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寄稿・提言・訓辞・挨拶集

新聞・雑誌等への投稿や、各種行事での講演・挨拶、政府への政策提言等を通じて、知事の考え方や政策を紹介します。

(財)和歌山社会経済研究所シンポジウム

2007年11月27日 東急イン/和歌山市

 皆さんこんにちは。高橋さんのあとを受けて「和歌山のチャンス」というテーマで話をするというのが、私の今回の役目であります。一番初めに種明かしをいたしますと、高嶋さんから、「知事さん、あなたが話して下さい」と言われました。ところが、皆さんとはしょっちゅう顔を合わせていろんな議論をしたりしているわけでして、そういう和歌山で知事が話をしても、和歌山全体の知識が増えるわけではないのです。折角の機会ですので、和歌山全体の知識を増やして、それで和歌山全体が元気にならないと損だというふうに思いました。和歌山社会経済研究所の一年に一回の講演会には、是非日本で一番立派な経済学者に来てもらったら良いと思った次第であります。
 実は私はその昔、経済企画庁に突如として出向を命じられ、国内調査2課という所で課長をしておりました。その課は地域経済とか、あるいは産業動向とかを追えというような役回りでありました。その時に、たくさんのエコノミストの方々とおつきあいをいたしました。その中におられ、私が最も立派であるなと思った民間のエコノミストが高橋さんであります。

 高橋さんとは当時から仲良くしていただいていました。高橋さんの何が偉いかというと、まず、もともと金融グループのシンクタンクご出身ですから、そういうようなマクロ経済学についての常識的なことはちゃんと頭に入っている。それからいわゆる「経済学」という観点からいっても、立派な知識が有る。そこまでの人はものすごく多いのです。しかしそれに加えて、ちゃんと現実の世界に目を向けて、あまり理に負けないような現実のヒト・モノ・カネを把握しようというふうにいつもなさっている。これは立派な人であると思いまして、時々お話をさせてもらって、知恵をお借りしていました。その後、経済企画庁は解体されて内閣府に統合されましたが、その時に、○○局長というのはだいたい無くなり、政策統括官というのができました。そして調査局長が、第3政策統括官となりました。(高橋さんは)その調査局長に選ばれて、二年ぐらいご苦労されました。さっきどうでしたかと聞いたら、「いやあ、あの時は大変でした」とか言っておられました。経済企画庁の調査局長というのは、エコノミストの中では実はものすごく偉いといわれているポストでありまして、高橋さんがそこに選ばれたのもむべなるかなというふうに思いました。
 この度、高嶋さんからお話をいただいた時に、私は和歌山のインプリケーション(概要)を言うから、その前の基本的なグローバルな話とか、日本がおかれた話とか、アジアの動向とか、そういうことについては高橋さんに頼むということで、来てもらった次第であります。大変良い話をしていただいて本当にありがとうございました。
 ところで、最後に高橋さんから、「私は和歌山のことをわかりませんし、和歌山をどうしたらいいかわかりません」と言われてしまいましたので、私はそれを受けて和歌山の話をしないといけないのです。しかし、ここで私もわかりませんと言うと、「こら、すぐ知事辞めろ」と言われてしまいそうでありますが、私の結論は、「私もがんばりますのでどうぞ皆さんも、それぞれがんばりましょう!」ということであります。そういう事を、なぜかということも含めてこれから少しお話をさせていただきたいと思います。

 和歌山のインプリケーションという事について、私は二つの観点から言えるのではないかと思っています。一つは経済・産業・貿易というジャンルであって、もう一つは観光というジャンルではないかと思っております。

 まず経済・産業・貿易ということで、ざっと今のマクロの日本全体の話、次に、和歌山にとってどうかというようなことを、少し日本全体の動向も踏まえて振り返ってみたいと思います。資料をお配りすれば良かったのですが、あまりにもいろいろありまして、資料を整えている時間が無かったので、今、そこで電卓を叩いたりなどいろんな事をして、考え方や数字を整理しました。その知識で申し上げますので、お聞き苦しかったら後でまた県庁の職員から資料などを差し上げたいと思います。
 まず、どんなものがアジア、あるいは世界との間で取引されているか、即ち、日本の貿易構造を少しお話してみたいと思います。日本の中での平成19年度の上半期の貿易を見てみますと、実は三つの品目で輸出の65.1%を占めています。その三つというのは「輸送用機器」と「電気機器」と「一般機械」の三つです。和歌山でいうと、例えば島精機の繊維機械とか、あるいはノーリツ鋼機の現像用の機械だとかはこの中に入っています。ところが、住金とか東燃とかの製品はこの中には入っていません。それから化学企業は和歌山にはたくさん有りますが、それも入っていません。これらの「化学および鉄鋼などを含む」という原材料製品の品目を三つの品目に足しますと、実は輸入全体の86.3%になって、これらが主要な日本の輸出品ということになろうかと思います。先程の三つで、65.1%有るのだということを少し頭のすみにおいて置いて下さい。
 それから輸入を考えますと、この三つというのは、実は結構あります。我々が子どものころから教えられた考え方だと、日本は加工貿易だから原材料を輸入して、それを機械などに加工して輸出しているのだということでした。特に輸出の中でも機械類がどんどん伸びたというのがここ数十年の流れです。先ほどの三つでどうかというと、実は25.7%の輸入があるのです。自動車はあまりありませんが、残りの機械については輸入もあります。すなわち輸入もしながら輸出もするということに段々なってきています。ちなみに(この三つの輸入項目に)先ほどの「化学」とそれから「原材料別製品」を足すと44%になります。原材料云々では、(輸出入)全体の40%くらいしかないということで、日本もどんどん出たり入ったりをする国になってきているのです。
 それでは、和歌山の輸出構成はどうかということです。少し分類が違いますが、鉄鋼が59%あります。これは住金が好調でどんどん作って出してくれるから住金効果で鉄鋼が59%にもなっています。その他は、繊維機械10%、石油製品12%、化学光学機器4%ということで、59%+26%でだいたい和歌山の輸出品が構成されているということです。
 このように産業構造という点で、特に貿易構造は和歌山と日本とでは随分違うということがいえると思います。先ほど言った御三家というのが和歌山は随分少なくて、鉄鋼や一部化学に依存して、あるいは石油に依存している、そういうような構造が和歌山の構造だということがいえるかと思います。
 それから先ほどデータがなかったので、これは和歌山のインプリケーションとは少し言いにくいのですが、海外生産比率はどんどん増えています。現在では海外進出企業ベースでの海外生産比率というのは、変な概念なのですけれど、32%くらいになっています。つまり、海外進出をしている企業はすでに32%は海外で作っているということです。一方、全企業ベースでいうと17.5%ということです。10年前はどうだったかというと、(今の数値は10年前のものより)じわじわと上がっており、ほぼ10%ずつ現在の数値から落とした値となります。正確に言うと、海外進出企業ベースで21.8%、それから一般で10.4%ということです。それだけ経済はグローバル化してきています。けれども、和歌山の企業はどうかというと、それほど海外ではたくさん作っていないということだろうと思います。もちろん、少し大き目の企業になりますと海外でも作っているし、海外にどんどん出しているのですけれども、まだまだこういう完全な形でのグローバリゼーションに巻き込まれているような企業というのは割と少ないというのが和歌山の姿ではないかと思います。

 それから観光について簡単に触れておきますと、全体では、アジアの人達が日本に来る割合というのがどんどん高まりまして、最新の統計で71.5%にも達しています。その内、韓国(からの観光客)が大変多くて28.9%、台湾が17.8%、中国が11.1%、香港が4.8%です。一方、和歌山はどうかというと、もう少しこの四カ国の比率が高くて、81.8%です。台湾が36.7%、韓国が少なくて8.1%、中国がさらに少なくて2.3%、それから香港が31.2%。香港と台湾に依存しているということになります。それからヨーロッパ、アメリカですが、14.8%ということです。ただ伸び率でいきますと、実は今申し上げました五つのジャンルの中では欧米が一番伸びているのであります。これは、いわば高野山効果とか世界遺産効果とかで、段々和歌山も本格的に観光客を呼べるようになってきているのかなというように感じています。

 さて、それではこれからインプリケーションについて少し申し上げます。
 第1に申し上げたいと思いますのは、グローバル化が全体に進んだよと高橋さんがおっしゃったと思います。先ほど和歌山の企業は投資をあまりしていないということを申し上げました。投資をあまりしていないと申し上げましたけれども、和歌山の企業はグローバル化の中でもうアウトかというと、私は決してそんなことはないと思います。実はグローバル化というのは一社だけで完結してグローバル化である必要はないのであって、トータル・サプライ・チェーンの中で、グローバルなトータル・サプライ・チェーンができてればいい。経済というのは売って買ってですから、その売って買っての相手があるわけです。その売って買っての相手と一緒に、世界の中でちゃんとした地位を占めていれば別に心配は無い。逆に「そっちが危ないと危ない」ということではないかと思います。例えば、大きい企業が安泰かといえば必ずしも今はそうでもない。

 それから業種的にはどうかというと、いろんな業種に段々なってきています。さっき言いましたように行き来が盛んですから、この業種は日本では大丈夫、この業種はダメというような、もうそういう時代ではなくて、いろんな業種でも競争力のあるところと無いところがある。どういうところで競争力があるかというと、私はこの言葉はあまり好きではありませんがオンリーワン企業というのが一番競争力があって、和歌山の企業の中でも世界シェアが何%というような企業はたくさんあります。そして、そういうところとくっついて、そこに部材を供給することによって、世界の中でちゃんとした位置付けを占めているところがたくさんあるということです。したがって、直接でも良くて、間接でも良くて、その両方です。グローバリゼーションの中できちんとした位置付けがあると良いということです。住友金属の話を勝手に言っていいかどうかわかりませんが、まあ公表されている話だから申し上げます。
 実は住友金属和歌山というのは一部、ボコンと穴のあいている構造になっているわけです。このボコンと穴のあいている構造というのはホットコイル、圧延工程の板、スラブから圧延鋼板というのをつくるところなんですが、そのホットストリップミルがないのです。その無いところはどうなっているかということです。無いと困るじゃないか、それでその下も無いのかというと下はコールドミルがあってですね、立派な薄板を造っています。島精機の島社長さんに聞いたんですが、「スコンとできる針ですね、大河内記念生産特賞をもらった針、これを住金から買った薄板を使って造っておるんです。だからいいんです」とおっしゃっていました。ところがその間の、板に伸ばす工程が住金和歌山には無い。どうしているかというと、一つは台湾の中国鋼鉄に売るわけです。中国鋼鉄から出資してもらって会社をつくっていて、それでそこに売る。もう一つは神戸と新日鉄とに売る。それから鹿島にも持って行くと、こういうことなのです。今度は出来上がったホットコイルを貰うわけです。中国鋼鉄は関係ありませんが、住金鹿島から板、ホットコイルを貰って、それでコールドコイルにして立派な物を造ってまた出す。一方パイプ類は一貫して全部和歌山で造るわけですけど、そういうふうになっていて、ちゃんとはまっているわけです。この「はまっている」というのが、実は世界で強い所以であるというふうに言えるかと思います。それぞれの企業がみんな世界の中でぴしっとはまっていれば、別にそれを全部自分でやる必要は無くて、海外向けのことははまっているパートナーがちゃんとやってくれていればそれでいい、というこということではないかなと思っています。でも、常にその目は見開いていないといけないということかも知れません。

 それから三番目に中国などの発展をどう考えるかということであります。さきほど、高橋さんもそういう趣旨で言われたと思いますが、その発展は、私はチャンスであって脅威だけではないと思います。脅威でもありますが、チャンスのところで活かさないと損だということではないかと思います。ただ空洞化を恐れていただけではダメです。なぜかというと、これは極めて単純な話でありまして、中国が例えば発展をするということはどういうことかというと、立派な物を造り始めて、それでそれを世界中に出したくなって、そのため生産を拡大していくということであろうと思うのです。そうすると、粗悪品を安く造っているだけではなくて、立派な物を段々造っていくことになります。そして消費生活も上がってくると、またそれに合うような立派な物をまた供給していくという好循環を生むことになります。そうすると、立派な物を造るには第一に立派な物にふさわしい部材とか部品とか材料とか、そういうのが必要です。それから第二に立派な物を造る機械が要るわけであります。したがって、中国が発展すると必ずその分野は伸びるということではないかと思います。
 一方、脅威はどのくらいかというと、かつて脅威はものすごかったような気がします。というのは、日本も世界の中では、どちらかというと低コスト品を作ってシェアを多く取っていた分野もたくさんありました。そこに中国だけではなく、アジアのいろんな国が殴りこみをしてきて、その部分をガサッとやられました。和歌山も随分、地場産業で痛手をたくさんこうむっていると思います。ただ、これはどちらかというとそんなに金額が伸びる話ではない。シェアがある程度いっていしまうと、脅威もサチュレイト(飽和・頭打ち)します。マーケットがサチュレイトするだけではなくて、脅威もサチュレイトするかなと思うわけです。
 私はちょうど2001年から2002年にかけて、経済産業省で通商政策局の中国担当の審議官をやっていました。そのときは、今から考えると中国脅威の議論がものすごい時代だったわけです。それでこれは大変だというふうに財界の方もみんなおっしゃっていた時代でした。その時に私は少しへそ曲がりですから、「いやいやこれから逆転しますよ」というふうに申し上げていました。日中の輸出入、これは日本の通関統計を見ますと輸入の方が圧倒的に多いのです。そして、輸出の方が少ないです。しかし、例えば1990年、バブル崩壊のちょっと直前くらいからトレース(追跡)すると、対中輸出は94年くらいまで急激に増えていくのです。輸出は輸入の83%くらいまでいきました。その後、輸出の方が、がたっと止まりまして、それで輸入の方が、急激に増えるわけです。輸入が増えて、輸出と輸入の差は54%、これが、私が担当した2001年で中国脅威論の本がたくさん出た時代です。現在どうなっているかというと、78%にまた戻っています。つまり輸出が輸入よりも増えた。輸入もじわじわと増えるが、輸出はもっと増えたということです。輸出はなぜ増えたかというと、先ほど言いましたように、中国の発展に応じて日本の立派な部材とか部品とか材料とか機械とか、そういうものが必要とされて中国にどんどん入るようになったからで、今もこの勢いは続いていると思います。
 実は、私は2001年に「後三年たったら、日本の通関統計でも輸出と輸入がひっくり返るよ」と言ったのですが、見事に外れました。しかし、傾向はそんなに間違ってはいませんでした。ちなみに少し言っておきますと、中国の統計によると日本と中国との輸出・輸入の関係は逆転します。なぜかというと、難しいことは別にして、もう一つの要因は香港にあるということです。日本の輸出は仕分け地向けなので、香港行きといって出ているのが、実は中国に入っているということが多いので、これが逆転の原因の一つになっています。ちょっと余談を申しましたが、そういうことで中国はけっして脅威だけでは無くてチャンスであるということではないかと思っております。自分の所に技術があったり立派な物があれば、中国の発展は自分の原動力の糧に、発展の糧にすることができるということではないかと思います。

 それから四番目に「マーケットとしての中国が良い」というふうに高橋さんがおっしゃいました。まさに私が選挙の時から言っている話でありまして、農産物が売れるぞとか、その他、例えば消費財なども売れるぞとかです。特に日本で需要がサチュレイトしているような、非常に高級な伝統的な匂いのするような物だってこれから売れていく。また、高級フルーツはもう売れているのですが、高級フルーツとか、日本の色や匂いのするような伝統的ないろんな物に対する欲求は、中国の人たちにうつっていくだろうと思います。中国に限らず、アジアの人達の日本に対する憧れというのはすごいものがあります。日本でも「舶来」というような言葉ができたような意味で、今、彼らアジアの国は日本というブランドだけで信じるような段階に私はあると思っています。もちろん中身が良いからなのですけれども、そのイメージをちゃんと掴んで売っていくということがチャンスの源ではないかと思っております。

 それから次に観光について、簡単に申し上げます。先ほど言いましたように和歌山はどちらかというと、韓国や台湾からの観光客が多いのだということです。ただ、和歌山の外国人観光客の伸びは実はこの10年間で、5.41倍になっています。一方、日本全体でどうかというと1.91倍です。つまり、日本の中で圧倒的に和歌山の伸び率が高いわけです。これは何を意味しているかというと、和歌山がすごく有名というのではなくて、以前はあまり外国の人に顧みられなかったけれども、ようやく今、キャッチアップをしつつある。これからだ、ということです。相対的に数はそんなに多くありませんが、伸び率だけはものすごいわけです。ただこういう観光客をチャンスとしてきちんと和歌山でとらえるようになっているかというと、まだ寂しいものがあります。例えば九州へ行ったら、ちゃんとした道路にはハングルや中国語や英語での標識がきちんとあります。和歌山にはあまり無い。それから某ホテルへ行ってみると、どうもこの英語の翻訳がおかしいというようなものもありました。そういうことで、これからまさに国際化の人材を和歌山でもたくさん雇って、このチャンスを活かすというようなことを我々も考えていかなければいけないのではないかというふうに思っております。

 そこで次に問題点なのですが、こういうことをやっていくときに私達は何をしなければいけないのか。
 第一に積極的にプロモーションをかけていく。県もそうですし、それから民間の方もそうだと思います。その時に、第一に、中国との関係でいうと検疫の問題、特に農産物に関してはこの問題が非常に大きい。これは韓国でもそうなのですが、国に道筋をつけてもらわないと我々は輸出することができません。りんごと梨だけは輸出できるのですけども、他の物もやらなくてはいけない。それは県の任務であるとともに国にお願いしなければならないことであります。

 それから二つ目は、これはどちらかというと民間の方にがんばってもらわないといけないと思いますが、知的財産権であります。あるいは経営ノウハウと言った方がいいのかも知れません。そういうことについて、ちゃんと自分で防護手段も講じながらやっていかないと、相手はこれまでのような、何とか話せばというようなイメージの相手ではないということで、そこをきっちりしながらやっていくということではないかと思います。
 それからその次です。先程「中国はチャンスか脅威か」ということを言いました。この標語は、私が担当しておりますときに大阪で日中経済討論会というのをやりました。その時の標語が、「中国はチャンスか脅威か」ということだったのです。その時に、中国の政府の人達を呼んできてもおもしろくないから、私の仲間が中国に行って駆けずり回って、それこそ皆さんのような、それぞれ独立している立派な企業人をいっぱい呼んできました。私も日本中駆けずり回って、中国語はできませんから、日本の企業人を呼んできました。それで、我こそはという一騎当千が集まって、大阪で議論するということを始めて、今でもそれは随分盛り上がったものになっています。そのときに私はショックを受けました。どうショックを受けたかというと、日本を代表する電気機器メーカー、コンピューターのメーカー二社に行って、二社から同じことを言われた。何かというと、「脅威です」と言われたのです。「なぜ、脅威なのですか、うそでしょう。あなたは民間の会社なのだから。私は役人で、日本の雇用を考えなきゃいけない。あなたはチャンスしかないんじゃないですか」というふうに言うと、「それは違う。私達は今、総合力で中国のライバル企業に勝っていると思う。だけどあそこの上皮1%くらいの人材を比べると、連中の方が立派かもしれない。その他大勢※1がいるから、我々の方が勝っているような気がするけれども、経営資源からいっても、ひょっとしたら負けるかも知れない」と言われました。だからそれだけ、がんばらないといけないということではないかと思います。
 それから次に、もう一つある会社の人からぼやきを聞きました。その人は某大手電気機械メーカーの重役さんをやって、今、中国で国際合弁企業の社長さんをやっている、そういう人であります。そしたら、自分は元の会社にいた時に作った技術で、それは当然合法的に売って、中国でどんどん作っている。今、私が元の会社にいたら、やれることはこんなにいっぱいある。ところが、後輩達はやろうとしない。じっと身をすくめて、今からもう何年も前ですが、身をすくめてどんどん蚕食※2されているのに、なすがままである。これでどうするか。60代の人が、50代の後輩、私も50代ちょっとくらいでしたけど、それに向かって、そういうことを言っているわけであります。要するに何を言いたいかというと、やっぱり「チャンスか、脅威か」というのは自分の問題であって、それぞれの企業ががんばってそれぞれの技術を磨いていって積極的にやっていけば、それはチャンスにもなるし、座してじっと見ていると脅威にもなるということではないかと思います。

 それから第三番目にアジアにはリスクがあって、それでリスクがあるから日本をあてにするのだ、ということを、高橋さんはおっしゃいました。こういうことをまさに私達は考えないといけない。農産物の輸出もそうだし、それから山東省に行きましたけれども、随分、厚遇してくれました。山東省は9千万人の人がいて、省の中では二番目くらいに力のある、ものすごいでっかい省であります。民間の企業の方々もずっと、この山東省とビジネスチャンスをどうやって拡大するかということをやっておられます。そこで、我々は企業にお願いをして、ここにいらっしゃる方もおられると思いますが、環境の協力もしてあげようということで乗り込みました。ものすごく歓迎してくれました。それはやっぱり日本の経験というのが、これからの中国にとって大変必要だ、まさに高橋さんがおっしゃっているような、我々にとっても、中国にとっても利用価値があるからということでないかと思います。ただ我々は、もはやお人好しであってはいけない。大事にしてくれるからといって、知事がにっこり笑って「よっしゃ、よっしゃ」と言っていると、何の意味も無い。したがって、官民合わせてこのチャンスを活かして、山東省のあの富を、あるいは力をこの和歌山に持ってこないといけないということが、我々に課せられた義務でもあると思うわけです。さしあたっては。環境とそれからビジネスで協力をしましたが、その他の約束した項目でいえば観光もありますし、それからその他の交流もたくさんあります。それをどうやって活かしていくかということは、我々に課せられた課題ではないかと思うわけです。そういう意味でこれから我々は、がんばっていかなければなりません。

 その次、第四番目に我々は世界の中で競争している。世界の中でこの和歌山というのをPRして、競争していかないといけない。ライバルは世界にもありますし、日本にもあります。それは和歌山の競争力が悪ければ世界は和歌山を見放し、競争力がよくなってくるとどんどん寄ってくるということです。「大手町の噂話」というのがあるわけです。あんなところに行ったらひどい目にあうぞと誰かが言い始めたら、あっという間に全員、100%の人に伝染します。和歌山はその被害に随分遭っていたというような気もいたします。これは一朝一夕では直りません。私は、ある所で今年企業誘致をしてやろうと思って、ウルトラCをいろいろ繰り出して、秘術の限りを尽くしましたが一個負けました。どこかというのは申し上げませんが、なぜ負けたか調べてみると、某銀行が、ステークホルダー(利害関係者)でありますが、「あんなところに行ったらひどい目に遭うぞ、やめろ、やめろ」と、「何か、政治的にもうるさいしさあ」というようなことを言われて負けました。しかし、粘り強くやることによって認めてくれる所もあります。住金は、第二号高炉も和歌山で造ってくれることになりました。松下電池はアセンブリー(最終的な組立)を和歌山で作ってくれることになりました。ただ、喜んでいてはその地域の価値というのは定着しません。それが円滑にできるように、いろいろ文句もあるだろうし、議論をするべきところはどんどん議論したらいいと思います。しかし、そういうグローバリゼーションの中で我々は競争しているのだという意識を持ちながら、その富と雇用を和歌山の方に持ってこないと和歌山の発展も無い。そしてそれがうまく成功して、「おお、いけるやんか」ということになると「大手町の噂話」はひっくり返って、「ああいうとこ、ええぞ」ということになると、あまり努力しないでもみんながくるようになってきます。どんどん同じように努力して、「まあいいかな」ということにしないといけないのではないかと考えます。井戸端会議より恐ろしい「大手町の噂話」というのに、なんとか勝っていかないといけないということではないかと思います。

 それから、一つだけ高橋さんに私がオブジェクション(反対意見)を申し上げることがございます。何かというと、実は結論は一緒なのですが、「一億何千万人の全体を持ち上げるというのは無理だ、一億何千万人の人口というのは大きすぎる」と高橋さんはおっしゃいました。私は小さすぎると思っています。結論はもう詳しくはいいません。同じなのですが、その一億何千万人の、立派な所得のある、レベルの高い人達を持った一億二千万人の人口で日本は生きてきた。それでヨーロッパの各国の個別の国に対して勝ってきたわけです。敵は、三億六千万人になりました。アメリカは、二億何千万人です。それでアジア、成長するアジア、中国、その他入れると、ひょっとしたら日本の市場は小さすぎるかもしれない。そうすると、このアジアというのを一つの統一的な市場と考えて、それでアジアで通用する我々にならないと、この一億二千万人をやっぱり維持できない。それを小さく区切って考えたってダメ、ということが私の言いたいことです。これが、どこで効いてくかというと、EPA(経済連携協定)です。これはヨーロッパ統合と同じような試みを、少し薄くして、制度の統合を各国で合わせてやろうということです。この制度の統合を、自分に合ったような制度で統合しようというのが世界の動きです。すなわち、日本モデルをアジア中にきっちり伸ばさなければならないのです。いろんな抵抗がありますが、それをやらないと日本は生きていけない。それを先に別のモデルでやられたら、何が起こるかというと、かつて何度も辛酸をなめたように、日本の電気製品というのは鬼のように強かったわけです。ところが強くてもう磐石かなと思った時にスタンダードを変えられるわけです。スタンダードを変えられると一からやり直しになる。何度も同じ事の繰り返しです。日本の基準、スタンダードでアジアの市場を一つの制度にする。そして、大きな人口を囲い込むというのが、私は大事なことじゃないかと思います。その大きな市場の中で和歌山の企業が、勇躍、活躍すれば、これこそが万々歳であるということではないかと思います。ありがとうございました。

 ※1 いろいろな種類のものを、区別なしにひとまとめにして扱うこと。
 ※2 (サンショク)蚕が桑の葉を食うように、他の領域を片端からだんだんと侵していくこと。

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