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寄稿・提言・訓辞・挨拶集

新聞・雑誌等への投稿や、各種行事での講演・挨拶、政府への政策提言等を通じて、知事の考え方や政策を紹介します。

平成21年度新規採用職員研修・知事講話(要旨)

平成21年4月13日

 みなさん、私は先日、みなさんがご入庁された時に訓話をしましたが、今 日はそのテクニック編をお話ししようと思っています。

 ところで、昨年から私が合同研修の講話で採用している方式は、 みなさんに意見を求めるために「あてる(指名する)」ということです。 若い頃の恥はかき捨てですから、あてられた方は考え込まずに軽い気持ちで答えてください。

 さて、4月1日に私がみなさんにお話ししたことが3つありましたが、 覚えておられますか?答えは次の3つです。

①使命感や情熱を持って、仕事を「任務」として考えよう。
②みなさんの仕事は海図なき航海だから、自分が何をすべきかよく考えてください。
③健康に気をつけて仕事をしよう。

 今日、私がお話しした内容を後日、 テストするかもしれないのでよく聞いておいてください。

●テクニック編その1 :「実態をよく知ろう」

 実態というのは、現在の和歌山県の状況です。 和歌山県の人口は、平成19年が全国で第39位です。 昭和50年から平成17年ぐらいまでの人口増加率はマイナス3.4%で、第43位です。 ある調査によると、今後20~30年間の人口減少率が高いところは秋田県。 その次は和歌山県だそうです。これを止めるのはみなさんの双肩にかかっています。

 それでは、次に経済成長率という概念を知っている人、手を挙げてください。 だれも知らないのですか? では、知らない人、手を挙げて? 知らない人は今日、ただちにインターネットか辞書で調べてください。 手を挙げた人は深く恥じてもらいたいですね。 しかし、両方挙げなかった人は、もっと深く恥じてもらいたい。 なぜなら、自分の意思表示ができない人は“あかんたれ”だからです。

 経済成長率とは、1年間に経済規模が拡大する割合のことです。 つまり、県民がどれだけ働いてどれだけ稼いだか、100万人の県民の所得を調べるのです。 この30年間ぐらいの和歌山県民の所得の伸び率は、47都道府県中最下位です。 しかし、一人当たりの所得は最下位ではありません。

 このような状況を踏まえて、 みなさんの中で誰かが言ってくれたように「県民を元気にしてみんなで頑張らなければならない」 というのが今の和歌山県であり、みなさんはそういう和歌山県の行政を担っていかなければならないのです。

 現在の30年間の人口増加率、あるいは人口減少率は最下位から5番目で、 経済成長率は最下位という中で、我々はもっと富を稼いで人口の減少を食い止めなければなりません。 こういう実態をよく知っていると、和歌山県を元気にするために頑張らなければいけないと思うでしょう。 だから、みなさんはしっかり資料や新聞で勉強し、現実に自分の足で稼いで何が起きているかをよく見てください。 そのように実態を踏まえてこそ、仕事への使命感が出てくるものだと思います。

 私はついこの間までブルネイ(ブルネイ・ダルサラーム国)の大使の職にあって、実態を知ることの大切さを学びました。 これからみなさんに、第二次世界大戦中にブルネイで起こった非常にショッキングなことをお話しします。

 戦前からブルネイは、インドネシアのパレンバンやスマトラ島と並び、 石油の生産地だったので、日本軍はここを占領し、近郊の石油基地を手に入れました。
 しかし、昭和20年、日本の敗戦が色濃くなり、イギリスとオーストリアの連合軍が上陸しそうになると、 当時サイゴンにあった南方軍総司令部が、ボルネオのサンダカン周辺にいた約2万人の兵隊を約400km彼方のブルネイまで 10日間のうちに移動せよという命令を出しましました。 しかし、ボルネオの熱帯ジャングルには道が無く、中に入ると足はぬかるみ、方角も分からないうえに毒蛇などの危険がいっぱいです。 おまけに反日派の現地の人たちは日本兵を見つけたら吹き矢で狙ってくるという状態で、半分の人が戦わずして死んでしまったのです。

 これを今の県政におきかえると、県民は何に困っているのか、 実態がわからないまま県民を救おうとしても、間違った方向にいってしまう可能性があるということです。 だから、それを防ぐためにもぜひ実態を知るという努力をしてもらいたいのです。

●テクニック編その2:「問題意識を持とう」

 今、お話ししたように和歌山県は経済成長のスピードが遅く、 人口も減ってきています。そういう県の実態を知ることによって、 我々はどうすればいいのかというのが問題意識を持つということです。 こういう気持ちがみんなに無いと、すべての仕事が前向きに進まないと思うのです。

 問題意識を持つと必然的に自分の任務が見えてきます。 私は、いつも権限ではなく任務で考えましょうと言っています。 任務と権限では考え方にかなり違いがあり、県庁ではできるだけ任務で考えるようにしています。 私がここに来てから、各課で所掌事務の書き方をガラリと変えました。 たとえば障害福祉課の任務は、障害者を支援するために一生懸命いろんなことをやること。 道路建設課の任務は、和歌山県の道路をどういうふうに整備したらいいかをありとあらゆる角度から考えること、というようにです。

 一方、権限というのは、県がやらなくてはならないことです。 障害者のための施設を監督するのも県の権限です。 しかし、問題というのはその権限を超えたところでたくさん出てきます。 たとえば、重病人がいるので助けてあげたいが、その病種は助けるための政策手段の中に何も書かれていません。 みなさんが権限だけで考えたら、「書いていないので私はどうしようもありません。 さようなら」ということになります。 任務で考えると「書いていないが、これは書いた方がいいのではないか。 今度の条例改正の機会に進言してみよう」とか、「市役所ならできるかもしれない。 生活保護でとりあえず生活をつないでもらえるかもしれない」などと考えて紹介することはみなさんにもできるはずです。 たとえ自分には権限がなくても、最善のことをやってあげようとするのが、問題意識を持って任務で考えるということです。

●テクニック編その3:「考えるということ」

 政策は「なぜ? どうして? 本当かな?」と疑問を持ち、それを考える事によって浮かび上がってくることが多いものです。 でも「本当かな?」の部分が強すぎると、人の言うことを聞かなくなってしまいます。 きちんと人の話を聞いて理解した上で、みなさんが最初に把握した実態と照らし合わせて考えることが、 みなさんに課せられた任務だと思うのです。 そして、上司や先輩にはどんどん自分の意見を言ってください。 たとえ最初は相手にされなくても、勉強して挑戦して、少しでも賛同してくれると仕事が楽しくなってきますので、 臆せず、意見や考えを提供していくようにしてください。

 ただし、最初に言ったように人の言うことも聞かずに自分の考えを言うのではちっとも成長しません。 人の言っていることを理解して勉強したうえで、何かわかったら言ってみるのもいいんじゃないでしょうか。

●テクニック編その4:「考えることのテクニック」

 相手の立場になって考えると新しいことが見えてきます。 たとえば高速道路問題。資料によると、国道や県道の改良率は全国第46位、 高速道路の供用率は第44位で、和歌山県の道は遅れています。 私は高速道路を早くつながないと、和歌山県は死んでしまうと思っています。 ところが1年ぐらい前、ガソリン税を安くしてよくほしいからもう道はいらないという人が和歌山県でもかなり出てきました。 でも、高速道路はさまざまなモノの手段なのです。

 江戸時代、和歌山県は東京と大阪を結ぶ船の高速道路でした。 当時、大量の物資や人々の輸送は船に頼っていたので、和歌山県の道はまさに国土軸上にあったわけです。 さらに産業面では、炭(エネルギー)や木材(建設)、鉱物、それから最後は金融まで握っており、和歌山県はものすごく富み、栄えていたのです。

 ところが、鉄道の時代になってからは徐々に衰退しはじめ、高速道路の時代になってからは、 わずかに取り残された県の一つになったのです。 高速道路が無い県をみると、人口減少率がピッタリと一致します。 富を栄えさせるためには、投資をしてもらったり、企業に来てもらったりすることが手っ取り早いのですが、 相手、つまり投資者や企業の立場から考えると、土地が安くてアクセスが良いなどの条件さえ満たせば、場所は別に和歌山県でなくてもいいとなります。

 今は、大阪から高速道路が北陸道や山陽道まで通っているので、南紀に行きたいと言う人が相対的に減っています。 我々は和歌山県の交通の条件を良くして、特色をもっとアピールしないと観光客さえ来てくれなくなります。 だから、自分の方からモノを見るだけではなくて、相手の方からモノを見ることが大切なのです。 先ほど、権限で物事を考えてはいけないと言いました。 たとえば、みなさんが福祉行政をやろうとする場合、役所には役所の論理がありますが、 福祉ビジネスの対象になっている人から自分たちの仕事を見るとどう見えるか、 何をしたらいいのか考えるテクニックが大事だと思います。

●テクニック編その5:「割合・構成で世界観をつくる」

 産業を振興して雇用を増やし、富を増やそうと考えると、製造業だけではなく、農林水産業やサービス業もみんな大切です。 その時、農林水産業やサービス業が全体の中でどんな構成を持つのか考えたことはありますか。 和歌山県の中で製造業の出荷額は、平成19年で3兆1600億円ありました。 農業生産額、出荷額は1024億円。林業の産出額は52億円で、漁業は176億円です。 しかしながら、農林水産業だけで100万人の県民を食べさせられることはできません。

 農林水産業をないがしろにするわけではなく、 一番小さい林業の52億円が55億円になっただけで3億円の売り上げが入るので、 そのうちの所得が3分の1ぐらいだとしてもそれで多くの人が食べていけるわけです。 しかし、これだけで人口の減少を止めたり、雇用を増やしたりという目的は達せられません。

 その点、サービス業(第3次産業)は70%ぐらいあるのです。 割合や構成で考えるとサービス産業を振興するのが一番ですが、もう一つはどこかを原動力にして伸ばすということが大切です。
 みなさん方も公務員なので第3次産業に分類されますが、かといって公務員を増やすのはかなり愚かな考え方です。 それよりも大企業が和歌山県に来て、まわりの中小企業に仕事を発注してくれれば、それがきっかけとなって県民の雇用が増えます。 また、観光をうまくアピールすれば、売り上げが伸びたり、外国人もたくさん来たりして、伸びる原動力となるでしょう。

 だから、将来、和歌山県を引っ張っていくような原動力のある産業から手を付けていかなくてはなりません。 我々はどれぐらいの割合のところでどう勝負しているのかと、いつも頭の中において考えたらいいのではないかと思います。

●テクニック編その6:「よく聞く、よくしゃべり、しつこく頑張る」

 みなさんは頭の良い方ばかりですが、それは人生や仕事の経験からくるものではなく、 人の話をよく聞き、勉強して、聞いた知恵を自分のモノにしなくてはなりません。

 そしてプレゼンテーション力を磨くことが大切です。 今日は何度もみなさんに言っていますが、意見を求められたらパッと手を挙げて、間違っていてもいいから何か言ってみるのです。 相手を説得するには、それなりのテクニックや勉強が必要で、若い時から磨いているとだんだんうまくなります。 管理職になると、県庁以外の人ともコミュニケーションをする機会が増えていくので、 今からきちんとプレゼンテーションができるように技を磨いておいてください。 使命感からくる「しつこく頑張る」というのはそのテクニックでもあります。

 諸君の先輩方は立派な仕事をたくさんしてくれているのですが、 そのうちの1つに「校庭の芝生化」というプロジェクトがあります。 これは、教育委員会の中堅の人が「校庭を芝生化したらいいですよ。 すごく安くできますよ。」という投書を私に見せてくれたことがきっかけなのですが、 面白そうだということでプロジェクトチームを立ち上げました。

 結論からいうと、和歌山県の校庭芝生化はものすごく完璧で安くできました。 最初に要求してきた予算を見るとものすごく高額だったので、「もっと安くしなさい」と言うと、 彼らは一生懸命考えて、安くできる方法を持ってきたのです。 それは地元住民がメンテナンスをするという制度で、みんなで守っていくというものです。 そのとおりやってみると、子どもたちが裸足でかけずり回れる芝生の校庭がものすごく安く実現できました。 これもみなさんの先輩たちがあきらめずにしつこく頑張ってくれたからです。

 ただしこれには副作用もあり、しつこくやりすぎると疲れてしまいます。 特に、重圧が続くと心の健康まで害する恐れがあります。 健康を保つためにはよく遊ぶことも1つですが、「いつか終わる」という言葉も覚えておいてください。

 校庭芝生化の話に戻りますが、県の予算要求は1年に1度しかないので、 それまでは必死になって頑張って、駄目だったらまた来年挑戦すればいいのです。 いつまでも同じ緊張が続くわけではない。 いつかは終わることを救いにして、頑張れる限り頑張ろうと思えば、そんなに心や体を壊すことはないと思います。

 みなさん、よく聞いてプレゼンテーション力を磨き、 しつこく頑張って、でもつらくなったらいつかは終わると思って頑張ってください。

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