったように、その後の厚生労働省の幹部の方々の対応は私の思っていた、そして発言したとおりのものになりました。そして、その後のコムスンの譲渡撤回、福祉事業からの撤退という流れになっていきます。あたり前の方向に戻ったわけです。報道されたのは私の発言の一部でしたが、それをきっかけにして世の中が正しい方向に流れ始めたのでよかったと思っています。

 考えてみますと、あの発言には二つの意味で偶然がありました。一つは、あの日たまたま記者会見があったということ。二つめは、私がずっと霞が関で脱法行為だ、法の正義だ、国家の利益だ、国民のためだというような「青臭い」世界に育ち、こういうことの感覚があったということです。県の役人は、特に法解釈や法の運用については国の役人に弱いですから、私が仮にそういう経験がない知事で、「あの件は何と言ったらよいか」と県庁職員に相談していたら、「法律的には適法だが、消費者の利益をよく考えてムニャムニャ」というお決まりの想定問答どおりの発言をしていたかもしれません。
 私は、その日全国版で私の発言が報じられていますよということを聞いて、私の元の役所、経済産業省の何人かの歴代次官や局長の顔を思い浮かべて、彼らだと何と言うかなと考えてみましたが、私の答えは、「まちがいなく全員ああ言われただろうな」というものでした。

 公務員は国の役人、県の役人を問わず、最近とみに評判が悪い感があります。汚職はするし、頭は固いし、働かないし、いばっているし・・・・・ということであろうかと思います。一部の人はそのとおりであって、そういう人は指弾されるべきであると思います。しかし、考えてみると公務員ほど批判されやすい人々はいないと思います。税金で支えられているわけですから、それもあたり前でしょう。それに、特に毎日自分のビジネス、職業で倒産、失業、減収、賃下げといったリスクを抱えておられる民間の人々にとっては、そういうリスクのない公務員に対するやっかみないし怒りに近い気持ちがあるのかもしれません。この気持ちもまたよく分かります。我が和歌山県庁としては、一同このような状況をよく理解して、身をひきしめて職務に当たらなければなりません。

 しかしながら、よくよく見ておりますと、多くの県庁職員はがんばっていると思います。私の指示には、その結果随分多忙になったと思いますが、よく応えてくれているし、私の知らないところで自分で考えてがんばってくれている人々も多くいます。特に後者は、この「ようこそ知事室へ」の「県庁仕事百景」の欄で気がついたら紹介することにしています。今掲載している以外にももっともっとあるはずです。

 国家公務員は上級職で入っても、人生のほとんどは安月給です。入省時のサラリーは大部分の県の職員よりも低かったと思います。帰宅はほとんど午前様でした。しかし、当時はよくほめてもらいました。「御苦労さんですね、毎晩。そうやってどうぞ日本を引っ張って支えていって下さい」などと民間の人に言われて、またがんばるわけです。実際は、自分たちが引っ張ったり支えたりしているところは日本経済の中でもごく少しで、民間のエネルギーで日本経済がぐいぐい進んでいるのだということも分かっているのですが、「豚もおだてりゃ木に登る」という諺どおりに張り切るわけであります。しかし、最近の官僚バッシングはどうでしょう。確かに、たたかれる要素もいっぱいあるとは思いますが、公務員が必死で支えているところがなくなれば日本はどうなるのでしょう。政治家もマスコミも財界も、うまくいかないのは皆こいつらのせいだと言って、官僚バッシングをするのですが、たたきやすいものをたたいているだけでは、日本全体も地方もよくなりません。全部なくすというわけにもいかないのなら、少しは励ましてあげないと公務員の志気が落ちます。複雑で高度な国家戦略を担えるような人材が一人も公務員にならないなどということになると、国の行く末も県の行く末も心配です。

 公務員が張り切って働くためには、こうして皆さんが叱咤激励、たまには批判、たまには励ましをしてくださることも大事ですが、私は職務の与え方も大事であると思っています。第一には、暇な所と忙しい所があまりにもありすぎると、片方はサボり片方は腐って双方志気が落ちます。和歌山県はそういう点をこれから改善していくべく、私ももちろん投書など県民の声や県庁の内部意見に直接目を通して、その発見、是正に努力していますが、7月1日からの監察査察監の就任を得て、全組織の監察査察をしていく方針です。それで、無駄な仕事、人が余っている所はどんどん整理していきます。第二は、職員一人一人や課、局、部などの組織のミッションの与え方です。どうも県の仕事の分掌は現在の特定の仕事をこなすことを中心にできているような気がします。特定の予算の執行とか、現存の制度の運用とかであります。しかし考えてみると、何故そういう制度ができているかというと、それぞれに理由があるのです。こうすれば県民のためになると考えたからこそ、その制度があるのです。とすれば、県民のためならばその制度にないことで必要なことがあれば、制度を変えるとか別に必要だと思ったことを企画するとか、そこまで行かなくても、本当に何が困っているのかということを親身になって聞いてあげるとか、いろいろ必要なことがあるでしょう。それに応える制度はありませんで終わっていいということではないでしょう。私はそう思いましたので、前にも言いましたように県庁としての政策を毎年一回は根本から考える「新政策」プロセスを導入しました。また、普段から県庁内では「県民のために考えると・・・・・」という議論を常にやるようになりましたので、段々県庁の職員ももっと積極的にいろいろやったり考えたりしてくれていると信じています。また、来年度からは事務分掌の方法を、今までのような「現在の仕事」と「権限」で画していく方法から、「任務」で決めて、それを定めていく方法に変えようと思っています。この領域で県民の幸せを守るためには、あらゆることを考えて、企画して、実行するのがあなたの課や班の仕事ですからどうぞがんばってください、そういうことは私の権限ではありませんなどということは言えなくなりました、といったことです。

 県庁には、もともと優秀な人が選ばれて入っています。その人々のエネルギーが解放されたら、きっと県民の方々は喜んでくださると思います。私は楽しみです。

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