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寄稿・提言・訓辞・挨拶集

新聞・雑誌等への投稿や、各種行事での講演・挨拶、政府への政策提言等を通じて、知事の考え方や政策を紹介します。

平成23年度医事行政懇談会第2部講演~TPP(環太平洋経済連携協定)について~

【はじめに】

 TPP については、世間でいろいろ言われているので、名前だけはよく知られていますが、その本質には触れられていません。私は、県議会で一番Sensational な言葉で「退くも地獄、行くも地獄」と発言しています。しかし、これだけではなぜそうなるのかわからないと思います。そこで、過去からの貿易市場の体系の話をして、なぜこういうことを言うのか、ご理解いただきたいと思います。
 WTO の前身に、GATT がありました。貿易には関税などいろいろな障壁がありますが、どの国に何を輸出しようと、どの国から輸入しようと、関税など同じ条件で貿易できるというのが常識です。ところが、この常識は、第2次世界大戦後ようやくできたものであって、歴史的には稀有なことです。

【戦前の貿易市場】

 今から100 年前の1911 年は、日本が関税自主権を回復した年です。当時の政府も輸出入に対して関税をかけていました。初期は、財政収入にするために輸出に関税をかけることが多くありました。しかし、 外国から安い輸入品が入ると国内産業がダメになってしまうことから、国内産業保護のために輸入に関税をかけることを考えるようになりました。逆に言うと、そうさせないことが欧米列強の考えであり、江戸時代に黒船がやってきて日本に要求したことは、関税を自由にかけさせないことでした。江戸幕府はその要求をのみました。関税自主権というのは、関税賦課を自国が勝手にできるようにするということです。
 当時、関税自主権がある国は、例えば他の国には20%の関税のところを中国にだけ200%の関税をかけるということもできました。しかし、仮に日本がイギリスなどの国には関税20%としていたところ、その後、アメリカが日本を脅かしてきたため、日本はアメリカだけ関税を20%から10%に下げたとします。この場合、イギリスなどの国は損をしてしまいます。ここで考えられたのが、最恵国待遇という手段です。最恵国待遇とは、例えば、日本とイギリスで関税を20%と決めたときに最恵国待遇の条項を入れておけば、その後、日本がアメリカと関税10%にすると、自動的にイギリスにも関税を10%にするというものです。この最恵国待遇の入った二国間協定を結ぶことで、すなわちそういう通商航海条約の積み重ねによって戦前の貿易市場ができました。しかし、第二次世界大戦の直前には、こういう通商航海条約の破棄によって、多くの国々との自由貿易が否定され、お仲間の国の間だけで有利な条件で貿易をしようというブロック経済が起こって、その中ではブロック外の国に対して、禁輸などが自由にできるようになりました。そうして、石油の対日禁輸がなされたため、日本はある意味自暴自棄になって真珠湾攻撃に向かったというわけです。

【戦後のGATT 体制】

 戦争に勝ったアメリカやイギリスは、ブロック経済によって戦争まで追い詰めてはいけないと思い、多角的貿易協定をつくらなければならないと考えました。これが、戦後アメリカ主導でつくられたGATT(1947)です。戦前は二国間で最恵国待遇を交渉していたと言いましたが、GATT ではこれをはじめから多国間の全体交渉で行いました。例えば、日本が時計の関税を10%にするとGATT で言うと、最初からGATT に加盟しているすべての国に対して10%の関税にしなければなりません。譲許税率というのですが、関税を10%にすると約束すれば、これを下回るのはよいが、上回ってはいけません。すなわち、これ以上の保護貿易はしませんということを決めます。また、それはどの国にも無差別でなければなりません。加盟国が皆こういう約束をします。これを多角的無差別体制といいます。
 日本は、このGATT 体制でものすごく得をしました。日本は、小国で軍事力もなく、当初は経済力も弱かったのですが、この秩序があったので、自身の競争力を高めれば、世界のどこへでも安心してモノを売ることができました。石油もお金さえ出せば買えるし、どの国へも輸出できますし、相手国から日本だけ差別をうけることもありません。その結果、日本の産業は大きく伸び、高度経済成長を果たしました。ただ、敵国条項という例外があって、今から20 年ほど前まで、一部の品目に対日差別がありました。私がイタリアにいった時には、まだ残っていて、日本からだけ自動車の関税が高かったのですが、その後の交渉でなくなり、安心して世界貿易に励むことができるようになりました。

【自由貿易協定】

 しかし、このGATT 体制には、自由貿易協定というのを認めるという怪しい条項がありました。この条項では、例えば各国に対しては譲許税率を10%としますが、特定の国との間だけ関税をゼロにすることができるのです。一部品目を例外的にやるのではなく、全面的にしなければならないという条件がありますが、こういう一定の条件下で自由貿易協定が公認されています。この背景には、当時、EU を作ろうとしていたことがありました。実は、EU というのは関税同盟です。これもGATT の中で認められています。関税同盟を結ぶことで、個々の国には関税制定権はなくなりますが、関税同盟による同一の関税、お互いの国の間は関税ゼロという一つの国になるような制度です。自由貿易協定は、この関税同盟を一部外延的に拡大したものと考えていいでしょう。
 最初は、EU 自体もそれほど拡張せず、自由貿易協定もあまり広まりませんでした。ところが1990 年前後から、EU は自ら拡張を始めるとともに、自由貿易協定をつかって、近隣国と囲い込みをはじめました。遠い日本からいろんなものが流れ込むよりは、隣国と仲良くして、大ヨーロッパをつくっていこうということです。チェコやマルタなどと自由貿易協定を結ぶことで自分達が支配できる経済圏を増やしていくことで、大きな経済圏になりました。
 これには、日本のインパクトが大きかったと思います。日本は1 億2000 万人の非常にレベルの高い国、レベルの高い消費者です。ところが、EU の消費レベルは高いけれども、1国では、ドイツでも8000 万人くらい。それに対して、日本は1 億2000 万人です。ヨーロッパの1国で商品企画をし、研究開発をしていては日本には勝てません。これではいけないということで、EU は関税だけでなく、基準認証や通貨の統一、労働の移動もある程度統合するなど、片端からものすごいことをやりました。その結果、日本の3倍以上の人口を持つ大きなEU になりました。この動きは、アメリカにも波及し、アメリカ、カナダ、メキシコ3国による北米自由貿易協定(NAFTA)がつくられました。これによって、アメリカがメキシコから自動車を輸入する場合の関税はゼロですが、日本からの輸入には関税を取るということが起きました。

出典:内閣官房「包括的経済連携の現状について」

【GATT 体制の強化】

 一方で、GATT 体制の強化も同時に起こりました。東京ラウンドでは、各国とも自由貿易協定に熱心ではなく、関税率や貿易障壁を低くする交渉が行われました。実際はGATT の場で、2国間交渉で関税率の引き下げ交渉がどんどんなされ、GATT の中の最恵国待遇のメカニズムで全体の関税が大きく下がり、東京ラウンドは成功しました。
 次のウルグアイラウンドでは、重要な点が3つありました。ひとつは、関税率をもっと下げることです。もうひとつは、貿易や経済の取引を自由にするためには、関税率のほかにも、例えば、原産地表記に関する規則、投資に関する協定、輸入許可手続き、セーフガードの手続きの厳正化、SPS 協定という衛生植物検疫などを強化ないしはルール化をということです。一言で言うとNon-tariff Barrier(非関税障壁)を片付けることも大きな問題でした。さらに、輸出補助金をだしてはいけない、輸入品に対抗するため国内産業に輸入相殺補助金をだしてもいけない、といった話もありました。あと、GATTにサービスのSをつけてGATS、サービス貿易のルールをつくろうということで、知的財産、特許制度についても取り決められました。
 関税以外にいろいろ決めたなかでもうひとつ大事なのは、紛争解決手続きを決めたことです。はじめは2国間で協議しますが、最終的にはパネル(小委員会)という第三者機関に申し立て、裁定を得ます。この第三者機関よってクロと言われた国は、制裁を受けます。例えば、日本が時計の輸入を制限するため高い関税をかけたときに、それがWTO のルール上違法とされた場合は、日本の重要な輸出品である自動車にそれに相当するような関税をかけられても文句ありませんという秩序を作ったわけです。これがWTO の体制です。

【FTA・EPA の問題点】

 このWTO 体制のなかにも、FTA(自由貿易協定)はやはり認められています。EPA(経済連携協定)は、関税以外にも金融サービスに関する自由化、検疫手続き、政府調達など、いろんな約束事を含むことから、Economic Partnership Agreement と言います。このEPA を結んだ国々とはものすごく楽に取引できますが、それ以外の国と取引をするときはGATT で合意した関税や検疫などの基準認証しかありません。EPA の関税障壁がGATT のレベルよりも低いと、EPA に入った国との取引は盛んになりますが、EPA に入っていない国については、相対的に不利に扱ってもかまわないということになります。これが、EPA、FTA の本質です。
 このように歴史を振り返ってみると、もう一回ブロック経済になりつつあるということです。戦前までのブロック経済化の反省に則ってつくったGATT ですが、そこにあった小さな穴がだんだん広がってきています。良い悪いはともかく、合法的にブロック経済を追求できるようになっているわけです。
 現在、ウルグアイランドに続いて、ドーハラウンドをやろうとしていますが、なかなか進んでいません。そのため、世界中の国々がドーハラウンドに期待するより、EPAで貿易障壁をさげたほうがよいと思いはじめています。この中心は、EU、アメリカ、それからASEAN、中南米です。後から追っかけて困っているのが日本、日本より後からはじめたけれども追い越してしまったのが韓国、というところです。
 TPP というのはEPA の一種です。私がちょうどブルネイにいた頃、日本は、ブロック経済で閉じられたら大変だから先に囲いこもうということで、韓国とFTA にむけた協議を始め、中国にもFTA を持ちかけました。そして、ASEAN を囲いこもうと構成国であるマレーシア、タイ、フィリピン、インドネシアと交渉を続けてきました。
 一番はじめに言ったとおり、関税を例とすると、FTA では一部品目だけでなく全体について撤廃しなければならないという条件があります。例外は一つも認めないというのではなく、だいたい9割ぐらいというのが今の趨勢です。FTA、EPA を結ぶと貿易障壁がなくなり弱い産業はやられてしまいます。この9割を達成するために、どれを例外にするのか、どれをあきらめるのか、いつも問題になります。日本は、国全体では儲かると思っていても、農業の部分の人が反対すると、なかなか説得できません。そうこうしているうちに、韓国は、国益のためといって、あっという間に韓米FTA をつくりました。経過期間がありますが、しばらくすると韓米の関税はゼロになります。韓国はEU とはその前に結んでいますから、こちらはアメリカよりも先になくなります。
 関税だけをとると、先進国の関税は結構低率です。日本には、関税がほんの数%、0%の品目もたくさんあります。EU やアメリカもそれに近いですが、なかには、まだ高いままの品目も残っています。例えば、EU では乗用車は10%、テレビが14%、電子レンジが5%です。これはWTO の下で約束している関税なので、どの国に対しても同じです。日本はEU へ乗用車やテレビなどを輸出していますが、乗用車で10%、テレビで14%の関税がかかります。ところが、韓国はEPA に入りましたから、早晩、韓国からの乗用車輸出にかかる関税はゼロになります。テレビにも関税はかからなくなります。そうなると、日韓において、テレビで14%、乗用車で10%の競争力の差がついてしまいます。昔と違い、韓国車の品質もよくなってきており、日本車はブランドだけで売れている感があります。ブランドで買ってくれる消費者はよいのですが、価格比較をして買う消費者層のほうが圧倒的に多いわけですから、韓国車は売れるけれども、日本車は売れないことになります。では、トヨタ自動車や日産がだめになるかというとそうとは限りません。EU で日本車が売れないとなると、EU のなかのチェコやハンガリー、自由貿易協定を結んでいるトルコみたいなところで、自動車を製造しようということになります。その結果、日本国内の生産がやられる可能性があります。ますます国内雇用が減るわけです。
 EU と比較すれば、アメリカの関税は低いです。乗用車で2.5%、それくらいならいいだろうと思うかもしれませんが、中にはピックアップトラックは25%というように、高い品目もあります。韓国は、関税がかからないので、韓国国内でピックアップトラックを製造しても問題ないので、韓国の雇用は守られます。しかし、日本製ピックアップトラックは価格競争で負けてしまうと、それだけ対米輸出のシェアが落ち、愛知県を中心とする自動車産業は弱ってしまいます。その結果、和歌山県にも多くありますが、ベアリング、ネジ、ダッシュボードなど自動車部品を作っている企業はその分だけ発注が落ちてしまいます。これがFTA の恐ろしいところで、ブロック経済に乗り遅れたら、ひどい目にあう産業もあります。ところが、焦ってFTA に入っていくと、アメリカの安い農産物などが日本に入ってくる恐れもあることから、農業はたまったものじゃない。
 これが両方とも地獄というわけなのです。

【貿易自由化の影響】

 ところが、世間では、まだウルグアイラウンドからドーハラウンドに進むといったように、もっと貿易自由化を進めたほうがよいという教条主義的な考え方が多いです。日本政府、特に経産省は、TPP に入り貿易を自由化すれば、経済厚生・実質所得がこれだけあがりますといったバラ色のことばっかり言っています。効率的になることで、安いものが手に入り、非効率なものは没落していくわけですから、計算上は上がっていくわけです。
 一方、農水省は、米や小麦が全滅するといった全滅シナリオを唱えます。マクロの視点からは言いません。コメは全滅するかもしれないけれど、その分安いコメが入って実質所得があがる、輸出環境がよくなる別の産業で働けばよい、ということを言わないのです。逆に、経産省は、国全体ではGDP が上がると言いますが、コメがどうなるかは言いません。
 より大事なことは、私が説明したように、ブロック経済に入らなかったときに、どんなにひどい目に合うかということを賛成派の経産省も言わない、政府から何一つ聞こえてきません。賛成派が今本当に言うべきは、入らなかったときには、こんな目に遭ってしまって日本が滅びますということなのですが、不思議なことに誰も言いません。もうひとつ、全体としてプラスになるからTPP に入るというのであれば、ひどい目にあう産業には、生産性を上げて輸出できるように、もっと力がつくように投資をして救います、全部は救えないかもしれないが、こういう手当をして他の産業にスムーズに移ってもらいますということを言わないといけません。そういうことを何も言いません。多分考えていないのです。
 一方、反対派が言っている競争力の弱い産業が困るということは、理屈としては正しいと思いますが、ひとつおかしいのは、必ずアメリカが日本の制度についていろいろ言ってくると思うから危険だと大いに言うことです。例えば、世界的な取り決めのなかでSPS 協定というものがあり、合理的な理由なく、輸入検疫をしてはいけないと決められています。今、私が放射線の関係で中国がこれに違反して不当な輸入制限をしていると言って怒っているものです。日本とアメリカで制度が違うものは、TPP に入ったときに、アメリカの制度ばかり主張されて、十分な安全規制ができなくなるのではないかという人がたくさんいます。こういうものは、これから交渉すべきものです。現在、TPP で交渉されているなかには、政府調達協定の問題などこうしたものがたくさんあります。政府調達協定についても全部外国の言いなりになって、外国の建設業者がたくさん入ってくるのではないかという人がいます。だけど、交渉したとたんに外国の言いなりというのでは、江戸幕府の時の腰抜け老中と同じです。交渉では、こんなことは受け入れられないと言わないといけないし、どう主張していくかには、敵を知らなければいけません。アメリカも、いつまでも受け入れられないものを言ってはきません。それに、味方がどれだけいるかという議論もあります。だから、リスクはあるかもしれませんが、交渉すれば相手国の言いなりになるはずだといった負け犬根性の国民に、日本はいつの間になってしまったのかと思うところもあります。

【TPP への対応】

 TPP とは、私がいましたブルネイと、シンガポール、ニュージーランド、チリという小国が集まって、お互いの制度を統一して、関税をゼロにしましょうと決めた(2006年5 月発効)のがはじまりです。そこに、2010 年から突如として、アメリカ、オーストラリア、マレーシア、ペルー、ベトナムが入りたいということになって、日本も入ったらどうかということになったわけです。元々、日本には、アメリカと自由貿易協定をやったほうがよいのではないかという議論がずっとありました。今、日本は、韓国に世界各地でやられています。現実には現地の日本企業が作っていることが多いのですが、タイやマレーシアの製品にも日本の雇用が奪われています。これ以上競争力が奪われるのは止めようというのが、TPP に入る論理だと思います。
 このとき考えなければならないのは、入った場合は問題がある、入らない場合にも問題があるということです。それでは、我々は何をすればいいのかというと、まず、入った場合のプラス、マイナスを考えることです。そして、入らなかった場合は、現状維持でプラスはありえないので、どれだけマイナスがあるかを考えます。そこで、利害得失を考慮して、入るか入らないかを決める。そして、マイナスの産業には調整政策(Adjustment Policy)を行って救済する。これが政策です。
 そして、日本の国益が奈辺にあるかを考えて、絶対にゆずれない安全規制、国民皆保険などを徹底的に守らないといけません。さらに言いますと、コメだけは例外にしないとTPP に入らないと言い張る、といった戦略が必要です。すべては守れないので、TPPに入るならば、例えばみかんには支援するから輸出できるようがんばってください、というような色んなことをやらないといけないのに、何もしないで交渉だけ参加する、アメリカが言っているから、などと政府は言っています。冗談ではない、こんなものに賛成できるかということで、私は今、反対なのです。

【和歌山県への影響】

 ただし、和歌山県では、ちゃんと分析をしています。さきほど言ったとおり経産省などがやっているのはマクロ分析で、日本全体でこれだけ儲かるという話をしています。 自由貿易のほうが、経済厚生が伸びるのは当たり前です。一方、農水省は、この産業、この部分が全滅すると言っている。これは、マイナスのことを言っているのだけれども、マイナスがいっぱいあるのも、当たり前のことです。マイナスの部分とそれを含むプラスの部分が合わさったら、内閣府が試算したような結果になるのだろうと思います。では、その痛みはどうするのか、何も議論しないというのは乱暴です。
 そこで、和歌山県にとって、参加した場合、参加しなかった場合、どうなるかを調べました。もちろん、産業毎に具体的にです。参加しなかった場合については、例えば、輸送機械、電機・電子、一般機械といった我が国の重要な輸出産業がこのくらいやられるだろうという日本全体への分析が経産省にありましたので、それをもらってきました。その結果、和歌山県の下請け等にどれだけ直接的な影響があるかということが分析できます。そういう輸出産業の生産の落ちと比例配分的に本県の生産が落ちるという計算をすると、和歌山県では県内産出額が137億円減少します。

TPP に参加しない場合の輸送機械、電機・電子、一般機械関連の
県内企業産出額 約137億円減(3.5%減)

内訳 輸送機械 ▲19 億円(▲1.7%)
電機・電子 ▲66 億円(▲4.2%)
一般機械 ▲52 億円(▲4.2%)
 

 次に、参加したときにどうなるかというと、農水省の試算をつかうと、例えば、コメは85%減少してしまい、ちょっとだけしか残りません。実際には、国民みんなが安いから外国米を買うということにはならないと思いますので、これはちょっと無理のある試算だと思います。農水省の試算のとおりになるとすると、和歌山県全体で農林水産物の生産が136億円減少します。参加した場合には、農産物を輸出することで得するのではと思われるでしょうが、残念ながら、現在のところ、輸出は少ないので、40%増加しても350万円のプラスという計算でした。

TPP に参加した場合の農林水産業の県内産出額 約136億円減(10.6%減)

主要品目 ▲70.6 億円(▲85%)
温州みかん ▲25.7 億円(▲10%)
中晩かん ▲25.0 億円(▲50%)
牛肉 ▲8.1 億円(▲87%)
鶏肉 ▲4.4 億円(▲20%)
豚肉 ▲1.2 億円(▲68%)

 それから、マクロ経済の一般均衡的分析では、安い輸入品が色々入ってくることで、家計が得をしたり、企業の使う原料が安くなったり、マクロ経済でプラスが生じます。和歌山でどれくらいになるかは計算しませんでした。例えば、内閣府では10 年間で2.7兆円上がると試算したので、和歌山県の経済規模は1/100 だから、その100 分の1ぐらいの影響だろうという考えも可能です。こういうことを他県では言っていますが、和歌山県ではそういうレベルのことはしません。そういう影響はあるでしょう、しかし現実的に、参加したときには、こんな地獄があります、参加しなかったときには、こんな地獄があります。多分、天国はもうちょっと大きいのだろうけど。そのときに、どうするのかということを政府は本当に考えているのか、今とっても心配しています。利害得失を考え、賛成なら賛成でもよいけれど、その代わり損するところへの対策はこういうことをします、ということを言わないと国論はいつまでたっても統一できません。政府はそうしたことをやるべきではないか、そういうことをできない政府がTPP だと騒ぐことについては反対です、と言い続けています。
 それから、関税以外の議論がどのようなものであるかを述べてみます。TPP で議論している作業部会は24あります。そのうち4つは関税関係、全体会合ですから、残り20が関税以外の約束事であります。それをちょっと申し上げますと、原産地規則、貿易円滑化、衛生植物検疫、貿易の技術的障害、貿易救済、政府調達、知的財産、競争政策(独禁法関係)、越境サービス(transporter date flow のような通信等自由化)、それから、商用関係者の移動、金融サービス・電子通信サービス、電子商取引、投資の約束事、環境の約束事、労働(労働基準法をどう適用するか)、制度的事項、紛争解決、協力(途上国への優遇)、分野横断的事項などです。交渉に参加するということは、こうした議論をしていくわけです。その中で、一部に言われているように、日本の良い制度が一方的に破壊されるということは、あまりありそうだとは思えません。一例を上げると、政府調達に関しては、日本、特に地方の建設業が海外に負けてしまうのではないか、国民皆保険がなくなるのではないかという議論があります。しかし、実際にはそんな目には遭わないと思っています。外国の企業が地方の仕事を取りに来ることなど、採算を考えると現実にはありません。また、既に日本はウルグアイラウンドの結果できたWTOの政府調達協定で、けっこう多くの約束をしています。(もちろん、それで大変なことなど起こっていないのです。)一方、TPP の参加予定国の多くの国は、そのWTO 政府調達協定にすら入っていません。だから、もし、TPP 協定で政府調達の議論がされるとしても、まずもっと基本的な所で、日本がむしろ他国に市場開放を求める例になるように交渉が行われるはずであります。国民皆保険などがなくなるなどという無茶苦茶なことを言う専門家と称する人がTV などに出てきます。参加国の状況を見れば、そんな話になるわけがありません。もし各国の意向が皆そうで、それが大勢というのであれば、TPP に入らなければよいわけです。今後、こうしたスコープで議論することになると思いますが、政府はほんとに腹くくってやるのか、まだよくわかりません。

 

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