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寄稿・提言・訓辞・挨拶集

新聞・雑誌等への投稿や、各種行事での講演・挨拶、政府への政策提言等を通じて、知事の考え方や政策を紹介します。

和歌山県新規採用職員研修知事講話

平成20年4月14日 和歌山県職員研修所/和歌山市

 皆さん、これから5日間、新人研修でいろんなことを学ばれますが、この研修を通して同期の人たちともどんどん仲良くなっていただきたいと思います。
さて、皆さんの机の上にいろんな資料が置かれていますが、今は見ないで裏返しておいてください。まず私が皆さんに質問をして、どれだけ和歌山県のことを知っているか、考えてもらいたいからです。その後、和歌山県が今、どういうことをしようとしているのかを話し、最後に、私が、多少人生の先輩としてアドバイスできたらと思います。

和歌山県の経済について

 昭和50年ぐらいから現在まで、和歌山県の経済成長率は47都道府県中何位でしょうか? 答えは最下位の47位です。では、昭和50年の和歌山県の1人当たりの県民所得は何位でしたか? 答えは20位です。今は35位ぐらいになっていますが、どんどん地盤沈下しているというのが和歌山県の姿です。戦後の和歌山県は、住友金属みたいな大きい企業をはじめ、石油会社や製紙会社、林業、農業も盛んだったので経済力は結構ありました。
 経済後退の原因として、外から新しい血を導入することにやや失敗したことがあげられます。
 他県に比べると新しい産業構造への転換に乗り遅れています。昭和50年ぐらいの和歌山県の製造業の構造を見ると今と全く同じです。他県はどんどん新しい工場をつくったり、企業誘致したりしながら変わってきています。我々も変わっていかないとそのまま風化していくだけなので、将来トレンディになるモノをトレンディな諸君に一生懸命育てていってもらいたいのです。

インフラについて

 道路の改良率で和歌山県は何位でしょう? 答えは46位です。しかも、高速道路の計画がどれだけ実現しているかという割合を表す高速道路の充足率は45位。和歌山県の南部では1車線の高速道路があるだけなので、大渋滞になります。30年ぐらい前までは名古屋の人は紀勢線を使って和歌山県まで来てくれていましたが、今は多くが車で便利に行ける北陸地方に流れてしまいがちで、和歌山県が観光をアピールするチャンスがどんどん失われています。
 また、下水道の充足率は46位です。下水道については、いろんな複合機能を持っている浄化槽があれば代替できるから、必ずしも下水道でなくてもいいのですが、それさえもなかなか簡単にはいかず、インフラも遅れていると思います。 

人口増加率、高齢化率、潜在成長率について

 昭和50年から平成17年までの人口増加率は何位ですか? 答えは43位です。高齢化率もそれぐらいです。人口は経済力に反映して、この山がちな県にしては多かったのですが減り方が激しく、将来、高齢化率が高くなる県で第2位となっています。
 正月の日本経済新聞に潜在成長率のことが出ていました。潜在成長率というのは、「資本」、「労働」、「技術進歩」という、3つの概念を使って算出するもので、将来どのくらい経済が伸びるかということです。日本経済新聞によると全国で和歌山県は最下位で、しかも唯一マイナスでした。でも、全然卑下する必要はありません。過去のトレンドから算出されているものであるので、人口も資本蓄積も減ってきたのだからマイナスになるのも当然だからです。
 しかし、平成17年の一番新しい県民所得が今年2月に発表されましたが、増加率の県別ランキングは1位です。これは、ずっと調子が悪かったので、少しでも良くなったら1位になるのです。良くなった原因は「住金現象」だと思います。住友金属というのは長い低迷を脱して、ついに立ち直ったのです。このものすごい生産回復が大きなウエイトを占めているから「住金効果」といっていいでしょう。頑張ればこうなるということの実例です。さっきもいったように産業構造をどんどん変え、新しい血も導入して頑張れば、絶対に経済力は上がります。こういう統計は3年後ぐらいに出るので本当の勝負はこれからです。成果は諸君らがちょっと人心地ついた頃に新聞などをにぎわすことでしょう。だから、おおいに責任があると思ってください。

教育について

 和歌山県は平均的な学力があまり高くありません。子どもたちが十分力を伸ばしているかというと、そうでもないような気がします。ちょっと由々しき事態としては、学校内の暴力問題があります。暴力行為の発生件数は全国で4位ぐらい。不  登校児童生徒の割合も3位なので、心を磨いて、子どもたちを育てることも諸君の任務だと思います。

医療・福祉について

 今、全国で公立病院が崩壊しています。廃院になったり、入院がストップしたりした県がたくさんあり、4県だけが入院停止などのない県です。和歌山県はこの4県に入っています。和歌山県では、海沿いの拠点都市にある公立病院が医療の中心を担い、そこからさらに山奥の方に診療出張に行ってもらったり、あるいは開業しておられる人とネットワークを組んだりしております。また、急患を救急車やドクターヘリで和歌山県立医大などへ運んでいます。
 今、全国で医師不足と言われますが、和歌山県は1人当たりの医師の数が、全国平均よりも少し多いくらいです。ところが、多くの医師は和歌山市内で開業しており、拠点病院や救急医療に従事していたり、地域の医療を守っていたりする勤務医はものすごく少ないのです。元々は、医局の人を地方へ送り出し、修行をさせて大学に戻すという医局制度をとっていましたが、厚生労働省が制度を変えて研修医制度にしました。その結果、たとえば胃ガンの専門家になりたい人は、総合的な和歌山県立医大よりも国立がんセンターで研修医をすることを希望するようになったのです。すると医科大学の医局はどんどん縮小し、地方の拠点病院に送ってくれるはずの医師が減ってきたのです。しかし、和歌山県立医大は、多くの研修医を集めてくれています。それは大学に魅力があるからで、医師免許の国家試験の合格率も97%と全国6位です。ところが和歌山県立医大の定員はたった60人です。
 追い打ちをかけるように、国は閣議決定で医師の数を増やしてはいけないとしました。私が知事になった時のことで「とにかくこんな制度は変えなくてはくてはいけない」と頑張った結果、和歌山県立医大の定員を20人増やしてもらうことになったのです。増えた20人は、入学時に地域の拠点病院で10年ぐらいは勤めるという誓約書にサインするという条件をつけました。さらに全国でも、和歌山県の勢いに押され5人ずつ増やそうということになったので、今年から定員が85人に増えました。それでも一人前になるまでに研修医期間の2年を合わせると8年かかるので、その間はドクターバンクや青洲医師ネットなど、いろんな即戦力の手段を使って病院の崩壊をくい止めたいと思います。今のところ、和歌山県の公立病院は、崩壊せずに済んでおりますが、これも医師の献身的な努力のおかげであると感謝しなくてはなりません。
 医師の件以外は、皆さん「ひどい県に来たなあ」と思っておられるかもしれませんが、これからは諸君一人ひとりの働きによって和歌山県を良くしていけるという楽しみがありますので、仕事に十分やりがいをもって頑張っていきましょう。知事が1人で頑張ってもできるわけがありません。みんなの「自分は頑張ったなあ」という思いが多いほど、和歌山県が良くなるということだと思っていただきたいですね。

和歌山県長期総合計画について

 昨年、和歌山県では『和歌山県長期総合計画』として、10年間の目標を決めました。めざす6つの姿を描いて、それに向かって頑張っていけるようにさまざまな政策目標を考えました。基本的に実現できそうな夢をできるだけ具体的に語っているので、諸君もこの研修期間中に一度、熟読玩味してください。
 また、和歌山県は財政が破綻寸前なので、贅沢にいろんなものを大盤振る舞いできません。『長期総合計画』と一緒に『行財政改革プラン』を作り直しました。私が知事になった時、すでに県庁の人員削減や給与カットなど大きな改革がすすんでいたのですが、財政は2年半でパンクしてしまうという状態でした。もし、諸君も入った会社が2年半で破産すると言われたら、イヤになりますよね。だけど、和歌山県は永遠です。永遠にしました。諸君は、先輩に比べると2倍も3倍も働かなくてはいけないかもしれません。単純に2倍、3倍働くのではなくて成果で2倍、3倍ということですよ。だから、この機会に『行財政改革プラン』も見ておいてください。
 また、観光や農産物の販売や水産、林業、障害者の福祉、医療などについては、個別のアクションプランをつくり、具体的にこの長期総合計画を実現していこうという形になっています。

 ここで、諸君に言っておきますが、官僚だけれど官僚的になってはいけません。官僚的というのは、型にはまったことだけしかしないこと。「自分の仕事はこれだけだ、他のことは知るもんか」というのが官僚的です。たとえば、県庁にはいろんな人が陳情に来ます。彼らは和歌山県の県庁に来ているのですから、自分の仕事と関係なくても「どうしたのですか」とお聞きして、「これはこう言うことだと思うのですが、担当をご紹介しましょう」と答えてほしい。然るべきところにつないであげられると、「最近の県庁の人はなかなか親切だなあ」と思ってくださいます。解決できるかできないかは分かりませんが、最善のことをしてあげるのが諸君の仕事だと思うのです。

これから県ですべき大きな目標

 1)県民に信頼される。
 官僚的にならず、自分の身の慎みをきちんとしなくてはいけません。そのために公務員の倫理規定があり、そのルールに従って県民と堂々とつきあっていってもらいたいと思います。
 2)経済的な力を盛り返す。
 3)安心安全。
 福祉や治安が、いいかげんでは、県民生活の根幹が揺るぎます。すると経済的な活力も取り戻せないので、安全安心をきちんと守っていきましょう。
 4)心を元気にする。
 和歌山県では市民自らが文化を守り、積極的に社会奉仕やスポーツ振興などにも協力するなどいいところが沢山あります。ところが、経済的な力が衰えるにしたがって、そういう部分が下がってきています。他県に比べると、まだまだ力があるので、いろんな市民の力を開放していけるようにしていきましょう。

4つの目標を実現するために必要なこと

 1)行政は論理だ。
 子どもの頃、先生に「『なぜ?どうして?』をきちんと言いなさい」と言われたでしょう。どんなことでも必ず理由があった上で、結果が現れてくるものだからです。
 和歌山県の経済が悪くなれば「なんでだろう?」といろいろ調べてみる。すると産業構造が変わっていなかったからだと分かる。どうしてそうなったのか? 新しい血を導入するのを忘れたからだ。では、新しい血を導入するのに何が問題だったのか。そんなふうにつき詰めていけば、修正すべきところにたどり着くわけです。そういう意味では行政は論理だと思っていますので、皆さんもしっかりと論理力をつけてください。
 2)「敵を知り、己を知らば、百戦 危うからず」
 「敵を知り」といっても我々には別に敵があるわけではないので、問題の所在を知ることが大切です。さっきの論理とほとんど一緒ですが、もう一つはバックにあるいろんな知識を得ることです。
 「己を知る」ですが、ここで言う “己”は県民です。県民が何を望んでいるかを知らないで行政はできないと言うことです。したがって、県民の声をちゃんと聞いてください。そのためには「青年よ、書も捨てないで野にいでよ」と言いたいのです。実は去年も言いましたが、私の子どもの頃、小説家の寺山修司の「書を捨てよ、町へ出よう」をもじった言葉です。私の場合は「書も捨てないで、野に出よ。野に入って県民の声を聞こう」です。「書」、つまり、バックグラウンドを勉強しながら、いろんなところへ行って県民の話を聞こうという意味です。周りの人たちとどんどん話をして、いろんなことを吸収し、それを政策に結びつけるようにしてください。
 そのため、和歌山県では、産業の面で、和歌山県の企業を回って、困っていることを聞いてきて解決に結びつける企業担当者、産業担当者を決めました。これは全国でもたぶん、今のところ和歌山県にしかありません。和歌山県へ企業誘致をしたいとき、一番聞くのが和歌山県の企業風土です。たとえば、和歌山県に会社や工場をつくろうと考えている企業が、企業風土が悪いと、二の足を踏んでしまいます。しかし、現在いる企業が「県庁はいつも話を聞きに来て、問題があればすぐに動いてくれますよ」と言ってくれると、話は全然違います。 “企業風土”は県庁の働きだけで良くなるものではありませんが、評価や声価を高めるのは県庁の力が一番強いので、自分たちの仲間(県民)の気持ちを知ることが一番大事だと思います。
 3)使命感を持とう。
 「私はこの仕事しかやりません」と言わないということ、これが使命感の基本。和歌山県の将来は諸君の双肩にかかっています。問題があれば担当でなくても「よし、僕が解決してやるよ」という気持ちでやってもらいたいのです。今ちょうどここに100人ぐらいいますが、100人が頑張ってくれたらものすごい力になります。任務を遂行せず、諸君の成長が止まれば、和歌山県の力も止まってしまうのです。
 今まで悪しき慣習だった縦割り行政の弊害を打破するために、事務分掌の規定も任務型に変えました。今までの組織はみんな権限で議論をしてきたので、権限のないことはしませんでした。そこで、事務分掌の規定には権限のあるものはすべて明記し、最後にその他としてこの任務を達成するために必要なことはみんなやりますと書いています。
 さらに “ヘッドクォーター”もつくりました。みんなバラバラでやっていると力が出ないので、局長クラスの人がヘッドクォーターとなり、各部署をまとめるのです。
 4)職場の雰囲気を良くしよう。
 上司に絶対服従する必要はなく、話を聞いておかしいと思ったら堂々と論理で反論してください。みんなでワイワイ、ガヤガヤと議論できる雰囲気にしていってください。先輩たちはみんないい人ですから、諸君の意気込みが伝われば、協力してくれます。
 5)健康に気を付けよう。
 今まで安穏たる学生生活を送っていた人もいたでしょうが、役所に入ると全然違います。私は通商産業省に入庁しましたが、毎晩遅くまで仕事をしていました。ストレスはそんなになかったのですが、体力的にキツくて突如ひっくり返ってしまった。そしたら周りの人が休ませてくれ、2,3日で元気になりました。だから、体調が悪ければ隠さず、休ませてもらいなさい。倒れかけたら倒れてしまいなさい。倒れかけたときにぐっと止まってはいけません。仕事はみんながカバーしてくれます。諸君には、30年、40年と、和歌山県のために尽くしてもらわなければいけないのですから。その代わり、隣の人、上司や同僚の調子が悪ければ助けてあげてください。

 私の話はこれで終わります。皆さん、しっかり頑張ってください。

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