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寄稿・提言・訓辞・挨拶集

新聞・雑誌等への投稿や、各種行事での講演・挨拶、政府への政策提言等を通じて、知事の考え方や政策を紹介します。

「21世紀WAKAYAMA」巻頭言「経済統計に見る和歌山」

はじめに

 経済活性化により和歌山県を元気にすることは、県民の皆さん最大の願望であると思っています。私は知事に就任するにあたって5つの政策目標を掲げましたが、「職づくり、人づくり、地域づくり」、とりわけ働く場を増やす事を第一の政策目標に掲げ県庁一丸となってさまざまな施策に取り組んでいるところです。
 和歌山社会経済研究所は昭和56年の設立以来26年が経過しました。その間各界の英知を結集し、社会経済の諸問題についての総合的な研究開発や政策提言を行うなど、本県産業経済と地域社会の発展に貢献されてきました。
 私も経済企画庁内国調査第2課に出向していた平成8年当時、地方シンクタンク協議会で「空洞化の克服と地域経済のリストラクチャリング」というテーマで講演(H8.11.29)する機会を得ました。産業の空洞化によって失われた地域雇用を商業・建設業・サービス業・製造業の業種ごとに分析し、その克服のために「企業に地域を選んでもらう」ための政策対応が重要であると申し上げた記憶がございます。その後我が国を取り巻く経済情勢は大きく変化しましたが、その際言及した「全国ブランド」として通用する地元企業を育てる視点などは、ますます重要性を帯びてきたのではないでしょうか。

指標の現状

 もともと和歌山県は統計的な指標では全国の1%を占めてきましたが、経済的な指標ではその比率が徐々に下がってきています。
 平成17年国勢調査の県人口は103万6千人(全国39位)であり、30年前の昭和50年(1975年)の調査107万2千人(全国35位)から順位を下げました。今後日本全体の人口が減少していく中で和歌山県の人口が減っていくこと自体を罪悪視する必要はないと思いますが、その人口減が和歌山の元気を失わせる方向になっていないかどうかが気になるところです。また、県内総生産は昭和50年度の1,324億円から平成15年度の3,356億円と253%の伸び率でしたが、実はこの伸び率は全国最下位で全国順位も34位から40位へ後退しました。製造品の出荷額についても、昭和50年度と平成16年度の比較では129%の伸び率でしたが、この伸び率は46位であり全国順位も22位から33位へ後退しています。
 昭和50年頃の和歌山県は繊維中心に地場産業がまだまだ盛んでしたし、鉄鋼、石油、化学、製紙など、当時にしては大きな企業が分布していました。しかしその後30年の日本経済の主流は、知識集約産業、ハイテク産業、デバイス、加工組み立て産業等にシフトしており、和歌山ではこれらの産業の伸びがほとんどありませんでした。現実には石油、鉄鋼、繊維工業が後退し、化学工業や一般機械器具製造等の分野が伸びたものの県経済全体を牽引するに至らず、今も産業構造に大きな変化が見られません。ハイテク産業の比率は平成16年でも5.1%に過ぎないということがその低迷を物語っています。
 それでは県内総生産や製造業関連の全国順位を大きく伸ばしてきた岩手県、山形県、熊本県はどうだったのでしょうか。一言で言うと、この3県では産業構造の転換がうまく行われました。いずれも本県同様、鉄鋼、木材・木製品製造業、繊維工業などが後退したものの、替わって輸送用機械器具、情報通信機械器具、電子部品・デバイス製造、一般機械器具製造などの分野が大きく成長しました。例えば熊本県では阿蘇山麓に良質な工業団地や住環境を整え、空港と高速道路からなる交通アクセスの良さも武器として地域全体の魅力度を高め、企業誘致を熱心に働きかけ、外資系半導体メーカーの日本工場や研究施設の誘致を行いました。
 この事例のように高速道路や空港といった基盤を整備し、便利な交通網を使ってデバイスや精密機械などの立地に成功した結果、ハイテク産業の比率は岩手44.8%、山形50.9%、熊本43.8%となり、製造品出荷額伸び率もそれぞれ、6位、2位、5位になったのです。製造品出荷額で昭和50年には本県よりはるかに下位にあった3県でしたが、平成16年には凌駕されてしまう結果になりました。

働く場所の拡大

 もちろん和歌山県の企業誘致もいろいろ頑張っています。昭和57年以降99社(操業中・操業見込み73社)の企業を誘致し、3534人の正社員雇用につながりました。18年度と19年度では、関西圏首都圏を中心に1000社以上の企業訪問を目標に誘致活動を展開中であり、平成18年度は5社の企業を誘致しました。現在県では市町村が所有している企業団地の整理、今までの進出企業の要望調査、今後投資の伸びそうな産業分野情報の収集等、戦略的な考えを持って企業誘致に取り組んでいます。
 また、既に和歌山県に立地している企業を大事にすることも重要です。先日もある大手企業の社長から、「和歌山の工場では事故が起こったとき、住民の方が押しかけてきて土下座しろと詰め寄られました。しかし別の所に立地している工場で事故が起こったときは、地域の方が一升瓶を下げてご苦労様とちゃんと励ましてくれました。この違いは大きかったですね。」という話を聞かされました。県庁もこのような問題に対して企業で勝手に対応しておけ、という態度をとれば行政に対する企業の不信を植え付けてしまいます。そのため、ちゃんと中に入ってさばくということが重要になります。こういったことにも一生懸命取り組んでいます。
 今までの和歌山は豊かで貯金も多く、何が何でも企業に来てもらうという気持ちも少なかったかもしれません。しかし、和歌山県民の気持ちは変わってきており、ぜひ和歌山に来て下さい、友達として地元企業として歓迎するという気持ちになっていると思います。
 和歌山には親子3代にわたって働いている人もいる鉄鋼メーカー、主力工場や研究所があり本社から会長・社長がよく来られる化学メーカー、ベンチャー企業から自助努力で大きく成長したメーカーなど、本県の誇り得る企業が数多くあります。本年3月に平成18年度の大河内賞の授賞式が東京で行われましたが、企業の部で一番格の高い「生産特賞」に和歌山の㈱島精機製作所と住友金属工業㈱和歌山工場が選ばれました。日本の名だたる企業がようやく1回受賞しているくらいの権威ある賞で、その「生産特賞」に全国で2社が選ばれその両方とも和歌山企業であることは、奇跡に近い快挙として誇って良いのではないでしょうか。

農林水産販売等の展開

 和歌山の地場産品である農産物は和歌山の宝であり、これらを新たな手法で売り込むことで「職づくり」の有力な柱にしたいと考えています。
 紀州の梅は江戸時代から田辺藩がその生産を奨励・保護してきましたが、昭和40年代に大粒で果肉が多く皮も柔らかい「南高梅」が品種登録されてから産地の競争力が大きく向上しました。さらに消費者の健康志向の高まりとともに減塩梅など画期的な新製品開発が進み消費が拡大しました。それに加え、梅の生産者、JA、加工業者、販売業者、観光業者が一体となって地域における「梅産業」を支え梅の付加価値、ブランド化を維持・強化してきた結果として現在の紀州梅があるのです。現在、輸入梅や安価な梅の増大により新しい展開を迫られるなど、たとえ優良農産物であっても絶え間ない改良や新たな取り組みは必然となっていますが、県も梅研究所による品種開発・技術開発など様々なお手伝いを続けていきます。
 また、みかん・柿・イチゴなどを和歌山の名前をきちんと付けてマーケットで売っていく必要があります。そのため、関係者と一緒になって売り出し方を考え、東京や大阪でのPRや商談会や食品関連企業などのバイヤーへの浸透などを通じ県内生産者の人たちに販売促進の機会等を提供していきたいと思っています。和歌山産品のブランドを確立して、日本中にまた世界に高く売っていく方法を探っていきたいと思います。
 一部農協、漁協では企業家精神を発揮し賞賛に値する取り組みも進められていますし、林業も冬の時代が長く続きましたが今新たな展開のチャンスが近づいています。「緑の雇用」で来られた方も自立した林業の中で定着し、それがもっと発展した結果また次の人がやってくるという形になるのが究極の目的ですし、27の企業等が取り組んでいる「企業の森」などもCSR(企業の社会責任)を切り口として今後の新たな展開につなげたいと思います。紀州材の新たな加工法・利用法についてハウスメーカーの意見を聞いたり加工生産工場の立地可能性など、林業の振興につながる施策に真正面から取り組んでいきたいと考えています。

戦略的観光の展開

 また、和歌山ほど観光資源の豊富なところはないと思っています。日本一の那智の滝、パンダ飼育数、熊野本宮大鳥居、ナショナルトラスト法人第1号の「天神崎」、紀州から始まった味噌・醤油、かつお節、非火山地帯の温泉数日本一、世界遺産に登録された「高野熊野」(紀伊山地の霊場と参詣道)、ラムサール条約に登録されたサンゴ群生北限の串本など枚挙にいとまがありません。他にもずっと続く風光明媚な海岸線、緑の山と谷、奥深い森、数多くの清流など心癒される資源が県内にはまだまだ埋もれています。そのため市町村や関係者と一体となって地域ごとの売り出し対象と売り出しの方法を考えていかなければなりません。
 例えば、熊野古道は白浜や勝浦との団体客と別の売り出し方をする必要があります。パンダを見に来る人と高野・熊野に来る人とはそれぞれ違う手法を考え、ニーズの多様性に立脚し、差別化を図って別々の戦略を立てなければなりません。また、乱開発の防止など景観保全に対する方針を出し、資源の保存と自然資源や文化資源の保存といったことにも市町村と協力して取り組みたいと考えています。旅行エージェントの集客方法、商品企画の組み方の研究、マスコミ界のメカニズム(仕組み)調査を行い、旅行番組などでキーパーソンとなる人物の見つけ方や接触方法を探った上で、和歌山売り出し作戦を実行する戦略的な取り組みを進めているところです。

大関西圏の一体的連携

 観光でも企業誘致でも大事なのはそこに至る交通の便です。交通の便が悪ければ本当はそこへ行きたい人でも逃げてしまう可能性があります。和歌山県のアクセスの問題は本当に悩ましいのですが、高速道路により県の背骨を作っていく事が県の悲願であり、県内道路の整備と関西につながる道路整備を併せ進めなければなりません。
 関西全体の発展は和歌山にとって死活的な問題です。関西圏が東京圏に対峙して発展するためには、ビジネス、遊び、スケールへの対応が必要になってきます。ビジネスの中心は大阪、神戸、京都などですが、バブル期に東京へ本社機能を移してしまいました。当時の技術水準や世界的スタンダードからすれば営業機能さえそれぞれの地域にあれば本社はどこでも良いはずで、この状況が今でも続き関西に本社機能が戻ってこないのは問題だと思っています。
 確かに、関西は現在のビジネス環境にふさわしいビジネス文化を提供できていないかもしれません。たとえば東京の都心に住んでいる人が伊豆・外房・八ヶ岳などへ遊びに行く際、交通手段がネックで行けないというのは聞いたことがありません。一方、大阪から和歌山の南紀へ行くにも交通ネックがあり簡単に行き来できないという現実があり、こういう事を看過しておくと関西全体の魅力が少なくなることにつながってしまいます。関西が個々の個性を生かすことに熱中しすぎて、周りと連携し周りを活かすことに疎かになると、密接にネットワークでつながっている東京圏に決して太刀打ちできません。それぞれの地域が「足し算」で個別に事業に取り組むだけでなく、「掛け算」的な発想でネットワークを整備し、関西圏のスケールを大きくしていくことは中心部の発展にもつながる大事なことだと思います。
 これからも和歌山の持つ人材や地域資源の有効活用と、近隣府県との連携を積極的に図ることで和歌山全体の活性化につなげていきたいと思います。
 読者諸賢の叱咤激励とご支援・ご協力をよろしくお願いします。

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